第11回
サト流でお答えします!
「着物大質問会」の巻

今回は「着物大質問大会」と題して、着物初心者の方々から寄せられた疑問に、近藤サトさんと“着物オタク”こと月刊アレコレ編集長・細野美也子さんがズバッと回答! 着物に関する様々な悩みを解消します。

イラスト/さとうあゆみ
細野 美也子(ほその みやこ)

創刊10年目、100号超の着物情報誌『月刊アレコレ』編集人。着物に特化したエディターとして、他誌の監修や撮影ディレクション、商品開発などを手掛ける。手持ちの着物を生かし、着物をワードローブの1枚として気軽に楽しむ提案を続ける。一般社団法人「きものカラーコーディネーター協会」理事。

背景の生け花は、全国高校生花いけバトル決勝大会にも出場した強豪・正則学園高等学校(東京千代田区)「花いけ男子部」が担当。

サト今回は、着物初心者からの疑問や質問に“サト流”でお答えしていきます。ただ、私の知識だけだと不安もあるので、心強い助っ人に来ていただきました。YouTube動画『サト読ム。』でもお世話になってます、「月刊アレコレ」編集長の細野美也子さんです。

細野こんにちは。こちらこそいつもお世話になっています。

サト今日は美也子さんがいるので何でも聞いてください(笑)。

Q.初心者にオススメの着物はありますか?

編集部予算が限られる中で着物ライフを始める場合、オススメの着物はありますか?

細野普段着ということを前提に、お手入れの簡単さ、買いやすい価格を考えると、「木綿の着物」がオススメですね。汚しても洗えるというのも安心です。

サトそれ、私も言おうと思ってました(笑)。木綿というと浴衣というイメージがありますが、冬も着られる木綿もあるんですよね。

細野木綿の着物は産地がたくさんあって、それぞれの風合いも全然違います。それを比べてみるのも楽しいと思います。初心者向けの帯については、締めやすいこと、どの季節でも使えるということで、「博多帯」がオススメです。

サト博多帯は木綿の着物にもOKですか?

細野OKです。博多帯と言えば、「独鈷(どっこ)柄」が有名ですが、最近では多彩なデザインのものが増えてきました。今日持って来た私の帯は、ぽこぽこっとした凹凸感のある「斜子(ななこ)織」です。

サトきれい〜! 今や博多帯はこんなことになっているんですね!!

優しい色合いの「斜子織」の博多帯。
2本以上の糸を引き揃えて織ることで、柔らかな風合いに。

細野この帯なら小紋や付け下げにも合わせられます。

サト博多帯には正絹や化繊がありますが、素材は何でも大丈夫ですか?

細野正絹の方が使える場が広いですし、締めやすいので良いです。化繊は締めるのが難しいので、初心者にはオススメしません。

サト化繊はツルっとして意外と扱いにくいんですよね。

木綿着物への愛が止まらない二人。

サト木綿と言えば、デニム着物にも注目です。「初心者にデニムはハードルが高いのでは?」と思われるかもしれませんが、これぞジーンズという素材もあれば、シンプルな紺色の着物に見えるものもあるんです。糸が細くて絹のように軽い「川越唐桟」、ふんわりと柔らかく暖かい「伊勢木綿」も素敵です。

細野木綿の一番の産地は九州の久留米ですね。久留米絣は柄も多様で、作家物はとても高価ですが、量産されている着物はお手頃なので、日常着として良いですよ。

サト久留米絣は私も良く着ます。伝統柄だけでなく、モダンな柄も増えています。木綿の着物は一枚仕立てになっているので重たくないし、摩擦があるので着崩れしにくく、汚しても洗えるというのが、何より気楽です。

Q.道行のスマートな羽織り方は?

サト続いては「出先で道行やコートを着る時にモタモタしてしまう」というお悩みです。美也子さん流の羽織り方はありますか?

細野私の方法がスマートかどうかは分かりませんが(笑)、ちょっと実践してみますね。

サトコツを覚えれば流れるように着られるようになりそう。所作として美しく、魅せる着方が良いですね。

【美也子流の羽織り方】

道行やコートの羽織り方を実践。
まずコートの襟と襟を合わせる。
そのまま身体の後ろへ回して両手で持ち直す。
帯に引っかからないように少し背を反らす。
そのまま両肩へ乗せる。
肘を曲げ、左右それぞれ肘から袖の中へ入れる。
所作として美しく見えるように意識して。

Q.年代によって着こなしの違いはありますか?

編集部年代によって着こなしで気をつけるべきことはありますか?

細野よく聞かれる質問なのですが、「若いから」「年配だから」と言ってタブーになるものはありません。それよりも「その人に似合うかどうか」の方が大事かと思います。

サト私は「その日に会う人」や「行く場所」によって考えたりはしますが、基本は自分の好きな着物を着ますね。それぞれのTPOを考えるのは洋服と同じですよ。

細野そうなんです! 洋服をあてはめたときに、どんな着こなしが相応しいかを考えるのと一緒。パーティに行く時にジーンズは選びませんよね。それと同じです。

編集部アクセサリーはパール以外NGですか?

二人わあ! その感覚は“昭和”ですね(笑)。

細野お茶会では、茶器を傷つけるリスクがあるということで、アクセサリーや腕時計、帯留まで付けませんが、それ以外では自由でいいんです。最近は細いネックレスを付けている方も多いですよ。

サト私もイヤリングは付けたりしますね。そのうち明治時代のように、着物の上にネックレスをジャラッとつけるのがトレンドになるかもしれません(笑)。

Q.色柄選びで失敗しないコツは?

細野さんは着物カラーコーディネーターとしても活躍中。

編集部色柄選びで失敗しないコツを教えてください。

細野一番大事なことは、着ていて気分が上がる着物を選ぶこと。好きな色を着ることが大前提なのですが、実は色はサイエンス。フワッとぽっちゃり系の方は膨張色のベージュなどは避けた方がいいかも。逆に細くて小柄な方が黒を着ると、キュッと締まって見えすぎて、貧相なイメージになる傾向もあります。

サト身長がある人は大きな柄、身長が低い人は小さな柄と言いますよね。素材としても絞りは凹凸感があるので、どうしても広がって幅が出て見えるということもあります。でも自分が好きかどうかで見え方が全然違うので、気に入った着物を着るのが一番! そこに、美也子さんが言うように「科学の目」が入ることでベストマッチになると思います。

細野柄の流れが縦と横かということも見え方が違います。縦縞はすらっと、横縞は幅広に見える効果があります。

サト横縞の着物ってあるんですか?

細野ボーダーの着物、ありますよ! 私も持ってますから。

サトそれは美也子さんしか着れないのでは?(笑)

細野ちょっとモダンな雰囲気になるんですよ。江戸の初期は縦縞より横縞の着物の方が多かったりして、珍しい柄ではなかったんです。

Q.着物をしっくりと馴染ませるためには?

編集部着物を馴染ませるコツはありますか?

細野タンスにしまったままの着物を着る場合は、生地が圧縮されているので風合いが生かされないんですね。とくに正絹は、絹を目覚めさせるというか、着る前に空気に触れさせるようにすることが大事です。逆に、連日続けて着る場合、衣紋掛けに掛けっ放しの着物は広がっているので、そのまま着ると太目に見えます。生地に空気が入りすぎて体に付かないんです。その場合は、一度畳んで生地を締めるようにしましょう。

サト着物を馴染ませるにはたくさん着ることですね。どんどん着ているうちに、その着物のクセや相性が分かってきます。特に紬は着るほどに風合いが良くなるので、とにかく着て慣れることをオススメします。

ルールを気にせずに着物ライフを楽しむことが大事!

通販生活読者の皆さんへ

初心者の方はルールなどを恐れずに、「着物を楽しみたい!」という思いで着てみてください。その勇気の一歩が、きっと毎日に彩りを与えてくれるはず。今よりもっとお洒落のセンスも世界も広がります。一緒に着物ライフを楽しみましょう!!

サトさん&美也子さんが、
キモノの悩みにテンポ良く答えます!!

企画・構成/中野充浩(ワイルドフラワーズ)、取材・文/植田広美、撮影・編集/Gee(長久弦、小林淳一)