通販生活の読み物

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介護対談

食べることと同じくらい大切な「排泄」の話。正井章子さん・西村かおるさん

食べることと同じくらい大切な「排泄」の話。正井章子さん・西村かおるさん

食事・入浴・排泄は、介護の「3大介助」と呼ばれ、介護が必要な人が気持ちよく暮すための大切なポイントです。しかし、このうちの排泄は、羞恥心をともなうナーバスなケアなため、他人に相談しにくく、介護する人は重い負担を感じてしまいます。介護される人の尊厳を保ちながら、身体的な不快を減らすにはどんな方法があるでしょうか。排泄ケア専門看護師の西村かおるさんと、大人用紙オムツのシェア№1であるユニ・チャームの正井章子さんに、語り合っていただきました。

排泄ケアとは、気持ちよく排泄するために生活全体を見直すことです。

「年だから仕方ない」ではなく、
何が失禁の原因かを考える。

西村 「排泄ケア」というと、出るところだけの問題だと思われがちなのですが、実はそうではありません。
 たとえば、高齢の親が便失禁をしたら「どうしよう、オムツを当てなきゃ」「年だから仕方ない」と安直に考えるのではなく、なぜ便失禁をしたのか、その原因を探ることが大事です。まず、便の性質はどうか、感染症にかかっていないか、食事はどうかをチェックしてみましょう。下痢をしていれば失禁しやすくなりますから、下痢を治す方法を考える。排泄には精神状態も関係するので、ストレスがないかどうかも見ます。
 排泄にはさらに、便意や尿意を感じられるか、ベッドから下りてトイレに行く動作がスムーズにできるか、衣類の着脱や後始末をきちんとできるか等々、さまざまなことが関わっています。これらがうまくいって初めて、気持ちのいい排泄ができる。排泄ケアとは、いわゆる“シモの世話”ではなく、生活全体を見直すことなのです。

正井 排泄障害には尿失禁や便失禁だけでなく、頻尿や頻便、排尿困難、便秘などいろいろな症状があります。誰にでも起こりえることなんですが、なぜかタブー視されていて、今回のように堂々と排泄について語る機会は、あまりないんですよね(笑)。
 お店でも、恥ずかしいという気持ちが先に立って、排泄ケア用品は手に取りにくいようです。そのため、軽失禁用の尿とりパッドなどは、介護用品コーナーだけでなく、生理用品の棚にも置いてもらっています。

西村 尿失禁は若い人でも起こりますからね。女性では、妊娠中に頻尿や尿もれが起こる人が4割ぐらいいます。出産にともなって骨盤底筋という尿道と膣を締める筋肉が緩んでしまうため、咳やくしゃみでお腹に力がかかるともれてしまう腹圧性尿失禁が起こります。
 それが一旦治って、次に尿もれが多くなるのが更年期を過ぎた頃。骨盤底筋や膀胱の機能が徐々に低下して、再び腹圧性尿失禁が起こりやすくなります。また、過活動膀胱という病気で、急に尿意をもよおし、トイレに間に合わない切迫性尿失禁に悩む人も多い。
 便失禁も加齢とともに増加します。更年期後10~20年経つと、特にお産が大変だった女性はその際の損傷が影響して肛門括約筋(肛門をリング状に取り囲む筋肉)の働きが不十分になり、知らないうちに便が出てしまうことがあります。腸内細菌のバランスが崩れて下痢や便秘になりやすい人も多く、便秘だからと下剤を使いすぎて下痢になり、便失禁をするケースも少なくありません。

正井 男性も50歳を過ぎると尿もれのリスクが高まるようですね。2002年の日本排尿機能学会の調査では、50代男性の6人に1人が尿もれを経験している、という結果でした。多いのは、排尿後も尿道に残った尿がしたたり落ちる排尿後滴下という現象です。

西村 パンツやズボンの前を汚して、妻に「汚いわね!」なんて怒られちゃうという。あれは肛門やペニス周辺の筋肉を締めたり緩めたりして、尿道に残った尿を絞り出すようにするといいんですけどね。

正井 男性の排尿後滴下も、女性の腹圧性尿失禁も、骨盤底筋を鍛えると改善する人が多いです。お尻の穴を締めたり、おしっこをがまんしたりするような感覚の運動です。詳しい方法は弊社や日本コンチネンス協会のホームページに載っています。

西村 男性は、前立腺肥大や前立腺癌で手術をすると腹圧性尿失禁が起こることがあります。これは一時的なもので治る人が多いのですが、加齢によって切迫性尿失禁や便秘、下痢などが増えるのは、男性も女性と同じです。

排泄の失敗を見つけたら、どうすればいい?

正井 家族が排泄に失敗したとき、衣類の汚れや部屋に漂う臭いなどで気づくことが多いと思います。ただ、排泄の問題はその人の尊厳にかかわるので、どう対処するかが難しいですね。

西村 失敗したことを隠す人もいますが、隠すということは、本人は自覚している証拠。ですから、本人の気持ちを尊重したうえで、どうしたらいいか一緒に考えよう、という姿勢で対応することが大事です。
 私が担当している排泄ケア外来に、娘さんがお母さんを連れて来たことがありました。部屋に入るなり、「もらしてる!」「もらしてない!」で、言い争いが始まってしまった。こういうときは、一旦ご家族に診察室から出ていただいて、本人から1対1で話を聞くんです。「せっかく来られたんですから、健康診断のつもりでお話ししませんか」と。おしっこの回数がかなり多いので「大変じゃないですか、よく眠れていますか」といった話から入っていくと、おしっこが近くて困っていることがわかります。薬でよくなるかもしれないと伝えると、「治せるなら治したい」と素直な気持ちを話してくださるのです。

正井 頻尿の原因が膀胱炎というケースでも、気づいていないことがあります。自覚症状のない膀胱炎もあるので、失禁を見つけたら「膀胱炎かもしれないので病院に行ってみようよ」と、提案してみるのもいいと思います。

西村 前向きに解決できるアプローチが大事ですね。治らないタイプの失禁でも、より気持ちのいい排泄を実現することはできますから。

西村かおるさん

西村かおるさん

NPO法人日本コンチネンス協会 会長
排泄ケア専門看護師

にしむら・かおる●1957年、高知県生まれ。東京衛生病院に訪問看護師として勤務後、留学先のイギリスでコンチネンスケア(排泄ケア)を学ぶ。帰国後、1990年にコンチネンス研究会(現NPO法人日本コンチネンス協会)を設立。排泄ケア専門員を育成するほか、全国各地の医療機関で排泄ケアのアドバイスをしている。著書に『パンツは一生の友だち』(現代書館)、『患者さんと介護家族のための心地よい排泄ケア』(岩波書店)など。

正井章子さん

正井章子さん

ユニ・チャーム株式会社 プロケア営業戦略
開発本部 看護師

まさい・あきこ●1966年、岡山県生まれ。医療機関で看護師として勤務した後、看護教育に従事。2000年にユニ・チャーム(株)の「排泄ケア研究所」に転職し、排泄ケアを研究する。現在は、医療機関や介護施設向けにオムツやパットなどを販売する営業部署に在籍し、主に新人教育を担当している。

オムツは便利な道具ですが、最終手段。その前にできることがあります。

失敗を防ぐオムツの当て方(テープ止めタイプ)1.ギャザーの機能を活かす

オムツのギャザーの下に尿とりパッドを差し込んでしっかりセットする。

2.最も吸収する位置に尿とりパッドを当てる

オムツのウエストギャザーを当てる人のウエストに合わせる。尿とりパッドは、お尻の割れ目が隠れるあたりから前に。

3.体とオムツの間にすき間をつくらない【女性の場合】

尿とりパッドを山折りにして恥骨を覆うように当てる。オムツも山折りにして、立体ギャザーを広げながら引き上げる。

【男性の場合】

尿とりパッドを谷折りにして、ペニスを包み込むようにして当てオムツを引き上げる。ペニスを巻くやり方もある。

4.オムツをずらさないようにしてテープを止める

オムツのウエストギャザーを当てる人のウエストに合わせる。尿とりパッドは、お尻の割れ目が隠れるあたりから前に。

こちらのユニ・チャームのホームページでオムツの当て方を動画で見られます。

尿瓶などオムツ以外の排泄器具も使ってみる。

正井 高齢者の場合、病気や骨折で入院すると、オムツになって退院する人がとても多いという実態があります。ちょっとトイレが間に合わなかった、ちょっともらしてしまったというだけで、一日中テープ止めタイプの大きなオムツを着けられてしまう。このタイプのオムツは、基本的に夜間用や寝たきりの方用なんですが。
 座る姿勢がとれる方ならパンツタイプのもの、トイレで排泄できる方は下着にパッドでもよいでしょう。たとえ1日1回でもトイレで排泄してスッキリしていただくと、気持ちよさがずいぶん違うと思います。病院は人手不足もあるでしょうけれど、本当はもっとできることがあるのに、残念です。

西村 そうですね。尿瓶や差し込み式便器といった、ベッド上で使える排泄器具もありますが、今は病院ではほとんど使われていません。後始末が面倒、院内感染のリスクがあるなどの理由からですが、排泄物が体につかないという大きな利点もあります。

正井 多少手間はかかりますが、尿瓶や差し込み式便器を使ってみるのもいいですね。

西村 オムツも、便をトイレに流してから始末するとか、回収日まで溜めておくので臭いが気になるとか、資源がもったいないとか、不利な点がありますし。
 安楽尿器という、尿を溜めるタンクと膀胱の出口に当てるレシーバーがホースで繋がった器具もあります。ベッド上でレシーバーを当てて排尿すると、床に置いたタンクに尿が流れ落ちる。立ち上がってトイレに行けなくても、尿意があって手を使えれば自分で排尿できます。こういった排泄器具は介護保険の対象ですから、まずはケアマネジャーに相談してみるといいですね。ケアマネが詳しくなければ、福祉用具専門相談員につないでもらいましょう。介護保険指定の福祉用具レンタル事業所には、必ず2名以上の相談員を配置することになっています。

正井 オムツメーカーがこういうことを言うのもなんですが、オムツを当てるようになったことで、気持ちがガクンと落ち込んでしまう方もいらっしゃいます。オムツは便利ではありますが、最終手段だと私どもは思っています。使い方しだいで、オムツは善にも悪にもなるんです。

オムツを上手に使えば、生活の質を上げられる。

西村 以前、こんな方がいました。寝たきりで、ヘルパーやご近所の手を借りながら、一人暮しをしている70代後半の女性です。
 彼女は夜間多尿のため、寝ている間に大量の尿がもれてしまう。夜は一人なので、ヘルパーが帰るときにオムツを何枚も重ねて当てて、オムツが濡れたら1枚ずつ自分で引き抜いて朝を迎える、ということをしていたんです。ところが、しだいに尿の量が増えて、朝には布団までぐっしょりで、女性の背中まで尿浸しの状態に。
 お聞きすると、量を使うので近所の人に一番安いオムツを大量に買って来てもらっているとのことでした。そこで、夜間多尿用のオムツを渡して試してもらったんです。価格が数倍するので、最初は難色を示されましたが、使ってみた第一声は「数年ぶりに、ぐっすり眠れた!」。1000ミリリットルもの吸収量があるため朝まで1枚で済み、尿が逆戻りしない構造なので体が濡れずに済んだのです。

正井 寝たきりの方や夜間は、基本的にテープ止めタイプのオムツに尿とりパッドをセットする使い方をおすすめしています。吸収量の多いパッドを使うことで夜間のオムツ交換をなくせば、介護される方もする方も十分な睡眠をとれる。よく眠って体力を温存し、昼間はリハビリやレクリエーションを存分にしていただきたいと考えています。
 不安だからと、必要以上に大きなサイズのオムツを選んだり、パッドを何枚も重ねたりして使うと、背中や足ぐりからもれる危険性が高くなって逆効果です。座る姿勢がとれる方なら、昼間はパンツタイプのオムツに尿とりパッドをセットするといいと思います。何と言っても動きやすいですし、テープ止めタイプの大きなオムツとは、気分的にも違います。大事なことは、使う人に合ったオムツのサイズと尿とりパッドの吸収量を選ぶことです。

西村 でも、すごくたくさん種類があるから、最初はどれがいいかわからないかもしれませんね。

正井 弊社の場合、お客様相談センターに電話をいただければ、専門のアドバイザーがカウンセリングを行ない、お客様の症状に応じた商品のご紹介や試供品の提供をしています。

排尿日記

西村 でも、すごくたくさん種類があるから、最初はどれがいいかわからないかもしれませんね。

正井 弊社の場合、お客様相談センターに電話をいただければ、専門のアドバイザーがカウンセリングを行ない、お客様の症状に応じた商品のご紹介や試供品の提供をしています。

西村 排泄に関する相談は、日本コンチネンス協会でも受け付けています。また、1日だけでいいので排尿日誌をつけてほしいですね。水分をどれくらいとったか、尿量はどうだったか、もれはあったかどうかを、24時間つけてみる。外来に来た患者さんにも、まずやっていただくのは排尿日誌をつけることなんです。
 日誌の検証から、改善されることがずいぶんあります。たとえば、夜間多尿の患者さんの日誌を見たら寝る前に水分をたくさんとっていたので、これを減らしたらオムツからのもれがなくなった、ということがありました。排尿のタイミングがわかれば、トイレに誘導できるかもしれないし、体が動かない方ならば、そのタイミングでオムツ交換をすればいいことがわかります。汚れたオムツで長時間過ごさなくていいので、気持ちいいですよね。

正井 ぴったりのオムツやパッドも、排泄のタイミングや量がわかれば選びやすくなります。尿の量は、使用前と使用後のパッドの重さを比べればわかります。1グラムはほぼ1ミリリットルですから、ビニール袋に入れて秤で量ってください。

西村 いずれにしても、日本ほどきめ細かに多種類のオムツがある国は、ほかにありませんね。御社が出している軽い便もれ専用のパッドなんて、海外で紹介すると「こんなものがあるのか!」って、驚かれますから。

正井 オムツは道具ですから、どこで何を使うか正しく判断できれば、とても便利なものだと思います。失禁が気になって外出する意欲を失っていた方が、パンツタイプを使ってみたら再び外出を楽しめるようになった、というような話を聞くと、本当に嬉しいです。

西村 排泄障害があっても、幸せに毎日気持ちよく暮すことは十分できるんです。排泄障害もオムツも長生きしていればこそ体験するものですから、「ここまで生きて来て、まだまだ生きられる。そのためにいろんな商品やケアがあるんだ」と、前向きに捉えてほしいですね。

排尿日記
多種多様なオムツから、当てる人に合うものを見つけるのが肝心。

相談/問い合わせ先

「NPO法人日本コンチネンス協会
排泄の困りごと110番 相談窓口」

電話 050-3786-1145
※相談受付日時を応答メッセージでお知らせしています。

ユニ・チャーム「いきいきダイヤル」
電話 0120-041-062
9時30分~17時(土・日・祝日を除く)
※病気についての相談はご遠慮ください。

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