鬼畜米英からあっという間に親米へ…その転換に欠かせなかったジューン・アリスンのアメリカ映画。

鬼畜米英からあっという間に親米へ…その転換に欠かせなかったジューン・アリスンのアメリカ映画。

解説◎斎藤 駿

鬼畜米英からあっという間に親米へ…その転換に欠かせなかったジューン・アリスンのアメリカ映画。

 敗戦翌年の1946年から復刊した『映画の友』は、読者投票による作品、男優、女優別のベストテンを毎年行なっていた。『映画の友』の終刊は67年だから年度別ベストテンは全21回、21年間行なわれた。
その中で女優ベストテンの「第1位」を3回以上獲得した女優は3人しかいない。オードリー・ヘップバーン8回、イングリッド・バーグマン3回、ジューン・アリスン3回。年次的にはヘップバーンと入れ替わるようにしてアリスンは消えていく。つまりアリスンをヌキにして、日本人にとっての敗戦後10年間のアメリカ映画は語れないのだ。
にもかかわらず、私が頼りにしている映画評論家たちは一様に彼女を無視する。山田宏一さんは『神変 美女と犯罪』(ワイズ出版)でわかるように、女優といえば悪女だと定義しているし、題名に「ハリウッド」を冠したスター論を3冊も書いている川本三郎さんもまた、アリスンはとり上げない。いや、わずかにアラン・ラッドの項目で、ラッドはスターになって初めてジューン・アリスンと不倫の恋をしたとふれているだけだ(『ハリウッドの黄金時代』TBSブリタニカ)。
そうか、私のようにリアルタイムで見たものでないとアリスンへの複雑な想いはわからないのか。ならば私と同じ80代読者に捧げるアリスン3本立てガイド。

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百万人の音楽

百万人の音楽(44年)日本公開49(昭和24)年

監督/サム・ウッド 脚本/D・モロー、G・トロスパー 出演/ジューン・アリスン ジェームス・スチュワート

戦争中のアメリカ映画に多かった音楽慰問映画の一つ。タイトルで誤解されてしまうが、音楽は添え物。ハートウォーミングなストーリーをサスペンスフルに語って目が離せない人情話だ。
「恋人の戦死」という本作のキイワードは、家族や恋人の戦死にうちのめされていた当時の日本人にお互い様だよと言いたい占領軍の意図にぴったりだった。ちなみに当時のアメリカ映画の輸入は占領軍の意向を反映するアメリカ映画一手配給会社セントラルで選別されていた。

姉妹と水兵

姉妹と水兵(44年)日本公開48(昭和23)年

監督/リチャード・ソープ 脚本/リチャード・コネル他 出演/ジューン・アリスン, ヴァン・ジョンソン

前作同様の音楽映画だが、「音楽」の見所は「一本指のピアノ協奏曲」。あとはひたすら「食べ物」シーンにご注目いただきたい。これが戦争中? と戦後も欠食児童だった私の口は開いたまま。この豪華かつ豊富な「食べ物」を見せられて、私は「アメリカンデモクラシーは物質的繁栄をもたらすよ」としっかり教化されてしまった。

甦える熱球

甦える熱球(49年)日本公開49(昭和24)年

監督/サム・ウッド 脚本/D・モロー、G・トロスパー 出演/ジューン・アリスン, ジェームス・スチュワート

この野球映画のヒットによってジューン・アリスンはアメリカ型良妻賢母イメージを植えつけられてしまった。アリスンはこのあと、同工異曲の『グレン・ミラー物語』で良妻スターにさせられていくのだが、それに反発したアリスンはヴェロニカ・レイク顔負けの悪女役を企画して拒否され、失望のあまりアラン・ラッドとの不倫に走った、のならうれしいのだが。

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