相談1

外出先のトイレでゆっくりするには

 私は胃腸が弱く、しょっちゅうおなかをこわします。外出先でトイレにかけ込むのですが、「外でだれかが待っていたらどうしよう。早く出なきゃ……」と思うとゆっくりできません。そこで考えついたのが『このトイレ只今ただいま故障中』の張り紙。いざというときにはそれをトイレのドアに張るのです。これならだれもドアの外で待たないからゆっくりできる。が、これには欠点があります。出るときに人に見られたら何と言い訳したらいいのでしょうか。

(相模原市・ミス先客・31歳)

らもさんの回答

 なかなか卑怯ひきょうな手を考えつきましたね。しかし、気持ちはおおいに分かります。あの駅トイレで空き順を待っているときの人間というのは、「脂汗状態」でありながら、意志の力だけで下腹部を締めて、ひたすら前の戸が開くのを待っているわけです。我慢のない人は「使用中」の赤いマークが出ているにもかかわらず、戸をドンドンたたいたりします。そういう状況で、たまに前の戸の奥からガサガサという、トイレットペーパーとは明らかにちがう紙音が聞こえたりする。僕は考えます。
「こいつは、ひょっとして中で“新聞”を読んでいるのではないだろうか。……許せん。自分さえよければ他人のことはどうなってもいいのか。そんな生き方しかできんのかっ」
ところが、戸が開いたときには、出てくるその男性が“救世主”に見えてしまいます。そうしてついに獲得した栄えある便座。さっきとは一転して、もうだれにもあけ渡したくない、そういう気持ちになりますね。

 ところで張り紙の文章なのですが、「故障中」というその嘘がどうも卑怯なのですね。僕もいろいろと考えてみました。「三分間待つのだぞ」とか「二番三番窓口へお回りください」とか。考えているうちに、これはもう最低のアイデアができてしまいました。それは、「予約席」というのです。

 いったいどこの何さまが予約なんかしてるんだ。JRのえらい人か。国会議員か。ドアに体当たりしないと気がすみませんね。……今度やってみよう。

中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん

神足裕司さんより

最近、自動運転車の実証実験場にお邪魔した。そこにモバイルトイレという移動式のトイレがあった。障害を持った人や高齢者がトイレを心配して外出を控えると聞きそれならトイレをいろいろなところに持っていけるようにしようとつくったとのこと。最新のバリアフリートイレで申し分なかった。何かご意見をと言われボクが話したのが「ドアの外にあと〇分かかります」と電光掲示板で表示して欲しいということと消臭機能を充実して欲しいという2点。らもさんと同じ意見。焦るのは嫌だもんね。