相談1

無意識に口走る変な言葉に困惑

 私はとっさのときや、無意識に口にする言葉がとても変なのです。トイレで大きな用を足して、あまりにすっきりしたのでお腹をなでつつ「ああ、食った、食った」とつぶやいてしまい、気味悪がられました。また、銭湯で入浴道具をひっくり返しそうになって思わず「オオット、マッタケ、オカアサン!」と叫んでしまい、周囲の失笑をかってしまいました。いつか大切な場でとんでもないことを口走ってしまうのではないか、と気が気ではありません。

(東京・無意識の恐怖っこ)

らもさんの回答

 あなたの場合、言っていることに一応すじが通っているので、そう被害があるとは思えません。「食った食った」というのは「出た出た」というのが下品なので、意識がセーブして、出る原因にまで反転したのでしょう。「オオット、マッタケ……」にしても単なる合いの手、気合です。初めて聞きましたが……。

 昔、知人に、感動したり、怒ったり、うれしかったりするとほおに手を当てて、
「なますてーっ!」
 と叫ぶ男がいました。電車の中でもどこでもことあるごとに「なますてーっ!」と叫ぶので、友人たちも怖がってあまり近づかないようにしていました。最近、調べものをしていてわかったのですが、この「ナマスティ」というのはインド、ネパールあたりのあいさつの言葉らしいですね。しかし、その人がなぜいつもこれを叫んでいたのかは、いまだによくわかりません。

 わけのわからない言葉を口走る、というのでもっと怖い例をあげますと、精神病理学の言葉で「異言」という現象があります。これはある日突然、どこの国のものかわからない言葉をしゃべり出す、という現象で、まだよく解明されていません。

 それにしても、高校野球の解説を聞いてますと、「ここはやはり打たんといかんですね。勝つ気でいってほしい」とか、どうしてあんな当たり前のことしかいわないのでしょうか。たまには「うーん、これはビビンチョカンチョだ。ゴンボ持って走るべきでしょう」とかその地方の人以外にはわけのわからないことを口走ってみてほしいと思います。

中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん

竹中さんより

ぼくは変な言葉が大好きだ。楢木という同じクラスのともだちが授業中いきなり「親の代からぁ~」と叫んだ事を思い出す。呟いたのではなく席から立ち上がって叫んだのだ。意味不明最高だ。全く無意味に「掻いて掻いて背中を掻いてぇ~」と言うのも好きな言葉で今もたまに言ってしまう。もちろん背中が痒いわけではない。
「ナマステ」と言う音の響きも大好き。今も良く使っている。らもさんと2人で悩み相談をやりたかったな…。