なぜそれを、なぜそんなに集めるのか…「珍しいコレクション」第2弾

なぜそれを、なぜそんなに集めるのか…「珍しいコレクション」第2弾

コレクション1:ボンネット型消防車
消防自動車博物館:千葉県夷隅郡御宿町実谷437 鶏卵牧場(レトロぶーぶ館内)電話:0470-68-2631 営業日:土・日・祝日、10:00~16:00 入館料:大人540円、小学生以下は大人1人同伴で無料

消防自動車博物館:千葉県夷隅郡御宿町実谷437 鶏卵牧場(レトロぶーぶ館内)電話:0470-68-2631 営業日:土・日・祝日、10:00~16:00 入館料:大人540円、小学生以下は大人1人同伴で無料

昭和の香りが漂う消防車はじめ、歴史的な消防用具のテーマパークをたった1人でつくり上げる。

 千葉県御宿町にある「消防自動車博物館」。館内には、アメリカのフォード社製の消防車、火の見やぐら、江戸時代の火消しが使っていた火事頭巾など貴重な消防関係のものが所狭しと展示されています。そして、これらはすべて鈴木靖幸さん個人のコレクションというから驚かされます。
「最初に消防車に興味をもったのは小学5年生くらいのとき。サイレンを鳴らして火事現場に急行する姿がカッコよくて、父親のカメラを借り、消防署を訪れては写真を撮っていました」

(上)左は1936年式フォードV8ポンプ車。右は1920年式フォードT型。(左下)絵本『しょうぼうじどうしゃじぷた』に登場する古い四輪駆動車を改良した小さな消防車を再現。(右下)右から2台目の1968年式いすゞTXG20化学車が最初に購入した車両。

(上)左は1936年式フォードV8ポンプ車。右は1920年式フォードT型。(左下)絵本『しょうぼうじどうしゃじぷた』に登場する古い四輪駆動車を改良した小さな消防車を再現。(右下)右から2台目の1968年式いすゞTXG20化学車が最初に購入した車両。

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 そして38歳のとき、念願の消防車両を手に入れます。』
「知り合いから、長野に廃車になった『いすゞTXG20化学車』があると聞き、所有者に連絡を取って購入しました。車両自体は5万円でしたが、千葉までの輸送に20万円かかりました」
こだわるのは、少年時代に追いかけた「ボンネット型」と呼ばれる車両です。「デザインに味わいと昭和の香りがするところがお気に入り」というボンネット型は、エンジンが運転席の前にせり出しているタイプで昭和40年代まで活躍しました。現在の消防車の多くは「キャブオーバー型」と呼ばれ、エンジンは運転席の下にあります。

ミニカーのコレクションは、「数が多すぎて何台あるかもわからない」。

ミニカーのコレクションは、「数が多すぎて何台あるかもわからない」。

江戸時代の防具や袢纏(はんてん)なども蒐集。

江戸時代の防具や袢纏(はんてん)なども蒐集。

 元々自衛官だった鈴木さんは、大型特殊免許を持ち、自動車の整備もお手のもの。購入した車両は動くように自らの手で修復を施します。
「エンジン部分は専門業者に任せましたが、駆動系やその他の機関は自分でもいじりました。走るのはもちろんですが、消防車ですのでポンプが作動したり、はしごが延びるように直しています。飾っているだけで動かなければ意味がありません」
購入費、整備費に加え、車両を保管する倉庫代も必要です。「これまで使ったお金は、だいたい家2、3軒分でしょうか……」、そういって頭をかく鈴木さん。当初は分散して保管していましたが、鶏卵牧場のオーナーの厚意で、2014年3月からは千葉県の御宿町にすべて集めて博物館として展示できるようになりました。
「博物館のオープン5周年となる19年3月には、コレクション車両のパレードを企画しています。ぜひともたくさんの人に見てほしいですね」

コレクション2:鉄道車両
(左上)「ほしあい眼科」の看板ともいえる「キハ223」。(右下)140キロの距離を輸送後、クレーンで設置した。

(左上)「ほしあい眼科」の看板ともいえる「キハ223」。(右下)140キロの距離を輸送後、クレーンで設置した。

少年時代から憧れ続けた鉄道車両が迎えてくれる、摩訶不思議な眼科医院を開業。

「ほしあい眼科」院長の星合繁さんが鉄道好きになったのは小学生の頃。
「好きというよりは憧れでした。医者を目指したのも、鉄道模型がたくさん買えると思ったからです(笑)」
2浪して医学部に入り眼科医に。大学病院などに勤務しますが、38歳のとき、開業の話が持ちかけられます。
「“チャンス”だと思いましたね」
星合さんのいうチャンスは、「院長になること」だけではありません。鉄道模型どころか、本物の鉄道車両を手に入れるチャンスだと思ったのです。
「今は病院も競争が激しいので特色が必要です。そこで『病院に鉄道車両を置きたい』と説得して、出資者に費用を出してもらえることになりました」
全国の鉄道会社に連絡をして譲ってもらえる車両を探します。そして、ようやく決まったのが、茨城県のひたちなか海浜鉄道が保有する「キハ223」という車両でした。
「キハ223は、北海道の羽幌炭礦鉄道を走っていたディーゼル車で、羽幌炭礦鉄道が1970年に営業廃止となった後、71年から2009年までひたちなか海浜鉄道で活躍しました。さらに千葉の流鉄からも車両を2つ譲ってもらえることになり、一気に3両を手に入れることができたのです」
病院の建設前に、まずは茨城からキハ223の輸送大作戦が始まりました。
「業者が車両専用のトレーラーに乗せて、茨城から埼玉まで140キロの距離を運んでくれました。車両自体は80万円ほどで譲ってもらったのですが、じつはこの輸送費と修復費に1000万円近くかかってしまいましたね」
その後もコレクションを続け、現在の保有車両は5両。しかし、まだまだほしい車両があるようで、「大阪出身なので昔よく乗っていた阪急電車の車両はほしいですね。そして、細長い土地を買ってレールを敷き、自分で運転して走らせるのが一番の夢です!」。

流鉄流山線の2つの車両が病院前に並ぶ。

流鉄流山線の2つの車両が病院前に並ぶ。

病院内のシートも、電車の座席がさり気なく使われている。

病院内のシートも、電車の座席がさり気なく使われている。

コレクション3:辞書
境田稔信さん

増え続ける辞書の重さに 大家さんもついに降参!? 「頼むから1階に引っ越して」

 フリーの校正者で、日本エディタースクールで講師を務める境田稔信さん。
「20歳の頃に、戦前に書かれたものを含めた著作集の校正を任されたのですが、今の国語辞典には載っていない言葉がたくさん出てきたんです。最初は国会図書館などに通って古い辞書で調べました。ただ、校正のたびに図書館に通うのも大変だったので、神保町の古書店街で集めるようになりました」
それから40年の歳月を経た境田さんのご自宅は写真のとおり。辞書は廊下から部屋のいたるところに並べられていて、2部屋のほとんどが辞書で埋め尽くされています。
「20歳の頃から2日に1冊のペースで40年間買い続けています。途中まで目録を作っていたのですが……、全部で大体6000点くらい。以前は2階の部屋を借りていましたが、地震による崩壊を心配したマンションの大家さんから『頼むから1階に引っ越して』とお願いされました。辞書が置きやすいように改築までしてもらったんです」
ちなみに「点」とは、辞書1冊も20巻以上ある百科事典も1点という境田さん独自の数え方。冊数でいえば1万冊はゆうに超えていて、『言海』だけでも約270冊あります。そんな境田さんですが、校正の仕事では、電子辞書や「ジャパンナレッジ」という辞書の総合サイトをよく利用するとか。
「『日本語大辞典』をはじめ、百科事典や英和・和英など、さまざまな辞書が使える有料サイトです。スマホでも使えて便利なんですよ(笑)」

(左)アメリカ軍が日本語を学ぶため戦時中に複製された『大字典』。(右)豆本の英和辞典。

(左)アメリカ軍が日本語を学ぶため戦時中に複製された『大字典』。(右)豆本の英和辞典。

日本の近代的な国語辞典の元祖といわれる『言海』。大形・小形・中形・寸珍本があり、紙質によって厚みもまちまち。

日本の近代的な国語辞典の元祖といわれる『言海』。大形・小形・中形・寸珍本があり、紙質によって厚みもまちまち。

コレクション4:試し書き
寺井広樹さん
寺井さんが最初に出合ったベルギーの試し書き。すべてがここから始まった。

寺井さんが最初に出合ったベルギーの試し書き。すべてがここから始まった。

不特定多数の無意識が生み出す”現代アート“か、あるいはただの落書きか。

 筆記具売り場に置かれている試し書き用の紙。それを、おそらく世界で唯一集めているのが寺井広樹さんです。
「深夜まで仕事という生活にすっかり疲れてしまい、26歳のときに会社を辞めてヨーロッパへ1人旅に出たんです」
特にあてもなく旅を続ける中、ベルギーで立ち寄ったショッピングモールで出合ったのが「試し書き」でした。
「突然、不特定多数の人たちが無意識に書き込んだ文字や絵が、不規則ながらも集合体としてアートのように感じられ、衝撃を受けたんです」
試し書きを集めてみると、国によって特徴があることがわかります。
「フランスやイタリアは絵が描かれていることが多く、アートが感じられます。万年筆が描かれたイタリアの試し書きを日本で展示すると、『20万円で買いたい』と申し出がありました。もちろん丁重にお断りしましたが(笑)」
寺井さんは自ら25ヵ国を訪れました。
「インドには『インド式掛け算』というのがあるくらい理系の人材が豊富。試し書きでも計算式が書かれているものが多かったですね。アルゼンチンはカラフルなペンをたくさん使うのが特徴で、ラテン系の陽気な気質が感じられました。同じ南米でもチリは、もう少し生真面目な印象があります。あと、中国は言論統制されているインターネットと比べて、試し書きに書かれている内容は自由な印象がありました」
ラジオやテレビに出演すると、海外在住の日本人が各地の試し書きを送ってくれるそうで、コレクションは108ヵ国、4万枚に増えました。それでも、今も毎日のように文具店を訪れては試し書きをチェックするそうです。
「試し書きを見ると世相や流行、その日の天気までわかります。今年の夏だと、安室奈美恵引退や猛暑の書き込みが多かった。最近は次の元号予測もけっこうあります。どこかにきっと“正解”が書かれていると思いますよ(笑)」

(左上)インドの試し書きには計算式が多い。(左)アルゼンチンは明るい色使い。(上)イタリアのものを展示すると20万円の値が。

(左)インドの試し書きには計算式が多い。(中)アルゼンチンは明るい色使い。(右)イタリアのものを展示すると20万円の値が。

コレクション5:紙袋
加茂伸洋さん

「もったいない」が高じて 紙袋を集め始め、 蒐集が高じて本業になる。

 買い物をしたときに商品を入れてもらう紙袋。「もったいない」と、取っておくことも多いのではないでしょうか。加茂伸洋さんも、最初はそんな気持ちで蒐集をはじめたといいます。
「母が厳格な人で、『モノを大事にしなさい』と言われて育ちました。高校のときにアルバイトしたお金で初めて自分で洋服を買ったんですが、紙袋を捨てるのがもったいなくて。その後進学したデザインの学校で、紙袋を作る授業があったんです。調べると、やはり高級ブランドの紙袋はコストもかかっていて紙質もいい。文字を箔押しにしたり、内側にも模様が入っていたりと細部にこだわりがありハマりました」
しかし、当初は入手に苦労します。
「当たり前ですが、商品を買わなければ紙袋をもらうことはできません。シャネルやカルティエなどの高級ブランド品なんてとても手が出ませんから、カタログを希望して、それを紙袋に入れてもらっていました。ただ、目的は紙袋ですから、お店に申し訳なくなってその方法はやめました。

紙を編んで作られたものは、テレビへの出演後、視聴者の方から頂く。

紙を編んで作られたものは、テレビへの出演後、視聴者の方から頂く。

シャネル・パリ本店の紙袋には住所が記載されている。

シャネル・パリ本店の紙袋には住所が記載されている。

最近はインターネットオークションですね。3〜5枚セットで200〜500円くらいで売られているので比較的入手しやすくなりました」
街中で“いい紙袋”を持つ人がいると、ついフラッとついていくことも。
「電車の中で見たことがない紙袋を持つ女性がいたので、近づいてジロジロと見てしまったことがあります。不審者と思われたかもしれないですね(笑)。ただ、近くで見ないと紙の質感や加工がよくわからないので……」
現在は念願の紙袋専門デザイナーに。
「『取っ手の部分はカルティエ風で』とか『紙はシャネルみたいに』のようなリクエストも、実物を見なくてもすべて頭の中に入っていますから、得意先との打ち合わせがスムーズです。
ブランド品を買うのは、いわば非日常的な行為です。そんなとき、カッコいい紙袋に入っていたらより嬉しいですよね。これからも、お店とお客様とをつなぐものとして喜ばれる紙袋をデザインしていきたいと思っています」

現在は、紙袋デザイナーとして活躍し、オリジナルの紙袋を制作している。まさに趣味と実益を兼ねた仕事。

現在は、紙袋デザイナーとして活躍し、オリジナルの紙袋を制作している。まさに趣味と実益を兼ねた仕事。

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