相談1

やたら外国語使う
両親にアングリー

 うちの両親は、やたらに外国語を使いたがります。たとえば「人生はユーの思ってるほどイージーなものじゃないのよ」「もう少しロジカルに考えてみなさい」等々。さらに、オナラをしたときにもわざわざ「イクスキューズ・ミー」と言う始末。夏の暑い夜などにこれをやられると何だかとても腹立たしくなります。オナラの場合はどう考えても「ごめん」、これしかないと思います。こんなボクはどこかストレンジ、いやおかしいのでしょうか。

(埼玉・失敗は成功のマザー・16歳)

らもさんの回答

 お父さんかお母さんの家系の中に「トニー谷」という人がいませんか?一度調べてみてください。

 日本人がやたらに英語を交ぜたがるのは昨日や今日に始まったことではなくて、おそらくは明治の頃から「トニー谷現象」はあったのだと思います。

 以前、高名な作家のエッセーを読んでいたら、冒頭の文章にいきなり、「その頃の私はdesperateしていたので」とあり、読むのをやめたことがあります。くやしいので「desperate」だけは辞書で調べたのですが「捨て鉢な」とか「やけくそな」といった意味でした。いったいここで英語を使うことにどういう意味があるのか、日本の作家の文章を読むのになんで英和辞書をかたわらに置かねばならないのか、と腹立たしくなりました。

 しかし、そんなことでいちいち怒っていたのでは昨今の雑誌などはとても読めたものではありません。雑誌だけでなく、音楽も聞けやしません。「♪こんな夜ふけは feel so sad とても待てない I miss you」とか、そんな歌詞ばっかりですから。人生幸朗じんせいこうろう師匠ではないが、責任者がいたら出てきてほしいものです。もし責任者が出てきたら、やっぱり、「イクスキューズ・ミー」と謝るのでしょうか。

 こういう英語かぶれの人々は「ややこし英語」でいじめてやるとよろしい。たとえば、「“ブリッジ”をください、お母さん」。これは「ハシをとってくれ」と言っているわけですね。もっとややこしくすると、「お母さん、“あなたは私を知っている”をください」。これは「ユー・ノー・ミー」つまり「湯呑み」をくれ、と言ってるわけです。ややこしくて、すこしは反省してくれますよ。

中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん

辛酸なめ子さんより

日本人には英語を混ぜたがる癖があるんですね。最近は「意識高い系の人」が、難解な英語を取り入れがち。先日もSDGsのセミナーに行ったら「シンギュラティユニバーシティのポジティブなインパクトが……」なんて話している人がいて、救いを求めたくなりました。回答で、英語かぶれの人々への対応策を教えていただきました。でも、この原稿を打ち込んでいたら急にキーボードがおかしくなって英語しか入力できない現象が数分ほど続き……日本語に戻って安堵し、日本語のありがたみを実感しました。