相談5

宝くじ買うだけで豹変するこの性格

 私はジャンボ宝くじを毎回買っていますが、宝くじを手にしたとたん、九千万円が当たったような気分になり、ついつい友人に大ばんぶるまいをしたり、「九千万円あるんだ、こんな会社やめてやる」と思って、いやな上司に対して大きな態度をとったりしてしまいます。夜は夜で九千万円を何に使おうかとあれこれ考えると、ワクワクして眠れなくなります。宝くじを買うたびに変わるこの性格は直らないでしょうか。今まで三百円しか当たったことはありません。

(広島・K・K・22歳)

らもさんの回答

「まったく同じ悩み」というのが、全然別の地方の人から同時に寄せられることがよくあります。これは人間の反応というのは似たり寄ったりで、ほんとうに特殊なことというのはそうめったにないという証拠でしょう。今週は特にそういう同じ悩みが多かったので紹介してみます。まず、この宝くじの件ですが、似たようなはがきが大阪の「夢見る乙女」さん(33歳)からもきています。この人は、ヨーロッパ旅行の当たるくじを買ったとたんに当たった気分になってしまい、会社に旅行実施日の「休暇届」を出してしまったそうです。当たったのは旅行ではなくて「ぬいぐるみ」でした。

 広島のO・Fさんからは、高校に通っている息子がいまだに「右と左の判断がつかない」ので困っているという悩みがきています。息子さんの弁によると、「上と下」というのは、顔を上げたら上で、下げたら下だからすぐわかるけれど、「右と左」というのは、 「根拠がない」のですぐ間違う、のだそうです。これと同じことが、大阪の「救国霊園」さん(25歳)からきています。この人はいまだに、「右―箸を持つほうの手」という風に考えないと左右の判断がつかないので困る、ということです。

 奈良の「桜モチむき子」さん(33歳)からは、コーヒー豆の缶の中の酸化防止剤に「食ベられません」と書いてあるが、それではまるでコーヒー豆は「食べられる」みたいではないか、という疑問。これに対して大阪の「高いお茶ほどおいしいよっ子」さん(18歳)からは、緑茶の匂いが好きで、今では一日何度もお茶っ葉をムシャムシャ食べる癖がついてしまった。両親に気味悪がられている、というはがきがきました。「世界中には自分と同じことを考えている人が三人いる」といいますが、どうも三人どころではなさそうです。お仲間がいると考えると気が楽になります。

中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん

桂さんより

 宝くじを買ったことはなかったけど、たまたま十枚買ったら、なんと一万円が当たり。嬉しくなってあちこちで言うてしまい、みんなに奢らされて三万以上使って大損しました。ある本に「宝くじに当たっても、人に言ってはいけない」と書いてありました。それから当たったことは一度もないのに、ちょっとニヤけた顔をしてると「宝くじ当たったやろ?」と言われてしまいます。らもさん、僕はどんな顔をして生きていけばいいのでしょうか?