週刊通販生活トップページ  >  読み物:福島県の子どもたちの甲状腺検査/最新結果報告(1)

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昨年11月の結果発表時と比べて、「甲状腺がん」と確定した子は7人増の33人、「疑いのある」子は9人増の41人に。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線の健康への影響を調査している福島県「県民健康管理調査検討委員会」が2014年2月7日に福島市内で開かれた。県民健康管理調査で調査している項目のうち、甲状腺検査では、手術によって「甲状腺がん」と確定した人数が前回(2013年11月12日)発表時より7人増えて33人になった。また「がんの疑い」は9人増えて41人になった。
 甲状腺がんの増加について検討委員会の星北斗座長は「想定される範囲だと理解している」と述べ、放射線の影響を否定した。
 県民健康管理調査は、放射線が健康に及ぼす影響を長期にわたって調査することで福島県民の健康を守ることを目的にしている。調査項目は、事故直後に受けた外部被ばく量を把握することなどを目的とした問診票による「基本調査」と、甲状腺検査やホールボディカウンターによる内部被ばく調査や妊婦の問診票調査などを含む「詳細調査」の2段階で実施されている。
 このうち甲状腺検査は、事故発生時に18歳以下だった子ども約36万人を対象に、1次検査として、2014年3月までにエコー検査を完了させることになっている。その後は、20歳になるまでは2年に1回、それ以降は5年ごとの調査を予定している。
 1次検査の結果は、確認された嚢胞(のうほう)や結節(しこり)の大きさなどによって、調査を受託している福島県立医大が独自に設定したA1、A2、B、Cの4段階に分類される。A1とA2の判定になった人は、基本的には2014年以降に予定されている次回検査まで甲状腺検査はされない。BとCの判定は、細胞診などより詳しい検査をする2次検査に進む。
 これまでの受診者数は2013年12月31日時点で26万9354人にのぼり、25万4280人の1次検査結果が確定している。その結果、A1が13万4805人、A2が11万7679人、Bが1795人、Cが1人だった。
 BとCの判定が出た1796人のうち、1490人が2次検査を受診し、これまでに1342人の検査結果が確定。そのうち871人は、経過観察を含めた通常診療などに移行。甲状腺がんおよびがんの疑いがわかった73人は、通常診療のグループに含まれている。
 1次検査、2次検査を未受診の人も含めて、結果が出ていない対象者は多く、このまま推移すれば甲状腺がんの発生数が増えることも予想される。

「放射線の影響とは考えにくい」と星座長。

 県民健康管理調査検討委員会ではもともと、子どもの甲状腺がんは100万に1人か2人という非常にまれな病気だという認識を持っており、対外的にもそのように説明していた。
 しかし検査で見つかった甲状腺がんの数は、確定した患者数では1万人に1人、疑いまで含めると1万人に3人の割合になるため、従来の説明に比べると最大300倍にもなってしまう。
 このため、放射線との因果関係とは別に、通常に比べて明らかに多発しているという論文も発表されており、早急な対応が必要だと指摘する専門家もいる。
 こうしたことから、検討委員会後の記者会見では、甲状腺検査の結果に質問が集中した。
 報道陣からの疑問に、星座長は「今後、きちんと検証する必要はあると思うが、今までの知見からいうと『(放射線の影響とは)考えにくい』という表現を使っている」と述べ、「想定の範囲内」という回答を繰り返した。

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今回の結果は「想定内」だと言う検討委員会座長の星北斗氏。

 星座長のいう「これまでの知見」は、主にチェルノブイリ原発事故(86年)に関連する調査結果に基づくものだ。検討委員会は、チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんが増えたのは事故から4年後以降であり、発症年齢が思春期以前の若年層に多かったと説明している。また、県民健康管理調査の基本調査の結果などから、福島原発事故による被ばく量はチェルノブイリ原発事故よりも少なかったと見ていることも、「考えにくい」という判断の根拠になっている。
 しかし、どこまでの範囲が「想定内」になるのかについて、委員らが説明する根拠は分かりにくく、報道陣から繰り返し説明を求める声があがった。
 これに対して星座長は「(甲状腺がんの子どもが)いくつ出る、という数を想定したものではない」と答え、「ある範囲において、想像している範囲を超えていない」ことだと説明した。
 また検討委員会の清水一雄委員(日本医科大学内分泌外科部長)は、日本でのがん登録の結果と比較すると県民健康管理調査での甲状腺がんの発見数が多いことは認めているものの、がん登録は「発症してはじめて登録されるので、(福島県のように18歳以下の子どもを)全員検査した数字とは比較できない」という考え方を示した。そして「これだけ大規模な検査をすると見つかる。それは何%とは予想できないので、その中でこういう結果が出たということ以外にいえない」という認識を述べた。
 結局、「想定の範囲」のしきい値はあいまいなままになっている。

報道陣の疑問が解消されない記者会見。

 甲状腺検査の結果に対する疑問とともに、検討委員会にはもうひとつ、設立当初からの大きな問題がある。情報公開に対する消極的な姿勢だ。
 現在、検討委員会は3ヵ月に1回の間隔で開催されている。2011年の委員会設立当初は不定期の開催だったが、2012年秋に毎日新聞が、公開されている「表」の検討委員会の裏で、「秘密会議」を開催して委員の間で事前の意見のすり合わせをしていたことなどを大きく報じた結果、情報公開に対する姿勢を見直すことになり、それにともなって定期的に会議を開催することになった。
 とはいえ開催頻度は少ないままだ。それにもかかわらず、主催する福島県は委員会後の記者会見をできるだけ短い時間で打ち切ろうとする姿勢をたびたび見せている。そしてそのたびに、延長を求める報道陣との間でひとしきり、厳しい言葉の応酬がある。
 2013年2月以降、報道陣の要求に対して福島県は一定程度の会見時間延長を認めていたが、今回の会見は、わずか45分間で打ち切られた。
 しかも短い時間の中で、検討委員や、調査を実施している福島県立医大の説明は前述したようにわかりにくい言葉が繰り返されることも多く、報道陣のフラストレーションは溜まる一方だった。質問に対する回答をしないまま、司会者が次の質問者を指名したり質問を打ち切ったりする場面もあり、複数の記者や、会見場の後ろで傍聴していた参加者が大きな声で抗議することもあった。
 甲状腺検査の結果に関してはさまざまな考え方が錯綜しており、注意深く、かつ詳細に記事や論文を分析していかないと、正しく状況を判断することが難しくなっている。
 このような中で検討委員会に求められているのは、複数の視点から結果を検証し、論点を科学的かつ論理的に、子どもを抱える親たちにもわかりやすく説明することであろう。しかし検討委員会でも記者会見でも、誰もが納得する説明がされているとは言い難く、疑問が数多く残ってしまっている。そしてその疑問のいくつかは、次の3ヵ月後の検討委員会まで待たないと解消できない。この間隔は、自分や子どもの健康に不安を感じている人にとってはあまりに長い。
 福島県は透明性を確保し説明責任を確実に果たすためにも、検討委員会開催の間隔を短くしたり、柔軟な記者会見の運用を考えるべきではないだろうか。ひいてはそれが、県民健康管理調査の信頼性を醸造していくのではないだろうか。
 次回の検討委員会は、2014年5月に予定されている。

木野龍逸(きの・りゅういち)1966年、千葉県生まれ。最新刊『検証 福島原発事故・記者会見3 欺瞞の連鎖』(岩波書店)が2月28日に発売される。