月と飛行機の衝突心配する妻
夕方、雨戸をしめていた妻がとんできました。「今、飛行機が月のすぐそばを飛んでいったよ。危なくないかしら」「ばか、翼が月にひっかかったりするもんか。月はずっと遠くにあるんだから」。私が教えてやるとなおも言うのです。「あんなに近くを飛んでパイロットはまぶしくないかしら」。こんな妻を私はかわいいと思えばいいのでしょうか、かわいそうと思えばいいのでしょうか。
(秋田県・かぐや姫といっしょに住んでいる男)
これを読んでいてあの昔なつかしい小話を思い出してしまいました。
息子が屋根の上で物ほしザオをふりまわしているのを見たオヤジが、
「おい、何をしてる」
「お月さまを取ろうと思ってよ」
「バカヤロッ。そんなもので届くか。もっと長いサオ持ってこい」
親子そろって大ボケだと困りものですが、夫婦の場合、どちらか片っぽうに常識があれば、片翼飛行でも何とかなるんじゃないでしょうか。
最近では、時間に余裕のある主婦のほうがダンナよりは優勢なように思います。
しかし、僕の先輩の奥さんのような人もたまにいます。その人は町内有志で六甲山登りに行きまして、山の頂上についたとたんに、
「アッ!」
と叫んだのです。
彼女はその年まで、六甲山のすぐ裏は日本海だと信じていたのです。
これを読んで大笑いしている皆さんにぜひおすすめしたいゲームがあります。
白い紙を一枚用意します。そこにそらで世界地図をかくのです。
僕はいろんな人の書いたのをたくさん保管していますが、イギリスの横にイタリアがあったり、「ユーラシア共和国」なんてのがあったり、南米がまるごとなかったりでたいヘん楽しめます。常識って案外いいかげんなんです。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん
その心配はわかる。
私は子どもの頃、なぜ月が地球に落ちてこないのか不思議に思ったが誰にも尋ねなかった。雨戸か、雨戸は懐かしい。今の家にはそれがない。ガタピシの雨戸を閉めるのも子供の仕事だった。朝は父の靴を兄弟で磨いた。もう百年も前の話だ。
それにしても『益軒さん7月号』。ページをめくれば24頁にはナンシー関さんが、18頁にはらもさんが。何十年も昔なのか、それとも昨晩見た夢か。我々シティボーイズを関西で最初に面白いと笑ってくれたのは、らもさんとあと一人だけだった。ナンシーさんとは、日赤の裏にある中華で飯を食べた。ナンシーさんの鋭くて面白いコラムが怖かった。