相談1

「三角食べ」できぬまま成長した私

 私は“三角食べ”ができません。三角食べとは食事のとき出された品を順番にまんべんなく食べるというものです(小学校の給食用語らしい)。私の場合、おかずならおかずに集中し、一品ずつ片付けながら食べ進むのです。友だちは昔、体によいからと三角食べをたたき込まれたようです。そういえば友だちのほうがたくましいうえ、ツラの皮まで厚いような……。それはさておき、この癖をなおして、いいかげん人から指摘されないようにしたいのですが……。

(八王子市・一途なワタシ・19歳)

らもさんの回答

 三角食べ。なつかしい言葉です。僕も小学校にはいって給食が始まった直後、担任のニシナ先生から教わりました。ニシナ先生は中年の女性教師でとてもやさしい人でした。初登校したその日に僕が面と向かって、「先生はブルドッグに似てる」と言ったのに、にこにこして笑っていた、それくらいやさしい先生でした。

 この先生が、「今から三角食べというのを教えます」というので僕は目を皿のようにして見ていました。「三角食べ」という響きが、なにか忍者の必殺技のようでかっこよかったからです。ニシナ先生はリズムをつけて、「パン食べてえ、おかず食べてえ、ミルク飲み。パン食べてえ、おかず食べてえ、ミルク飲み」と、必技三角食べを教えてくださいました。

 以降、僕は三角食べの鬼となりました。ところが、給食というのは、たまにとんでもない献立が出てくるものです。三角食べの鬼としては、多少つらいときもありました。「パン食べてえ、おかず食べてえ、ぜんざい飲み。パン食べてえ、おかず食べてえ、ぜんざい飲み」こういう日は口の中が拷問でした。

 しかし、三角食べをマスターして世の中に出てみると、好都合と不都合が同じくらいの割合であるのです。いわゆる定食ものなどに対しては三角食べが威力を発揮します。ところが、この定食が少し高級になってステーキランチみたいなものになってくると、スープだけが気取って先に出てきたりします。三角食べの鬼としてはやはりご飯、おかず、汁ものの三角同時存在は崩してほしくない。むなしい気持ちでスープをすすることになります。懐石の吸い物なども同じことです。だから、「一点攻め」のあなたはひょっとすると上流社会に向いているのかもしれない。むりになおすことはありません。

中島らも『明るい悩み相談室』シリーズ(朝日文庫)より転載 イラスト/死後くん

升さんより

私も幼い頃から三角食べを実践して(させられて?)いました。和食の場合、味噌汁→ご飯→おかず→味噌汁→ご飯→おかず…という様に。しかし我が家では更に変則ルールがありました。それは、ご飯のお代わりより先に味噌汁をお代わりしてはいけない! というもの。ご飯とおかずを頬張り、よく噛んで、少しの味噌汁で流し込む。ご飯のお代わりのタイミングで味噌汁もいかが? となるのです。我が家のこの決まり事はおかしいのでしょうか? あっ、らもさんへの相談になってしまった(汗)。