洋式便器しゃがみ体質どうすれば?
私は二十数年間、和式トイレを使ってきましたが、引っ越しと同時に洋式トイレに変わりました。しかし洋式座りスタイルでは用が足せず、便器の上に乗って和式しゃがみスタイルを取っておりました。ところが数年たつうちに、一般の和式便所では便意を催さず、「洋式便器の上に乗って和式しゃがみスタイル」をしないと用を足せなくなっていたのです。この間、新幹線のトイレでこのスタイルをとり、とてもこわい思いをいたしました。どうすればよいでしょうか。
(大阪・悩めるOL・29歳)
洋式便器が日本に紹介されてずいぶんになりますが、それへの適応能力にはかなり個人差があるようです。
一説によると、洋式便器が最初に日本で設置されたのは江戸時代後期で、場所は吉原のくるわの一軒だったといいます。これはおいらんの専用トイレだったのですが、このおいらんは洋式便器への適応が非常に早く、それ以外のトイレでは用が足せなくなりました。このおいらんを日本式トイレに案内すると決まって、「わしきはいやでありんす」と言ったそうです。
申し訳ありません。あまりの難問のためについ嘘で前半をかせいでしまいました。
排便のスタイルというのは世界各国でかなり様相を異にするようです。中でも一番変わっているのは、アフリカのある狩猟民族で、この部族は大きい方の用を足すときに、サバンナやブッシュの中を「走りながら」するということです。
これはおそらく、猛獣が今ほど減っていなくてウヨウヨしていた時代に、しゃがんで無防備な体勢になって用を足すというのが非常に危険であったためでしょう。
走りながら排便する、ということに比べれば、座ってするか、しゃがんでするかなどはたいした問題ではないように思われます。洋式便器の上に乗ってしゃがむというあなたのスタイルは、しいて名づければ「和魂洋才」型とでも言いましょうか。案外それが西洋文化と東洋文化を昇華させた、正しいスタイルなのかもしれません。
ただ、安定を崩して、落ちて頭を打つ心配があります。それで死んだら末代までの恥ですから、天井からつり革を下げて、それにつかまるようにしてはどうでしょうか。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん
らもさんが真摯に答えていると思ったら嘘だったのが好き。日本に洋式トイレが普及され始めた時、ぼくもどうしたら良いか分からず相談者と同じように便座の上に乗って大便をしていた。なんだかとても懐かしい…。大好きなブルース・リーの『ドラゴンへの道』(1975年日本公開)という映画でブルースが洋式トイレの上に乗って用を足すシーンがある。当時スクリーンで目撃した時どれほど感動した事か…「ぼくと同じだっ!」って…。