第8回
着物ともだちの輪を広げよう!
「大衆演劇の巻」

今回、サトさんが訪れたのは東京・北区十条にある篠原演芸場。ここは1951年に大衆演劇の常設館として開場され、現在も様々な劇団の公演が催されています。そこで「大衆演劇と言えば着物!」ということで、11月公演に出演中の『章劇』(11月1日〜28日)の皆さんに、好みの着物や舞台にかける想いをお聞きしました。

イラスト/さとうあゆみ

ゲスト

澤村蓮さん
(座長)

瀬川伸太郎さん
(二代目)

澤村紫龍さん
(花形)

恋川純弥さん
(俳優・特別出演)

左から澤村蓮さん、恋川純弥さん、瀬川伸太郎さん、澤村紫龍さん
昔ながらの風情が漂う篠原演芸場。梅沢富美男さんもここから大スターへ。

章劇(しょうげき)とは?

東京大衆演劇協会所属。澤村章太郎座長(現・後見)が2000(平成12)年に旗揚げ。2015(平成27)年10月より、澤村蓮が座長に昇進し一枚看板になる。2022(令和4)年に花形昇進した澤村紫龍、特別出演の瀬川伸太郎・美月流星などが脇を固める。古典から現代劇、喜劇、人情劇、剣劇、幅広い舞台で常に観客を楽しませ、和気あいあいとした明るい雰囲気も魅力的な人気劇団。

大衆演劇に魅せられたきっかけ

サト実は大衆演劇を見るのは初めてだったのですが、皆さん、美しくて華やかで、お客さんたちも盛り上がって本当に楽しかったです。皆さんがこの世界に入られたきっかけは?

蓮さん僕はもともと劇場の手伝いをしていて、そこで大衆演劇を知りました。親に猛反対されましたが、一度舞台に立った時にお客様から頂いた拍手が忘れられなくて。高校を中退して親元を離れ、本格的に大衆演劇を志しました。

座長の澤村蓮さん。絢爛豪華な衣装も見どころ。

サトそこまでして飛び込んだ大衆演劇の魅力とは?

蓮さんすぐ近くにお客さんの笑顔があったり、涙があったり。自分の想いをお客さんにダイレクトに伝えられて、生で感じられることが、大衆演劇の舞台の大きな魅力だと思います。

純弥さん僕は大衆演劇一家の生まれで、父の劇団を継いで座長を10年務めました。今はフリーの俳優として活動しています。宝塚やOSKのOGの方々とコラボしたり、様々な舞台に出させていただいています。

様々な舞台で幅広く活躍中の恋川純弥さん。

サト大衆演劇以外の舞台も経験されて、改めて感じる魅力は何ですか?

純弥さん大衆演劇って毎日台本が変わるんですよ。夜の部が終わってから次の日の昼公演までに1冊の台本を読んで、お見せできるクオリティのものができあがる。そこが凄さだと思います。

サトそんなに短い時間でよくできますよね!

純弥さん僕も本当にそう思います(笑)。でも、時々セリフが頭に入っていないこともあります。そんな時は息の合ったメンバー同士でアドリブを入れながら繋いでいく。これが他のジャンルの舞台だとそうはいきませんから。

サト瀬川伸太郎さんは子役から舞台に立たれていたのですよね。

伸太郎さん祖父の代からの役者一家ですが、子供の頃は芝居に出るのが嫌で逃げ回っていました。

お客さんの笑顔を引き出す達人、瀬川伸太郎さん(中央)。

サト今日のステージを拝見し、今お話をしていても、伸太郎さんが人前に立つのが苦手だったとは想像できないです!(笑)

伸太郎さんどこかで覚悟を決めたんでしょうね(笑)。役者の子ではなく、改めて弟子として入団しました。この仕事は辛いこともありますが、お客さんの笑顔で一気に解消されるんですよ。自分たちの公演を見て楽しんでいただけるのが何より嬉しいです。

サト華やかで美しい役どころ「花形」の澤村紫龍さんは、弾むような演技が印象的でした。「若さっていいなあ〜」と(笑)。

抜群のスタイルで魅せる「花形」の澤村紫龍さん。

紫龍さん「花形」はこちらで初めていただいた看板なんです。以前いた劇団が解散となってこちらに拾ってもらって。毎日、先輩方のお芝居や踊りを見ながら学んでいるところです。今回、純弥さんがゲストで来てくださったので、このチャンスにいろいろと拝見して勉強したいと思います。そして、いつか座長になるのが夢です。

大衆演劇、歌舞伎、宝塚のメイクは違う

お客さんから贈られた名前入りのタペストリー(ふんどし)が雰囲気を盛り上げます。

サト着物は皆さん自前で用意されるとか? どんな着物がお好みですか?

蓮さん衣装となる着物は、専門店で各自が用意しています。僕は基本的には白や黒など、派手ではない方が好きです。

伸太郎さんショーの衣装はキラキラと派手ですが、僕も渋い着物が好きですね。

サト皆さんは女形もされますが、美しく見せるメイクのポイントはありますか?

蓮さん決まりはほとんどないので自由にやっています。もちろん役によって変化はつけないといけませんけど。口紅で輪郭だけを描くことが多いですが、それは口元を強調するためです。

サト蓮さんの目が素敵なんです! 笑うと三日月型になってとってもキュート。決めポーズでも目は笑っているという。

蓮さんそれは問題ですね(笑)。

サトあれはアイメイクで描いているんですか?

蓮さんはい。でも、メイクを落としても笑った顔です(全員笑)。

普段からの仲の良さが滲み出る、和気藹々とした温かみある舞台が「章劇」の魅力。

伸太郎さん同じ舞台メイクでも、歌舞伎や宝塚とは全く違います。あちらは大きな舞台なので顔のパーツをハッキリ見せるためのメイク。僕らはまだあっさりしてるんじゃないかと。

サト確かに! 皆さんのメイクは圧迫感がありません。このまま皆でファミレスに行けると思います。こうやって目の前で見過ぎたせいかも(笑)。

伸太郎さんお客様の中には、僕らよりも濃いメイクをされてる方がいらっしゃいますから(笑)。

サトお客様とそんなやりとりをされるんですか? ギリギリ攻めてますね。

伸太郎さんギリギリじゃないです。ほぼアウト(笑)。

紫龍さん毎回座長が伸太郎さんを止めるんです。僕が突っ込んでも「どいて!」と止まらない(笑)。

サト皆さんにとって座長はどんな方ですか?

純弥さん凄く静かな人で、テンションが上がってるところを見たことがないですね。いつも「大人しいなあ〜」って。

伸太郎さん僕は座長を18歳の頃から知ってるんですが、若い時は明るさもあったんですけど……。

蓮さん何があったんでしょうね(笑)。

サト紫龍さん、もしかして楽屋は暗いんですか?

紫龍さんはい、その通りです。先輩はみんな暗いです(笑)。

今、話題沸騰中のあのグループの正体は?

サト今後、大衆演劇をどのようにしていきたいですか?

蓮さん一人でも多くの人に、大衆演劇の魅力を知ってほしいと思っています。僕と伸太郎さん含めて4人で「チョン烈」というグループを作って、SNSでの発信を始めました。

サトそれ、TikTokで見ました! 「この人たち何がしたいんだろう?」と思って。座長の夢はそれですか。

蓮さん違いますよ!(笑)。むしろ「何をしてる人たち? 大衆演劇って何? 見に行きたい!」と思っていただけたら。実は「チョン烈」を見て、劇場に来てくれた人もたくさんいるんですよ。

サトそれはとても良いことですね。今回、YouTube動画の「サト読む。」とWeb通販生活でも紹介させていただくので、それを見て足を運ぶ人は必ず増えると思います!!

この日は十条商店街で「章劇」のパレードがあり、チョン烈として参加。地元の方々から大きな声援を受けました。

通販生活読者の皆さんへ

舞台で着る衣装としての着こなしを、キモノ道にそのまま取り入れるのは難しいのですが、大事なポイントがあります。

それは着物を着慣れているということ。皆さんの裾さばきも歩き方も、すごく身体に馴染んでいて、それが何より魅力的でした。

どんなに高価できらびやかな着物でも、身体に合っていないと違和感が出ます。やはり着物はその人にしっくりと馴染むことが大事。どんな着物でもいいからたくさん着てみる。それを心に留めておきたいですね!

蓮座長のロン毛の私服姿、劇場案内、
名物おにぎり、楽屋潜入など、
ここでしか観られないスペシャル動画です!!

企画・構成/中野充浩(ワイルドフラワーズ)、取材・文/植田広美、撮影・編集/Gee(長久弦、小林淳一)