老舗で「足袋」を学ぶ!

第2回
老舗で「足袋」を学ぶ!

着物の着こなしに欠かせないのが、実は「足袋」。生活習慣や目的に応じて履き分ける方もいるほど、その世界は奥深いのです。そんな足袋の知識を学ぶべく、近藤サトさんが向かった先は、東京・新富町にある老舗『大野屋總本店』。

今回は通販生活ファンで着物好きの女性2名(小澤さんと中山さん)も浴衣姿で同行することに。老舗で実際に体験した、正しい足袋の選び方についてご紹介します。

左から、浴衣の中山さんと小澤さん、着物のサトさん。すぐさま意気投合。
大野屋總本店の外観

大野屋總本店

創業は安政年間(1772年〜1780年)という和装雑貨店「大野屋總本店」は、200年以上の歴史を持つ老舗。その顧客には名だたる歌舞伎役者や日本舞踊家など、伝統芸能に携わる方々がずらりと並びます。趣ある木造建築の店舗は国の登録有形文化財となっており、階上にある工房では5代目当主が生み出した「新富形」の足袋が、すべて職人の手作業で作られています。

「足袋」の選び方は2通り。お誂えと既製品。

足袋の選び方について、初心者にも分かりやすく教えてくださるのは、大野屋總本店7代目当主・福島茂雄さん。二階の工房からトントントン、と足袋を整える心地良い音が聞こえる中、サトさんたちの足袋選びがスタート。

老舗=緊張感と思いきや、扉を開けると福島さんの笑顔が出迎えてくれました。

足袋には「誂え」と「既製品」があり、まずは小澤さんが既製品の足袋選びに挑戦することに。利き足のかかとから指先まで(丈)、足の周り(甲)、指の長さなどを測り、これを元に4種類の見本からよりフィットするものを選びます。洗うと縮む分も計算のうえ、最適なサイズを見つけてもらえるので安心です。

既製品といえども、大野屋総本店ではしっかりと採寸。

「4種類の見本にはそれぞれ『細・柳・梅・牡丹』という呼び名がついており、徐々に太目になります。お客さまに細いとは言えても、それ以外は言いにくかったのでしょう。花に喩えたのは先人の知恵のようです」(福島さん)

確かに「牡丹です」と言われても嫌な気はしません。

「足袋が正しく足に合っていると、シワが寄らずにスッキリ美しく見えます。既製品はバランス良くできていますし、いつでも在庫があるというのも安心点。初心者の方は、まずは既製品を履き込むことをオススメします」(福島さん)

「柳」の試着でゆとりを感じた小澤さんは、「細」の足袋で決定となりました。

色足袋、柄足袋も気軽に楽しみたい。

中山さんは柄足袋に興味津々。正式な場所では白足袋が基本ですが、着物をカジュアルに楽しむなら、色足袋や柄足袋もどんどん取り入れたいもの。鮮やかな色の組み合わせ、小花やトンボ柄のキュートさに一同「可愛い!」の大合唱。悩み抜いた結果、中山さんは赤とパープルの小花柄をチョイス。

大島紬やデニム生地の着物に合わせたら、上級者っぽく見えそう」とサトさんもお気に入り。
イラスト/さとうあゆみ

お誂えの体験はちょっと贅沢気分!

「親指が長いので既製品だとフィット感がいまひとつ」というサトさんは、「お誂え」に挑戦。足指の周囲など、測定する箇所が両足8カ所ずつに増え、一同びっくり! これだけ細やかな採寸なら、左右差のある足でも安心です。

自分だけの足袋作りへの第一歩。サトさんのテンションも上がってました。

ここから親指側、四つ指側、底と3枚の紙型を作り、その人だけの足袋が完成。サトさんが既製品で気になっていた部分もしっかり解消できそうです。「これだけ丁寧に手間をかけていただいて、贅沢気分を味わえて、既製品のお値段プラス700円でオーダーできるというのは、とてもお得な気がします」とサトさん。

老舗の中に流れるゆったりとした時間自体に贅沢を感じます。

「お誂えでは、まずはサンプルとして1足をお渡ししますので、3回ほど洗濯して履き心地を確認してください。気になる点があれば調整して、残りの4足をお作りいたします。正座時間が長い方はゆったり目、舞踊家など足元に注目される方はシワが出ないほどピッタリ目と、履き心地の好みもいろいろ。2種類誂えて履き分けている方もいらっしゃいます」(福島さん)

お誂えは5足からオーダー可(1足5,700円〜)。サンプル完成は約1ヶ月後が目安。

足袋の洗い方と干し方のポイント

足袋は底の部分が汚れやすいので、洗濯用洗剤、または固形石鹸をつけて集中的に洗うのがコツ。足袋洗い(シュロでできた専用ブラシ)があると便利。また、干す前には全体のシワを伸ばすように引っ張り、かかと部分を立体的に整えましょう。掛け糸部分を洗濯バサミで挟めば、跡も見えにくいのでオススメです。

福島さんもオススメしていたシュロ(棕櫚)のブラシがこちら。

2階の工房で実際の作業風景を見学

1階で採寸を済ませた一行は、実際に足袋が作り出される2階の工房へ移動することに。

トントントンと音が聞こえていたのは、足袋を整える作業場から。
この模様はYoutube『サト読ム。』チャンネルでお楽しみください。

取材を終えて

足袋は「キモノ推し活」を豊かにしてくれる重要なアイテムです。

「大野屋さんで実際の作業を拝見したら、これまで消耗品的な感覚だった足袋の印象が変わりました。足で踏むことさえ申し訳ないほど、魂を込めて作られていて、職人さんたちにはリスペクトの気持ちでいっぱいです。足袋屋さんが減っている今、これからもずっと大野屋さんを応援します」(近藤サトさん)

「白足袋だけでなく、色足袋も柄足袋もたくさんあり、知らなかったことばかり。足袋作りはあんなに手間がかかるのかと驚きました。これからは感謝の気持ちで履きたいと思います」(小澤さん)

「足袋をトントンと叩くところに、職人さんの思いを感じました。すべてが手作りで魂がこもった足袋を大事にしたい。既製品とオーダーメイドと上手に使い分けていきたいです」(中山さん)

近藤サトさんと足袋について学んだ今回、「オーダーメイドの足袋は贅沢」という印象が大きく変化した取材でした。初心者だからこそ、履き心地の良いものをしっかり選び、正しくお手入れすることが大事。熟練した職人の手による足袋は、丈夫で美しく、お手入れも簡単。あなたもぜひお気に入りの足袋を手に入れてくださいね。

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企画・構成/中野充浩(ワイルドフラワーズ)、取材・文/植田広美、撮影・編集/Gee(長久弦、小林淳一)