第12回
「アンティーク着物の着付け術」の巻

ますます人気が高まっているアンティーク着物ですが、「サイズが合わない」という悩みも多く聞かれます。そこで、第9回にもご登場いただいた『壱の蔵』の店主・弓岡勝美さんに、アンティーク着物をオトナらしく着こなすコツを教えていただきました。

『壱の蔵』オーナーの弓岡勝美さん(左)。
イラスト/さとうあゆみ

裄(袖丈)が短い場合の対処法

アンティーク着物は「袖丈が短い」という悩みが多くなりがち。

サト前回は、丈の短い着物の着こなしを教えていただいたのですが、今回は「裄(ゆき)」が短い場合の対処法を教えてください。

弓岡さんうんと短い場合は難しいけれど、ちょっとだけなら調整できますよ。

裄とは背中心から袖先まで。約68㎝が基本。

弓岡さん裄とは、背中心から袖先までの長さを指します。一般的には1尺8寸(約68㎝)と言われています。身頃と袖幅でベストな割合があるんです。

サトそれは知りませんでした!

弓岡さん腕が長い人の場合、身頃の方をちょっと短くして、袖幅を出して裄を補うと綺麗に見えるんですよ。反対に、身頃に不足分を足してしまうと、太く見えて不細工になってしまいます。

サト『壱の蔵』さんでも直していただけるんですか?

弓岡さんうちは仕立て担当が2人いるので、もちろん直せます。アンティーク着物で気に入った着物があって、裄を出せそうなら仕立て直しすればいいし、そのお金を出すのが嫌なら買わなければいいんですから(笑)。

サトそうですよね(笑)。

着方と所作で裄の短さをカバー

弓岡さん問題はお母さん、おばあちゃんから受け継いだ着物。「捨てるのはもったいない。でも仕立て直すにはお金が掛かるのかしら」と悩んでしまう。そこで、直さずに着方と所作で補う方法をお教えします。

サト よろしくお願いします!

両手を45度に広げた時、手首までくるのが基本の丈。

対処法① 胸元の空き方を変える

弓岡さんまずはこの2着の違いがわかりますか?

サトこれは胸元の空き方、半衿の出方が全然違いますね。

飾り衿(左)と白衿(右)では、見せられる幅が違うことを活用。

弓岡さん白衿の場合は、一般的にこのくらいしか出せない。しかし、色衿や飾り衿はこのくらい広く出せるんです。着物を重ねる位置を変えることで、袖丈を調整することができます。

サト手首のところまで届きますね!

半衿を出す幅を変えることで、袖丈を調整できます。

対処法② 着物の衿幅を広げる

弓岡さんまた、通常は半分ほどに折られている着物の衿を広めに出すことでも、袖丈は稼げます。

サトなるほど!

着物の衿を引き出して、幅を広げるのもコツ。

対処法③ 衣紋を少し多めに抜く

弓岡さん3つ目のコツは、衣紋を通常よりちょっと多めに抜くことです。

サトそうすることでまた袖丈が稼げるんですね。

衿を後ろに引き、衣紋を多めに抜くことでも袖丈は長くなります。

弓岡さんただ、「色衿や飾り衿の付け方が分からない」という人がいるんですよ。

サトそうなんです!
半衿を縫い付けるのは、確かに面倒なんですよ〜。糸が見えにくいし(笑)。

弓岡さん針がモテない人は、安全ピンで止めるだけでも大丈夫です。これなら簡単にできるので、半衿を付ける楽しみが増えますよね。

着物で隠れる部分に安全ピンで止めるだけ。いろいろな半衿を気軽に楽しめます。
後ろは、中心に1カ所留めるだけでOK。

帯の柄を好きな位置に出すコツ

ワンポイントの柄を、いつも同じ位置に出すのは意外と大変。

弓岡さん次は帯についての悩みなのですが「好きな柄が思うような位置に出ない!」と、毎回汗だくになって締めている方がいるんですね。そこで一発で決まる方法をご紹介します。

サトそうなんです。なかなか思うところに出ないんですよ。とくにワンポイント柄は、帯留に重ならないようにずらしたいです。

弓岡さんそれが簡単にできるコツがあるんです。それは、一度好みの位置に来るように帯を締めた時に、自分の身体の中心部分に印をつけるんです。帯のひと巻き目に見えないように、糸でもなんでもいいので、マークを付けておくんですね。

サトおお〜! 糸でもなんでも、自分が分かる印ならいいんですね!

身体の中心部分を意識して、帯の部分を確認します。
センターが決まったら、帯のひと巻き目の見えない部分に、糸を縫い付けるなどポイントしておきます。
センターがずれないように注意しながら、通常通りに帯を締めていきます。
この方法なら、簡単に毎回同じ位置に柄を出すことが可能に。

弓岡さん今回は安全ピンを目印にしますね。それを真ん中に置いて、通常通りに締めていきます。これで一発で好きな位置に柄を出せるわけです。汗もかかずに済むし、便利でしょ?

サトこれ、早速やります! 「太った」「痩せた」で印の位置が変わりそうですが(笑)。

弓岡さんそうそう、このマークがずれたら「体型が変わったんだわ」と、ダイエットの目安にもなります(笑)。これは長年着物を着て、苦労してきた経験者の方のご提案なので、これをまた次世代へ伝えたい。サトさん、どんどん広めてください!

サトはい!どんどん紹介していきたいと思います。

通販生活読者の皆さんへ

アンティーク着物は、ますます人気となる一方、サイズが合わないというお悩みもよく耳にします。

とくに、裄丈が短い場合は目立ちやすいため、せっかく気に入った着物があってもあきらめてしまいがち。そこで、裄丈を出すコツを弓岡さんに教えていただきました。

どれも簡単にできる方法なので、動画を参考にぜひ試してください。アンティーク着物をもっと気軽に楽しめるようになります!!

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弓岡さんに教えていただきました。

企画・構成/中野充浩(ワイルドフラワーズ)、取材・文/植田広美、撮影・編集/Gee(長久弦、小林淳一)