TV欄で生放送の中身なぜわかる!?
前から気になって仕方なかったのですが、テレビ欄に「今夜生放送! 激怒するN氏、困惑し泣き出すMさん、その横で悪ノリN氏」などとタイトルがのっていたりします。まだ始まってもいない番組の中身を勝手に決めてしまってもよいのでしょうか。また、その通りにならないときには、いったいだれが視聴者に対して責任をとるのでしょうか。お答えくださいませ。
(四條畷市・気になりだしたらやめられない主婦・38歳)
実際にテレビ局へ行ってみるとわかりますが、局の中にはさまざまなセクションがあります。ニュースを扱う報道局、番組を作る制作局、CMを管理する広告局、営業局、etc、etc。その中で、あまり目立たないセクションですが、「予測調査室」というのがありまして、これはどの局でもたいてい地下二階、「資料室」の横あたりにあります。はいりますと、この部屋の中には各種の祭壇がしつらえられ、霊媒師、易者、霊感占師、超能力少年などが、それぞれのやり方で、今夜の生放送の中で起こることを予言しているわけです。この予言の結果によって、テレビ欄の内容が書かれることになります。
嘘です。実際そんなことをしている局は日本では、三、四局しかありません。
実際のところ、問題点は番組の内容うんぬんよりも「今夜生放送」という「生放送」の部分にあるのでしょう。実際には録画編集してあるくせに「生放送」と言うのなら、これは羊頭狗肉、一種の誇大広告だということになります。逃げ道としては、番組の核に「激怒するN氏、困惑し泣き出すMさん」の様子を収めたビデオがある。これをさかなに出演者が生でワイワイやる、という手があります。ほとんどはこの手口になっているはずです。
このほかにも、「限りなく生に近い録画番組」というのもあります。視聴者参加番組なのに放映が深夜であるために、参加者の便をはかって、夕方に録画します。これを当日の何時間か後に放映するわけで、「時間差生放送」だといえるかもしれません。
いずれにしても、「生」にどれほどのメリットがあるのか、僕にはあまりピンときません。
そば屋さんでも、既製の乾麵を使っていても「生蕎麦」の看板をかかげたりしています。厳密に言うのなら、テレビ局は「死放送」と明示すべきでしょう。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん
そうか、知らなかった。テレビ局には占いの部署があったのですね! どうりで芸もないと思ったタレントが売れたりするはずです。すべて占いの結果なんですね。ところで本当のところは単純な話で、生放送でも「台本」がちゃんとあるということです。タレントは台本通りに演じるので、番組の中身は決まった通りになります。だったら「生」でなくてもいいじゃないかというとその通り。でも国民の皆さんは「生」という言葉が好きなのです。