週刊通販生活トップページ  >  読み物:フクシマの首長【第4回】楢葉町 松本幸英町長‐3

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国には、帰町する人も、理由があって帰町できない人も、双方が生活再建できるような施策を打っていただきたい。

――避難生活を続けておられる方の中には、帰還を望まない人もいらっしゃるかと思います。そうした方々への手当はどんなことが考えられるんでしょうか。

松本  これは国にも申し上げていますし、自民党の東日本大震災復興加速化本部の大島理森本部長にもお話をさせてもらっています。「帰町する人も、理由があって帰町できない人も、双方が生活再建できるような施策を打っていただきたい」という話をずっとしてきているんですね。それによって、賠償の枠組みも当初よりは状況にあったものに近づいてきていると思います。

――たとえばどんなところでしょうか。

松本  「町を離れて移住する方についても賠償をしますよ」ということになってきています。また、町に戻る方に対しても、少しずつではありますが、かさ上げになってきています。もちろんすべて満足できるものではありませんが、当初提示されたものより、かさ上げされてきています。ただ、一口に「賠償」といってもケースバイケースで全然違います。求めればきりがないような部分もありますから非常に難しい。楢葉町だけで全体の賠償の枠組みを変えることもできませんから、双葉郡八ヵ町村長で考え方をすりあわせて国に申し入れを続けていきたいと思っています。

仮置き場には黒いフレキシブルコンテナバッグに入れられた廃棄物が積まれ、その上に緑色のシートがかけられる。奥に見えるのは広野火力発電所。

――生活再建という点では、今後の楢葉町はどうなっていくのでしょうか。これまでは農村で原子力発電所もありました。復興後の町、帰町後の町の形をどのように思い描いていますか。

松本  そこも難しいんですけれどもね……。今、楢葉町は廃炉に関する研究実証施設(モックアップ施設)を誘致していて、2014年には着工します。研究施設ですから直接の雇用はそれほど多くないのですが、裾野を広げるとかなり他から入ってこられる企業も見込まれます。いわゆる廃炉産業を通じて雇用を生み出したいなと思っています。
 また、町の基幹産業は農業でしたから、営農再開にもしっかりと取り組んでいきたいと考えています。当然ながら放射能関係についてはずっと調査しています。2012年からは水稲の実証栽培も行なっており、検査したコメは食品衛生法の基準値(1kgあたり100ベクレル)を大きく下回りました。農業は基本的にはできると思っていますから、いわゆる風評に負けないように取り組んで、原風景を取り戻したいと考えています。それだけではなく、災害からの復興・再生のモデルとなるような「新生ならは」の創造を目指していきたいですね。

楢葉町内では2012年から水稲の実証栽培試験が行なわれている。

――町に帰った場合、町民の方、子どもたちの健康についてはどのような対策を講じていくのでしょうか。

松本  これも大変な話です。今の時点では、子どもを持つ世帯の方々がなかなか帰町しない旨の話を聞いています。ただ、若い方と会議などで話すと「今は帰らない」という言い方をするんです。「将来は戻るんだな」と聞くと、「間違いなく戻ります」という話を聞いています。したがって、当然ながら親子で戻ってくることを期待しています。そういう状況の中で、放射能による健康被害がないかどうか、健康診断を含めた体制をしっかり確立していかなければなりません。できれば国にも直接的に関与してもらいたい。今は県が一括で情報を集約しているので、その意味では期待しています。
 町としてはホールボディカウンターなどを設置して、子どもにも対応できるような形にしていきたいと思っています。もちろん楢葉町だけでは限界がありますから、いわき市内の病院とも連携していく体制を作っているところです。

いわき市にある楢葉町立小・中学校。楢葉中学校、楢葉南小学校、楢葉北小学校の3校が入る。

――双葉郡8ヵ町村のうち、川内村は遠藤雄幸村長が2012年1月31日に「帰村宣言」をしています。広野町も2012年3月に役場を町内に戻し、山田基星町長(当時)が帰町を呼びかけました。それでも帰還した人は川内村で約2割、広野町で約3割程度にとどまっています。楢葉町としては、どれくらいの方が戻られるとお考えなのでしょうか。

松本  帰町が決まれば全町民に戻ってもらいたいところなんですが……。2012年12月に行った住民へのアンケート調査では、4割の方が戻りたいと答えています。2割の方は戻らない。残り4割の方が迷っているという状況です。こうしたデータを見ると、少なくとも5割の方は戻られるのかなと思っています。ただ、これはあくまでもアンケート上の確率的なものであって、実際に避難指示が解除されなければ見えてこないのかなと思います。それでも我々行政としては、戻れるような環境づくりをしていきたいと考えています。

楢葉町内で営業を再開した商店。

――具体的にはどのような環境づくりでしょうか。

松本  まずはインフラの復旧です。道路、電気、通信、上下水道等については、一部津波被災地区を除いて開通しており、インフラの復旧はほぼ完了しています。生活圏の除染もひととおり実施しました。この他、ガソリンスタンド、工務店、スーパー、コンビニエンスストアなども再開しています。JR常磐線の広野駅〜竜田駅間の運行再開に向けた復旧作業も行なわれました。

楢葉町内で営業を再開したスーパーマーケット、ブイチェーンネモト。

――JRは町の帰町判断を待って運行再開を予定しているそうですね。

松本  ただ、「何をすれば町民が戻る」というのがないんですね。総合的な環境が整わないと「戻る」という意識にはなりません。そこが非常に難しい。

――町としての帰町判断のポイントはどこになるのでしょうか。

松本  非常に悩ましいところです。ポイントは3つあります。まずはインフラ整備。それから除染の効果。そして東京電力福島第一原子力発電所の状況です。
 インフラ整備についてはさきほど申し上げたようにほぼ完了しています。除染については、東京大学の児玉龍彦先生を委員長とする除染検証委員会を立ち上げて、4月3日に第一次報告書をまとめていただきました。原発の状況については外部の方にも入ってもらい、楢葉町原子力防災対策検討委員会で話し合ってもらいました。ただ、福島第一原発の汚染水漏洩の問題は、町民の帰還意欲に少なからず影響を及ぼしていると思います。

運転再開に向け復旧作業が行われた楢葉町内のJR常磐線竜田駅。

――今年4月下旬から5月2日にかけて、町では県内外で計12回の町政懇談会を開催していますね。

松本  現在の町の復旧状況や空間放射線量の考え方などを町民に説明しました。また「安全の確保」と「生活に必要な機能の回復」を前提とした24項目にわたる「帰町計画」の概要も示しました。今年5月末には「帰町の判断」、すなわち、町で生活できる時期についての判断をすることにしています。

――楢葉町を支援したいという方は全国にいらっしゃると思います。そうした方々ができることはどんなことでしょうか。

松本  子どもたちの心のケアでしょうか……。我々は大人はこの災害から立ち上がれる、自立できると思っていますが、若い方々、特に子どもたちに対してはなかなか難しいところがあるのかなと思うんです。そういう子どもたちに対する心のケアが重要になってくる。わかりやすく言うと、本を送っていただいたり、あるいは子どもたち同士で交流をさせていただいたりということです。町でも予算化していますが、今、必要なのはそういう点かもしれません。

【楢葉町への支援の窓口】
〒970‐8044
いわき市中央台飯野3丁目3-1
いわき明星大学大学会館内
楢葉町役場いわき出張所 生活支援課
TEL 0246-46-2551

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