私はこうして治った 変形性膝関節症の巻

私はこうして治った 変形性膝関節症の巻

2018年4月発行の本誌夏号で「体の不調、私はこうして治った」の手記を募集したところ、たくさんの読者からさまざまな病気の体験記をお寄せいただきました。今回はもっとも多かった膝の痛み、変形性膝関節症の中から4人の方の体験記をご紹介します。

イラスト/馬場ユキヲ

短時間でできる体操で筋肉を鍛えたら痛みがなくなったN・Sさん(千葉県・66歳)

 5年前、当時習っていた太極拳で、間違った姿勢をとっていたのか、左膝が痛み出し、徐々に歩行にも支障が出てくるようになりました。ある時から、正座はもちろん、床に腰を下ろす動作も苦痛になり、それまで床で行なっていたアイロンかけもできないくらい激しく痛むようになっていました。痛みを何とか取りたくて、整骨院で施術してもらったり、膝に負担が少ないという高価な靴を購入したりしましたが、良くなりません。
そこで初めて整形外科を受診し、変形性膝関節症の診断を受け、ヒアルロン酸の関節注射や電気治療、運動療法もやりました。しかし、痛みがきちんと取れることはありませんでした。
藁にもすがる思いで文献を読んだところ、膝を保護するためには膝を支える筋肉を鍛えることが重要だと知りました。そして、本で紹介されていた下肢筋力を鍛える体操を開始しました。毎日、長期間続けられるように、3種類の運動を2セット用意して1日交替で行ないました。

    【セット1】

  1. 両足のつま先で立った姿勢で10秒間保った後、床に着く少し前までかかとを下ろす。
  2. 足首の後方に1キロほどの重りをつけて立ち、片方ずつ膝を曲げて後ろに上げる。
  3. 椅子に腰かけて両足の甲に重りをつけ、つま先を上げる。

    【セット2】

  1. 椅子に深く腰掛け、脚を片方ずつまっすぐに伸ばして10秒間保ったあと、ゆっくり下ろす。
  2. 仰向けに寝て、直径20センチくらいの柔らかいボールを両膝で強く挟んで10秒間保ち、力を抜く。
  3. 横向きに寝て、下側の膝を軽く曲げ、上側の脚を膝を伸ばしたまま20センチ上げて10秒ほど保った後、ゆっくり下げる。

 セット内の体操をそれぞれ20回ずつ毎日行なったところ、徐々に膝の痛みが軽減されて半年もするうちに痛みはすっかりなくなっていました。
その後も、下肢筋力を維持すべく毎日この体操を継続しています。ウォーキングも心がけていますが、1万歩以上歩いても痛みが出ることもなく現在に至っています。

イタッ!軟骨がすり減って骨と骨があたる

イタッ!軟骨がすり減って骨と骨があたる

写真提供/帝京大学 整形外科・中川匠教授

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3回発症した膝の痛み、私は運動で治しました。山口秀子さん(大阪府・67歳)

 約40年勤めた中学校の理科の教師を退職後、7年間に変形性膝関節症を3回発症しました。
1回目は11年3月に左膝。外科で5回水を抜き、ヒアルロン酸注射も5回打ちましたが、治りません。必死で色々な本を探して運動を勧める本に出合いました。「寝て片脚を10センチ上げて5秒保つ運動を20回(仰向け、横向きなど)」と「湯船の中で少し痛みを感じるところまで正座するように膝を折って20数える。立ち上がって膝頭を10回押す。これを2回」を朝晩行ない、約半年で治りました。
2回目は13年10月。自転車に乗ろうとしたとき、右膝が「ガクッ」と音がしました。それからは傘を杖にしなければ歩けず、200メートル先の整骨院に行くにも30分かかりました。このときも整形外科で水を5回抜き、ヒアルロン酸注射を5回打ちました。でも治りません。1回目の2つの運動を毎日するだけでなく、膝やふくらはぎのマッサージ、お灸、サポーター等しましたが、階段を下りるときの痛みは治りません。そこで、友だちから勧められた高さ10センチの踏み台で「右脚から降りる、左脚から降りる」を20回ずつ朝晩し、2年かけて治しました。おかげで熊野古道2泊3日に出かけることができました。
3回目は16年12月。神戸の街をいつもより少しヒールが高い靴で1日歩き回ったところ、次の日から歩けなくなり、左膝に水がたまって半年間片足を引きずりました。そのときも2つの運動と踏み台降昇を毎日行ない、約1年で治しました。今年2月には、高さ1000メートル、白銀の金剛山にアイゼンをつけて登ることが出来ました。
教訓は「油断大敵」。今も運動をしなければ筋肉は落ちていくので、「正座ができるストレッチ」「O脚を防ぐストレッチ」「正しい姿勢」を続けています。

3回発症した膝の痛み、私は運動で治しました。

3回発症した膝の痛み、私は運動で治しました。

「良い日はきっと来る」そう自分を励ましてスクワットしている。菅 百合子さん(東京都・85歳)

 6年前、5歳の孫は、幼稚園で覚えたてのゲームにはまっていた。ジージ、バーバは当時の遊び相手。いくら負けても何回やっても楽しいひととき、3時間ほど遊んだ。やっと終わってさっと立ち上がったとき、変形性膝関節症の私は思わず「痛い!」と叫んだが後の祭り。急な動作は避けていたのにすっかり忘れていた。
当時はまだ70代。少しずつ膝の具合が悪くなって、ヒアルロン酸の注射や関節の水抜き、電気治療も受けていたが、そのときをきっかけに全く正座はできなくなってしまった。年だから仕方がないと思ったが、何か少しでもよくなる方法はないものかと探していたある日、新聞の片隅に「膝痛にはスクワットが良い」という雑誌の広告を見つけた。
スクワットをはじめて3ヵ月。最初のころは曲げる度に左膝が痛んで5回が限界だったが、段々に数を増やしているうちに痛みがなくなった。「私の膝に合っている」と確信した。さらに腰痛と膝の引きつれるような痛みもなくなった。今では、午前・午後に20回ずつやっている。もう少し数を増やすこともできるが無理はしないようにしている。
85歳になったが、杖を使うこともなく片道20分くらい歩いて買い物にも行ける。運動は、焦らず、忘れず、あきらめずと自分に言い聞かせている。体が不調のとき、気持ちまで落ち込まないように「良い日はきっと来る」の言葉で心を励ます。大切な宝物の言葉だ。

痛みを取るには手術しかなかった私の膝。今は問題なく歩ける。久保田良子さん(福島県・72歳)

 体重のかからないはずの寝床の中で、なぜこのように右膝が痛むのか、抱き枕に足を載せてみたり、横を向いて膝の位置をあれこれ変えたりする。
痛む膝を上にするか、下にするか、昨夜はどんな姿勢で寝入ったのかを思い出しても、同じ姿勢だから眠れるとは限らない。夜眠れないために、日中は常に眠気を催し、何かしようという意欲が湧かない。主治医には「ここまで軟骨がないのは、軟骨をつくる機能が低かったのかな」と言われた。
膝を曲げた姿勢から立とうとするとギリギリと音がして激痛が走る。昨年はさんざんで踏み台から落ちそうになり左足首を捻挫、階段を踏み外して左膝にひびが入ってステッキから松葉杖使用になってしまった。
昨夏、思いきってセカンドオピニオンを受けたいと医師に伝えると、意外にあっけなく「どこで診てもらいたい?」と言われたので隣県のT大学病院をお願いした。私の膝の状態は5段階の5、希望した「骨切(こつき)り(※)」はもう該当しない。人工関節の手術を受けると決め、主治医とT大の医師が信頼するというK医師のお世話になり、「痛みから解放されたい、ぐっすり眠りたい、何かができる生活を取り戻したい」と話して手術を受けた。入院は半月ほどで、その間にもうステッキなしで歩けるようになった。
手術から3ヵ月経った今は歩くのにはまったく問題はない。クッション性のある物の上になら膝をつけて体重をかけられるが、固い床の上は正直なところ異物感が大きく恐い。
私はいつも診ていただいている医師に遠慮があって、なかなかセカンドオピニオンを言い出せずに過ごしてしまった。早くお願いしていたら、もう少し若いときに決断ができただろうし、もっと負担の少ない方法もあったのではと後悔している。

※ 骨切り…高位脛骨骨切り術。すねの骨を切り、少し角度を変えることによってO脚を矯正し、膝の内側にかかる負担を軽減する手術。

痛みを取るには手術しかなかった私の膝。今は問題なく歩ける。

痛みを取るには手術しかなかった私の膝。今は問題なく歩ける。

太もも、膝周りの筋肉を鍛える運動で多くの人が改善しています。 太もも、膝周りの筋肉を鍛える運動で多くの人が改善しています。

 変形性膝関節症は、膝が痛む疾患の代表格です。潜在患者数は推定2500万人で、膝に痛みを抱える人の8~9割はこの疾患だと言われています。50代半ばから右肩上がりに増え、男性よりも女性に多く見られます。
膝にある関節軟骨や半月板は、脚を動かしたときの衝撃を和らげるクッションの役割を果たしています。関節軟骨がすり減ると骨と骨が直接ぶつかるようになって痛みが生じる、これが変形性膝関節症です。加齢のほか、肥満や激しいスポーツ、歩きにくい靴の使用なども原因になります。
初期のうちは、起床時や悪天候の日に膝がこわばるくらいですが、次第に歩き出しや階段の上り下りで痛み出し、ひどくなると安静にしていても痛くなります。膝に水がたまる、膝を曲げにくいといった症状も現れます。人によっては急速に悪化することもあるので、なるべく早く整形外科を受診しましょう。
変形性膝関節症の治療は、保存療法が基本で、もっとも有効なのが読者の体験記にもある運動療法です。みなさん、すばらしいですね。太ももや膝周辺の筋肉を鍛えると膝関節の安定性が増し、痛みが軽くなって動きがスムーズになります。「膝が痛いのに運動なんて」と思うかもしれませんが、安静にしていても症状は改善しません。水がたまっている、痛みが強いなど炎症を起こしているときは、治まってから運動してください。
私が勧めている運動は、仰向けや椅子に座った体勢で片脚を持ち上げ、5秒数えて下ろす「脚上げ運動」です(下イラスト参照)。痛みが強い人や肥満で膝への負担が大きい人は、水中ウォーキングが適しています。どの運動も無理のない範囲から始めて、回数や距離を少しずつ増やしてください。
保存療法のもう1つは薬物療法です。内服薬や塗り薬、貼り薬、炎症を抑えるステロイド注射、軟骨の保護や膝の動きを改善するヒアルロン酸注射などがあります。強い痛み、腫れ、熱を持っている、水がたまっているなど炎症があるときに有効です。
運動でも薬でも痛みが取れず、日常生活に支障がある場合は手術が必要になります。もっとも一般的なのは人工関節置換術で、膝関節を人工関節に取り替える方法です。痛みは劇的に改善し、翌日から歩ける人もいます。ただし、正座や激しいスポーツがしにくくなるデメリットがあります。
次に多いのは高位脛骨骨切り術で、すねの骨の一部を切って変形を矯正する手術です。こちらは激しいスポーツや重労働も可能ですが、リハビリに2~3ヵ月を要します。
変形性膝関節症の予防には、適度な運動、歩きやすい靴、肥満に留意することが大切です。

脚上げ運動 左右それぞれ20回を1セットとし、朝晩2セットずつ行う。慣れたら昼も加えるなど回数を増やすと効果的。 脚上げ運動 左右それぞれ20回を1セットとし、朝晩2セットずつ行う。慣れたら昼も加えるなど回数を増やすと効果的。

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