私は根っからのハミダシヤロウ
暗い悩みなのですが聞いてください。大学四年の女の子です。自分の性格を分析しているうちに、自分は根っからのハミダシヤロウだと気付きました。グループで何かをしていると統率を乱してやりたくなるのです。たとえば五人で雑談していて四人が「あの服かわいーっ!」と言うと私はつい「だれにも似合わなそう」と言ってしまい嫌われます。皆に反感を持っているのではなく、そこにあるものをぶっ壊してやりたくなるのです。どうすればいいでしょう。
(東京都・匿名希望・22歳)
アマノジャク、ヘソまがり、などいろんな表現がありますが、僕の分析ではあなたは「霊長類ヒト科・『座を暗くする人』目」に属しているようです。
この手の人は日常だれの身の回りにもいるもので、たとえばレストランでだれかが「わあっ、ここのお料理おいしいわねえ!?」と言うと、フォークとナイフをおいてジッと目を伏せ、「飢えている子どもたちに食べさせてあげたい」。これで座がまっ暗になってしまうわけです。
あるいは北風のピューピュー吹く日などに「わあっ、寒い。ねえ、寒いねえ!?」というと、ムッツリ黙り込んだあとポツンと吐きすてるように、「寒さってのは……こんなもんでねえ……」。
あるいは公園の池なんかで「あ、ボートだ。ね、乗ろうよ、乗ろうよ」「……。沈んだりして……」「え!?」「ドザエモンって醜いっていうよなあ……」。
僕が学生のころ、年末にモチつきのアルバイトをしたのですが、その仲間にもやはり「座を暗くする人」がいました。
アルバイト料をもらったみんながうれしくなって、まずは喫茶店にでも行こうよ、となったとき、A君という人一人だけが「おれ表で待ってる。みんな行ってこいよ」。
この「座を暗くする人」は約十人に一人くらいの割でいますが、これも集団のはしゃぎ過ぎにブレーキをかける重大な役割をになっているのです。ムリして明るくふるまうと気味悪がられますから、やめましょう。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん
私が思うに、らもさん自体ハミダシヤロウな人でした。バンドや劇団をやってはりましたが、それをまとめる気などさらさらなかったと思います。とにかく気ままに、やりたい事を楽しむ人でした。ある時、リリパットアーミーの芝居を見に行って、たまたま一番前の席に座っていると舞台のらもさんと目が合いました。するといきなり『べかこさん(私の前名)来てくれてましたか……』と話出して、ムチャクチャになりました。そんな人でした。