ジャングル大帝のレオは菜食主義?
手塚治虫の『ジャングル大帝』を、子供たちと毎週楽しみに見ています。私が子供のころには何とも思わなかったのですが、最近いつも悩みます。レオはいつも「ぼくは君たちを襲わない。この森では争いは許さない」と言います。しかし、ライオンである彼は、いったい何を食べているのでしょう。主人は、あのレオは木の実を食べると言います。肉食動物であるライオンでも、レオだけは特別に肉を食べないのでしょうか。でも……。
(大阪・レオを愛する雑食姉さん・30歳)
なかなかの難問をありがとうございます。僕はシートンでもムツゴロウ氏でもないので詳しいことはわかりませんが、たしかにライオンが草だの木の実だのを食べているところというのはあまり見ません。ネコなどはたまに草をかじって、
人間でもこれは同じで、昔のエスキモーは完璧な肉食生活でしたから、肉は必ず生で食べました。熱を加えると大事なビタミンが壊れるからです。植村直己さんが、イギリスのヘリコプターからローストビーフをプレゼントしてもらい、食べているうちに体調がひどく悪くなった、というエピソードは有名です。
してみると、レオがほんとうに肉を断っているのであれば、彼の腸は、長くてセルロース分解酵素を持った、突然変異型の腸だと考えられます。レオはもともとアルビノ(白子)ですから、色素のほかにも何か特別な遺伝変異を持っているのかもしれません。
あるいは彼は「何も食べない」と考えることもできます。先日、某サイエンス誌を見ていたら「気」だけを取って四百日断食を続けているという中国の少女が紹介されていました。にわかには信じがたいのですが、ひょっとするとレオも「カスミを食って」生きているのかもしれません。その証拠に『ジャングル大帝』全編を見ても、レオがうんこをしているシーンというのは、たしかなかったはずです。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん
らもさんの「何も食べない」という分析は流石だと思います。レオは一種の神みたいなものですからね。それで思い出したことがあります。「キンダーブックしぜん/どうぶつのつの」(08年1月号)という本を読んでいたら、つのがある動物はみんな草食だという一節がありました。そこではたと思いついたのは、つのがある鬼も草食だということです。ですからいくら「鬼は外」と豆を巻いても豆は植物性タンパク源で鬼は喜び逃げるわけないし、まして鬼に喰われる心配も一切ないということです。