“やっちゃん”風ドスきかす妻
がらの悪い妻に困っています。自分のことは「オレ」、私や息子のことは「オッサン」と呼びます。それだけならまだしも「待ったれ、待ったれ」「やめんかい」「バァタレ」。注意すると「おう?オレが女“やっちゃん”やいうの知らんな?」と、ドスをきかせて言います。先日も私の会社の後輩が遊びに来たときコーヒーをすすめ、遠慮する彼に「まあ、そうゆわんと飲めや」と言ってしまいました。何とかならないでしょうか。
(津山市・上品家庭にあこがれる夫・30歳)
あなたは、ものの値打ちを知らない人です。
昔から「ガラのわるいは七難かくす」といいまして、主婦としては最高の美質なのです。
これは逆の場合、つまり上品でいつもオホオホ笑っている奥様をもらったケースと比べてみると、如実にわかります。
知人の家などへおじゃましても、オホホ奥さんのしきっている家には、まず灰皿というものがありません。別に無理して吸おうとは思いませんが、ベランダにだけ灰皿が置いてあったりして、そこにおん出されて一服しているダンナの姿を想像すると気の毒です。
これがガラ悪奥さんの家へ行くと、カーペットの上に、ちょうどマイルドセブン一本分の焼け焦げがキッチリとついていたりします。
「いや、これはみごとな焼け焦げですねえ」
と感心していると、
「そう。わたしがつけてやったんや」
訪れている側としては、一挙にリラックスします。
オホホ奥さんは、子供の教育なんかに対しても、見ていて痛々しいほどのきびしさを示します。子供が勉強をしいられて、
「勉強なんてクソくらえだっ!」
「ま、クソくらえだなんて、何てガラの悪い口のきき方っ!」
「じゃ、何て言うのさ」
「ウンコ召しあがれ、とおっしゃいませ」
この欄への投書ではダンナのガラが悪いという悩みが多いのです。多少のガラ悪さをふっとばしてくれる奥さんのいる家は、気楽で最高です。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん
さすがらもさん、ものの値打ちのわかる方。ガラが悪いくらいの主婦のほうが居心地の良い家庭を築けますよね。我が家はふらりとやってくるお客が多いのですが、それはあたしが掃除を出来ないからだと思っています。ご飯後に風呂まで入っていく猛者もいる。チリ一つ落ちてない家なんて、ホテルみたいでくつろげないすよ。というか、あたしの体からチリが出るんじゃないかと(たとえば体毛が落ちるとか)心配になる。ガサツ主婦、万歳!