週刊通販生活トップページ  >  読み物:映画『日本と再生 光と風のギガワット作戦』監督・河合弘之さんインタビュー

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「近い将来、日本は必ず自然エネルギー大国になる。この映画をつくって確信しました」

「脱原発が実現した後のエネルギーはどうするの?」その問いに、答えたかった。

――『日本と再生』は、『日本と原発』(2014年)、『日本と原発 4年後』(2015年)に続く、河合さんの監督3作目となる映画です。制作のきっかけは何だったのでしょうか。

河合 前作も前々作も、原発がいかに危険でコストがかかるかを説明するためにつくりました。これまでに、日本各地で1700回以上自主上映され、10万人以上の人に見てもらえました。今日も、どこかで自主上映をやっていますよ。裁判所でも上映して、いくつかの原発差し止め訴訟では勝利を勝ち取ることができました。何千万円も自腹を切ってつくっただけのかいはあったと思っています。
 でもね、見てくれた人が僕に言うんです。「原発が高くて、危険なエネルギーであることはよく分かりました。でも河合さん、原発がなくなった後のエネルギーはどうすればいいの?」って。「じゃあ、その問いにお答えしましょう」ということで、『日本と再生』をつくることにしたんです。
 せっかく自然エネルギーをテーマとする映画をつくるなら、国内はもちろん、世界中で自然エネルギーを実践している現場を紹介したかった。そこで僕が白羽の矢を立てたのが、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の所長で、全国ご当地エネルギー協会の事務総長でもある飯田哲也さん。環境学者として日本の自然エネルギー普及の旗振り役を務めてきた飯田さんをおいて、この映画の案内役はいないと直感したんです。
 飯田さんと僕は、およそ2年間で、デンマーク、ドイツ、南アフリカ、アメリカ、アラブ首長国連邦、アイスランド、中国の7ヵ国を訪ね、政府や自治体、企業、NGOなど、様々な立場で自然エネルギーに携わっている人たちの話を聞きました。国内でも、北は北海道から南は九州まで飛び回って、自然エネルギーの発電所をつくってエネルギーの地産地消を目指している「ご当地電力」の人たちを取材しました。「自然エネルギーは安全なのか。儲かるのか。安定しているのか」を改めて確かめるために、地球上を駆け回ったという感じです。

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――『日本と再生』では、アメリカのペンタゴン(国防総省)まで行き、陸・海・空軍の環境安全補佐官にインタビューをしていますね。

河合 僕も最初は、まさかこの映画の撮影のためにペンタゴンに行くことになるなんて、思ってもみませんでした。飯田さんが親しくしているエネルギー学者のエイモリー・ロビンスさんにアメリカでインタビューをしていたら「私はペンタゴンのエネルギー顧問をやっているんだ。米軍も自然エネルギーを積極的に導入しているから、ペンタゴンへ行って話を聞いてくるといい」というので、取材を申し込んだんです。もちろん、煩雑な手続きを踏まないと撮影にはこぎつけられなかったけれど、米軍の中枢まで行って「これからは自然エネルギーだ」という言質を取れたことは、映画にとってとても大きなプラスでした。それに僕自身も、インタビューを心から楽しめました。
 今回の作品をつくりながらずっと感じていたことですが、世界中どこへ行っても「自然エネルギーは、こんなに楽しくて、しかも儲かるんだよ」と誰もが楽し気に話してくれる。そうすると、聞いている僕らも「うん、うん。それで、それで?」と前のめりになって、いろんな話を聞きたくなる。すごく楽しかったです。前作と前々作は、「今だけ、金だけ、自分だけ」と考えて原発を推進してきた連中への怒りや、事故がもたらした悲しみを原動力にしてつくっていたから余計にね。
 自然エネルギーのことは、誰もが笑顔で語ることができるんです。それは決して強がりでも感情論でもなくて、しっかりとした経済的な裏付けがあってのことなのだとこの映画でしっかり示せた。「日本と再生」はすでに一般公開を終え、全国各地で自主上映が始まっていますが、今作もたくさんの人に見てもらえる出来になったと自負しています。

時代の潮流は原発よりも自然エネルギー。
それを経済人に伝えたい。

――映画のなかでは、「天候に左右される自然エネルギーは不安定だ」「自然エネルギーはコストが高すぎる」といった自然エネルギーに関する否定的な意見の多くが誤解であると、次々に明らかにされていきます。

河合 自然エネルギーを導入する際には、風力・水力・地熱・太陽光などの発電所をいろいろな場所で同時に稼働させながら、発電量の変動分を補い合うのが現在の主流の考え方。世界を見渡せば、「自然エネルギーは不安定」という認識が時代遅れであることは、誰の目にも明らかです。
 「自然エネルギーはコストが高い」というのも間違い。例えば、風力発電。風車は原発と違い、大量生産して大量に稼働させることができます。大量生産できれば、技術も向上しますから、生産コストはどんどん安くなる。それだけでなく、部品をつくって、運んで、風車を建てるという一連の流れが雇用を生み出し、メーカーはもちろん、運送業者も建設業者も儲かる。実際、脱原発後のドイツでは、自然エネルギー業界の雇用が、火力など、従来からあるエネルギー業界の雇用の2倍にまで増えています。
 また、「ドイツは脱原発したと言うけれど、フランスから原発の電気を買っているからズルだ」という批判がありますね。これをドイツのエネルギーの役人や幹部にぶつけると、彼らは「それは間違いです。EUでは多国間送電網で電気のやりとりをしていますが、ドイツはフランスに3倍も売り越しをしています」と答えました。それもそのはず、ドイツは、過去10年以上、周辺諸国へ電気を輸出し続ける電力輸出大国なのです。

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 自然エネルギーに関する一番大きな間違いは、「儲からない」ということでしょう。僕がつい噴き出しちゃったのは、ハワイのマウイ島で風力発電所のオーナーに「風力発電は儲かりますか」と聞いたら、「風車が回転しているのを見ると、1ダラー、2ダラー、3ダラーと唄っちゃうよ」と返事されたとき。自然エネルギーは、儲かるんですよ。それを証明するデータもすでに出ています。2015年、世界中で自然エネルギーへ投資された額は約31兆円で、過去最大でした。この額は、今後さらに膨れ上がっていくでしょう。映画に登場した、アメリカ再生可能エネルギー評議会の会員も「アマゾンやグーグルといった世界的大企業が、自然エネルギー事業への参入によって企業の持続可能性を保とうとしている」と明言しました。
 一方、原発は儲かりません。大量生産できないから技術の習熟や生産性の向上は望めないし、ひとたび事故が起これば数千億円もの損失が出る。あの東芝でさえ、原発事業で7000億円もの損失を出して、真っ青になっているでしょう。
 僕はこの映画で、「いつまでも『自然エネルギーは儲からない』なんて言っていると、時代の潮流に乗り遅れるぞ」と経済人にメッセージを出したつもりです。「原発やめよう」なんて声高に叫ばなくても、実利の裏付けがあると分かれば、自ずと経済界は動き出しますから。
 それに自然エネルギーは、単なる原発の代替エネルギーではありません。映画でも触れましたが、IoT(モノのインターネット)やAⅠ(人工知能)といった最先端技術は、自然エネルギーとの相性が非常に良いのです。何万もの自然エネルギー発電所やユーザーをコンピュータでつなぎ、送電や配電をコントロールするには、IoTやAⅠの技術が大変頼りになる。技術者たちにとっても自然エネルギーは、最新技術を使いこなすための、これ以上ない稽古場なんです。
 この最新技術と自然エネルギーとの相性に、僕は非常に驚きました。素朴で手触り感のある自然エネルギーが、最先端技術と結びつけば、生産性は今とは比べ物にならないほど急速に向上し、普及もどんどん進むでしょう。
 安全で、儲かって、そのうえ、ワクワク感もある。これからの時代、自然エネルギーをやらない理由がないくらいですよ。

日本も近い将来、自然エネルギー大国になる。 それ以外の結論はありえません。

――作中、自然エネルギーの電気を供給する電力小売り会社への入会を促すコマーシャル風の映像など、ユニークな演出も多々見られます。

河合 脱原発を願う一市民の立場からでも、例えばこんなことができますと伝えたかったんです。それも、ユーモアを交えながらね。僕はこの映画によって、日本の自然エネルギー比率を増やし、原発を減らしたいと本気で考えているんです。そのために必要だと思ったから、コマーシャルを映画のなかに盛り込みました。
 僕の映画を見て「こんなのドキュメンタリーじゃない」という人がいるんですけど、僕にしたらほめ言葉ですよ。僕は、洗練されたドキュメンタリー映画をつくりたいわけではありませんから。ドキュメンタリーの定石から外れていようが、そんなことは構いません。見る人に、いかに実践的なメッセージを与えられるかということの方が、よっぽど大切です。

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――河合さんは、20年以上にわたって脱原発訴訟に携わり、最近では東京電力福島第一原発の事故後に甲状腺がんとなった子どもたちを支援する目的で設立された「3.11甲状腺がん子ども基金」の理事を務めるなど、一貫して脱原発のための活動を続けています。原動力はどこにあるのでしょうか。

河合 僕、バブルの頃に経済事件で勝ちまくって、ボロ儲けしたんです。でも、ふと自分の人生を考えたときに、心に秋風が吹いた。「何か社会に貢献できることをしたい」と考え、脱原発の活動を始めたのです。
 ところが脱原発の闘いは、どれだけやっても報われない。日本で脱原発を叫ぶということは、周りを全部敵にするに等しいんですよ。3・11前は、今よりもずっと風当たりが強かった。僕は中国残留孤児の国籍取得を支援する活動もやっているのですが、それに対しては「河合さん、本当によくやってくれているね。ありがとう」とみんなから声をかけてもらえるけど、脱原発はそうはいかないんです。
 「もう限界」……そう考えていた矢先に、原発事故が起きました。それで、「日本の脱原発は、僕の天命だ。脱原発を実現させるまでは、死ねない」と思い直して今に至ります。 でも『日本と再生』をつくりながら、僕の望みはもっと大きく広がりました。日本が自然エネルギー大国になって、みんなが安心して暮せる社会が実現するのを見届けたいんです。だから、今僕は72歳ですが、長生きが目標です(笑)。
 みなさんに声を大にして言いたいのは、我々はこの闘いに必ず勝つということです。ウイ・シャル・オーバー・カムですよ。それも、サムデイではなくて、イン・ザ・ニア・フューチャー。近い将来、日本は必ず自然エネルギー大国になる。僕がなぜ、そう言い切れるのかは、『日本と再生』を見ればきっと分かってもらえるはずです。自然エネルギー普及の輪を広げるために、自主上映会も開いてください。
 さぁ、勝利はもう目前です。目先のことに一喜一憂しなくても大丈夫。必ず勝つと確信して、伸びやかに闘っていきましょう。

河合弘之(かわい・ひろゆき)1944年、旧満州生まれ。東京大学法学部卒業後、弁護士開業。さくら共同法律事務所所長。ビジネス弁護士として活躍する一方、浜岡原発差止訴訟などの原発差し止め訴訟も数多く担当。東京電力福島第一原発事故後に立ち上げた「脱原発弁護団全国連絡会」の代表も務める。近著に『原発訴訟が社会を変える』集英社新書)など。

『日本と再生 光と風のギガワット作戦』

弁護士の河合弘之と、環境学者の飯田哲也が、世界の自然エネルギーの実情を探る旅に出た。そこで出会ったのは、自然エネルギーの経済効率の高さと無限の可能性を語る人々だった。「日本と再生」──長年にわたり脱原発の活動を続ける河合弁護士がタイトルに込めた思いが、見る者の心にダイレクトに伝わってくる。

監督 河合弘之(弁護士)
企画・監修 飯田哲也(環境学者)
音楽 新垣隆
エンディングテーマ 坂本龍一

【自主上映会受付窓口】Kプロジェクト
【問い合わせ先】03(5511)4427
詳しくは、「日本と再生」公式HPをご覧ください。

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