放送禁止用語も時代につれて?
先日、テレビで昔のアニメの再放送を見ていると、セリフの音声が所々消えているので不思議に思っていました。どうやらそれは放送禁止用語を消したためらしいのですが、昔はそのセリフが放送されていたことを考えると、放送禁止用語の
(兵庫・放送禁止男)
「歌は世に連れ」と言いますが、放送禁止用語も時々刻々と変わっていきます。「ちびくろサンボ」が攻撃されたり、「トルコぶろ」という言葉が消滅したように、その時々の時代意識に沿って、各放送局は他局の動向などもにらみながら、フレキシブルに対応していくわけです。例の「ピーッ」という音に変えるかどうかの判断は、たいてい各局が持っている「過去のトラブル事例集」といった資料に基づくことが多いようです。
この資料にはたとえば、「昭和四十△年、○○局のアナウンサーが生放送中に、“支那そば”という言葉を使ったためにクレームを受け、謝罪文を書かされた。この場合、“支那”という、現在は存在しない国名を使ったためである」といったケーススタディが載っているわけです。
これらの禁止用語の中には、かなり理解に苦しむものもあります。僕はラジオで「
今のテレビ局は異常ともいえる言語規制を敷く片一方では、弱者をいたぶるだけの自称「ギャグ番組」を際限なく生産しています。僕ら書き手はこの「両方の愚劣さ」と闘わねばならないので、けっこう気疲れする商売です(あるいは、気疲れしているべきなのですが)。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん
放送の仕事をしている関係でこの手の話題はなにかとあります。ボクが深夜ラジオをしていた時に男女の性愛の時に性器から流れる粘液を、女性からのをバルトリン氏腺液を「愛液」、男性からのカウパー氏腺液を「我慢汁」、などと呼ぶのも外国の学者の名前に対して失礼であり、放送に適さないのではとの議論が巻き起こりました。結果、公募で、それぞれを「おメットさん」、「亀清水」と言い改めました。今でもお気に入りです。時代にそぐわぬ言葉も言い換えることによって残しておきたいものです。