朝8時の疑問 アメリカ人は本質的に死を恐れない…

トランプ支持者はこの後もずっとマスクをしないのか?

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1月6日に起きたアメリカ連邦議会議事堂への襲撃事件。衝撃的な事件でしたが、乱入したトランプ支持者のほとんどがマスクをしていなかったことにも驚きました。アメリカは、今も新型コロナウイルスが猛威を振るっているはずなのに……。アメリカ在住で、トランプ陣営の集会を多く取材した町山智浩さんに伺いました。

私はこう考える

町山智浩さん

後編

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軍隊経験者や警察官など、
高い戦闘能力を
持つ人たちが、
統率された指揮によって
議事堂の警備を突破して
乱入したのです。

 1月6日、連邦議会でバイデン勝利を認定するのを阻止しようと、数千のトランプ支持者が議事堂に乱入する事件が起きました。
 あの日、トランプ陣営はテレビCMやネットなどで何億円もかけて広報活動をし、集会に数千人が集まるように手はずを整えました。
 日本から見ると、どうして簡単に議事堂に入ることができたのか不思議に感じると思います。実は、純粋なトランプ支持者を含めて、議事堂前には3種類のグループが集まっていました。
 1つが「オース・キーパーズ(Oath keepers)」。合衆国憲法修正第二条に定められた「国民が武器を保有し携帯する権利」を守ると誓った人たちの全国組織です。そのうちの約15%は軍隊経験者、あるいは現役の軍人でした。警察官や消防士も多い。つまり、高い戦闘能力を持つ人たちが、統率された指揮によって議事堂警備の警官隊を突破していたのです。
 もう1つが「プラウド・ボーイズ」という極右集団です。これはネットで作られた非常に冷笑的な反ポリティカル・コレクトネス(政治的に適切な態度)の女性差別集団です。襲撃の際には「乱入しろ!」としきりに煽っていました。
 そしてもう1つが「純粋なトランプ支持者」です。彼らはトランプ前大統領の命令で乱入したので、それが犯罪だと理解していませんでした。だから、現場でスマホで記念写真を撮って自らネットに投稿して、それを証拠に次々に逮捕されました。さらに皮肉なことに、全員マスクをしていませんから、すぐに身元が判明したのです。

5

ツイッターが
使えなくなった
トランプ前大統領は
新しいメディアをつくり、
支持者はよりカルト化
していくと思います。

 ツイッターのアカウントが永久停止処分となり、日本でもトランプ前大統領の報道はほとんどなくなったと思います。しかし、最新の世論調査(2/9公表)でも、共和党支持者の7割が、トランプ前大統領が新党を結成した場合加入に前向きと答えています。
 トランプ支持者は高齢者が圧倒的に多い。さらに、田舎に住んで食生活も健康ではない肥満体型の白人です。彼らの多くは、インターネットからもたらされる検索情報が自分自身によって歪められていることも知りません。
 高齢でネットをあまり使いこなせていない人たちなので、検索結果が客観的な事実だと信じてしまいます。また、田舎に住んでいるため、人との接触も少なく、感染経路がほとんどない。だから「マスクをしなくても怖くない」のでしょう。ただ、トランプ前大統領の集会で集まった時には感染します。
 これはどうしようもない事実ですが、トランプ支持者は先の寿命が短い。今回のバイデン勝利も、2016年にトランプに投票した高齢者が亡くなっていたことが影響を与えているとも言われています。新しく選挙権をもった若い人たちが投票に参加した結果です。
 ツイッターが使えなくなったトランプ前大統領が今考えているのは、自分のメディアを作ることです。今後はどんどんカルト化して、アンダーグラウンドなインターネットメディアで濃密なひどいやり取りを交わしていくことになるでしょう。
 トランプ新党への期待感からも明らかですが、一度陰謀論に引きずり込まれた人たちの洗脳を解くのは、非常に難しいと思います。きっと今後もマスクをすることはないでしょうね。

まちやま・ともひろ●映画評論家。
1962年東京生まれ。宝島社を経て、洋泉社にて『映画秘宝』を創刊。現在は、カリフォルニア州バークレーに在住。「週刊文春」などでコラム連載。近著に、『トランピストはマスクをしない―コロナとデモでカオスのアメリカ現地報告』(文藝春秋)。


構成:畠山理仁
イラスト:エムキュウデザイン
写真提供:ゲッティ/共同通信イメージズ

町山さんのお話は今回で終了です。どうもありがとうございました。次週、3月9日(火)からは三浦瑠麗さんにお話を伺います。

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