第9回
「アンティーク着物を学ぶ」の巻
最近では着物のカジュアルな楽しみ方として、「アンティーク着物」の人気が高まっています。今回、サトさんが訪れたのは、東京・青山にある老舗『壱の蔵』(いちのくら)さんです。
店主の弓岡勝美さんが選び抜いたアンティーク着物や帯を前に、サトさんも大興奮! 他では見られない逸品から、着こなしのコツまで教えていただきました。
アンティーク着物の魅力を再発見!
サト「アンティーク着物=壱の蔵さん」と言われるほどの老舗ですが、実はお邪魔するのは初めてで、とても楽しみにしていました。
弓岡さんありがとうございます。今日ぜひ見ていただきたいと思っているのは、まずは帯の日本刺繍なんです。
サト日本刺繍は、途絶えたとも言われる貴重なものですよね。私も黒繻子の刺繍の帯を1本持っているのですが、アンティークなので丈が短くて。
弓岡さん短い時は胴を一回巻きにすればいいんですよ。これはまた後で教えますね(笑)。
サト壁にかかっているのは帯ですね。もう好き、大好き〜!!
弓岡さん昔の人は、歳時記や五節句(無病息災や子孫繁栄を願う季節の伝統行事)を大事にしていたので、それを帯に表して楽しんでいたんです。例えば、お雛祭りや端午の節句など、自分の子供のお祝いに合わせてお母さんが締めていたんですね。
サト全て刺繍なんですね! これはいつの時代ですか?
弓岡さんここにあるのはすべて大正時代のものです。「百年経っていないとアンティークとは言わない」という定義もあるんですよ。
和洋折衷の図案が多いのも特徴
弓岡さん大正時代の振袖には、バラなどの洋花が描かれているものも多いです。幾何学模様もあるし、アールヌーボーやアールデコの影響も受けています。
サト今はクラシカルに感じるけれど、当時の職人さんたちは、ヨーロッパから新しいものを取り入れて最先端のものを作ろうとしていたんですね。
弓岡さん今の若い人たちには、この時代のセンスが大好きという人も増えていますね。
アートとして海外でも人気
サト豪華な刺繍になると、ものすごく重いですね。広げるのも大変!
弓岡さん腰を鍛えておかないと痛めます(笑)。海外の方はアートとして買われる方も多いんですよ。でも、タンスの中に眠らせておくよりは良いことだと思います。
サト額に入れて飾るのもいいですね。
弓岡さん今日持ってきましたが、僕は屏風にしたんですよ。
サトキャー!! 鳥肌立ちました! 鳥が好きなので欲しいです!お幾らですか?(笑)
弓岡さん今度、近藤さんのために鳥柄で作って持っていきますね(笑)。
美術館に寄贈するほどの逸品も!
弓岡さんこの黒留袖は昭和のものなんですが、僕は大好きなんです! 染織家の野口眞造さんの作品です。江戸友禅ですが、この染め屋さんはもう今は無くて。
サトこれは素敵。この柄の取り方がすごく良いですね!
弓岡さんバルコニーから見たエーゲ海だと思います。近藤さんなら絶対に似合いますよ。
サトこちらも素敵! これはどこの風景? ヨーロッパだ! 西洋を写した着物はありますが、ここまで完成度の高いものはなかなか見当たらないですね。
弓岡さん実はこのシリーズは、数十枚ほど博物館に寄贈されたほどの逸品なんです。
サト半衿や帯締め、帯留といった小物も、アンティークは色鮮やかなものが多いですね。今の時代のほうが地味に感じます。この猫ちゃんの帯留もかわいい!
弓岡さんこれは薮内先生の作品で、お尻が上がっているので「尻上がり」と言うことで、縁起が良いものです(笑)。
自分らしく楽しめるのがアンティークの魅力!
サト今日は本当に素敵なアンティーク着物の世界を見せていただきました!これから挑戦してみたいという読者の皆様へアドバイスをいただけますか?
弓岡さんアンティーク着物では、いろいろある約束事をあまり考えなくて大丈夫。まずは挑戦してみてください。第一印象で「これを着たい!」と思った気持ちを大切にして、楽しんでいただきたいですね。
通販生活読者の皆様へ
若い世代のファンも増え、アンティーク着物の盛り上がりを実感しています。今では再現できない当時の技術やセンスを楽しめるのは大きな魅力です。
どんどんチャレンジしてください! 代々受け継がれてきた着物や帯があっても、丈やサイズが合わずに着られないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、そんな悩みをカバーする着方のコツを、弓岡さんに教えていただきました。今回の動画を参考にして、ぜひともアンティーク着物の世界を楽しんでください!!
ようこそアンティーク着物の世界へ。
壱の蔵・弓岡さんに着方のコツを教わりました!!
企画・構成/中野充浩(ワイルドフラワーズ)、取材・文/植田広美、撮影・編集/Gee(長久弦、小林淳一)