新聞で「らも逮捕」知ってびっくり
九月二十三日付朝日新聞一面（名古屋本社版）に、「清水建設副会長らも逮捕」と書いてあるのを見ました。あの中島らも氏は実は清水建設副会長で、裏で悪いことをしていると知り、とても驚きました。らもさん、罪を憎んで人を憎まずです。立派におつとめをはたした後は、心を入れかえて、また元気に私たちの前に姿を見せてください。
（名古屋市・M・R・高１）
ははは、高校生にどうこう言われる筋合いはない。君ら学生は何かというと、正義だの良識だのを振り回すけれど、世の中というものは、表と裏があって初めて成り立つものなんであって、われわれゼネコン業界の「常識」に私も従っただけの話で……。
……ちがう。ちがいます。ちがう証拠に僕は「生徒会の副会長」すらやった経験がない。マザコンの友人はいますが、ゼネコンに知り合いはいません。新聞を変にうがった読み方をするのはやめてください。迷惑する人が出てきます。
たとえば、最近「米朝会談」という言葉をたまに紙面で見ます。あれは何ですか、米朝師匠が国連の一室で、「えー、朝鮮民主主義人民共和国の核疑惑について一席おうかがい申し上げます。“トントン、いてはりまっか”“おう誰かと思たら国際原子力機関IAEAはんかいな。まあ、こっちおはいり”」なんてことをされてるわけでしょうか。
ちがいますね。大きなまちがいですね。
ただ、たしかに僕のペンネームを変えようかとも考えます。つまり、とんでもない駄作を書いてしまったようなときには自ら筆を折るわけです。ただ、筆を折っては食ってはいけませんから、次の月から「中島りも」なる新人が登場するのです。「るも」「れも」「ろも」と、いくらでも改名ができる。ただ、「中島れも」ではね。性をいつわってポルノ小説書くしかないですね。……ヘタなんだ、これがまた。
中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ（朝日文庫）より転載 イラスト／死後くん
「いしいくん、きみ、『らも』名乗らんか」「え、二代目ですか」「いや、俺も『らも』のままやねん。きみには『らも』ののれん貸すねん。この世にいっぱい増やすわけ。で、俺は、おおぜいの『らも』から上納金集めて暮らすわけ。なんも書かへんと。『らも』でいてるだけで大金持ちや。ええやろ、これ」といって、にやにや笑っていた。
いやあ、無理でしょらもさん。『らも』は空前絶後、この宇宙にたったひとり、中島らもしかいませんて。
嬉しいことに、切ないことに。