交通渋滞の先頭はどうなってるの?
交通渋滞の情報に接するたびに思うのですが、この渋滞の先頭部はどうなっているのでしょうか。先頭車両の速度が遅いので後に続く車がつまっているのではないでしょうか。そうならば、先頭車両が速度を上げたら渋滞は解消されるのではないでしょうか。こう考えると、先頭の前に車はなく、広い道だけがずっと見えていて、さぞ気持ちよいことでしょう。私も一度先頭を走ってみたいものです。
(新潟・大潟の大・16歳)
おっしゃることはあながち的はずれではないと思います。たいていの場合、渋滞をノロノロと進んでいくと、その渋滞の終結点に「原因」を見ることができます。それは「事故車」であったり「故障車」だったり「道路工事」、あるいは非常にゆっくり進む道路公団の「清掃車」だったりします。そういう「原因」が車線のひとつをふさいでいて、そこから渋滞が始まっています。
ところが、時にはこうした原因が見当たらない場合があります。何もないのにある地点から急に車がスイスイ流れ出す。と、それまでのあの渋滞はいったい何だったのか、納得のいかない気持ちになります。
これはおそらく「過去」において何らかのそういう原因があって、それが引き起こした滞りが、後々まで尾を引いているのだ、と考えるべきでしょう。
たとえば「動く歩道」がありますね。東京の人はあのベルトの上にじっと立ったまま運ばれますが、関西人はあの上を「歩き」ます。歩く速度が日本一速いのは大阪ですが、それでもわかるように関西人はせっかちなのです。関西人ばかりが動く歩道の上を歩いていけば、全体はスムーズに流れていきます。ここに一人江戸っ子が来て、ベルトの上で立ち止まると、そこでいわば流れに「栓」がされます。江戸っ子が立ち去ったあとでもこの余波は尾を引いて、歩道では乗る手前までは人の列ができ、乗った人は歩いて進む、という状態になるはずです。
道路でも同じことが起こっているのでしょう。僕は一度、高速道路で後ろから来た暴走族があんまり傍若無人な運転をするので、横を走っていたタクシーと暗黙の了解で、下図のように「袋」にしたことがあります。高速道路の終点までこの状態でゆっくり「護送」してあげたのです。案外こういうことで渋滞が起こっているのかもしれません。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん
渋滞学の提唱者である西成活裕さんに聞きました。自然渋滞がなぜ起きるのかといえば、車間距離が近いと、前の車が加速してからでないと後ろの車が加速できない。十分に車間距離があれば、前の車の加速と同時に加速できる。先頭がどうなっているのかといえば、「車間距離の短い車が多く連なっている」ということになります。事故も渋滞も防ぐ車間距離は大事ですね。