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第4回 前編 ブリッジフォースマイル

「児童養護施設の子どもたちの巣立ちには、
身を守る知識と独立に必要な生活必需品、
そして大人との絆が必要です」

菅原亜弥さん
認定NPO法人「ブリッジフォースマイル」事務局長(東京都千代田区)

08年より林恵子代表と活動をともにする。現在は事務局の仕事に加えて、横浜市主催の児童養護施設等アフターケア事業「よこはま・イツモ・プロジェクト」にも携わっている。

いま、日本の児童養護施設で何人の子どもが暮らしているかご存知でしょうか? およそ2万6000人――そのうち8割には親がいますが、18歳で施設を退所したあとも戻る家庭はありません。児童養護施設に入所したもっとも多い理由は、親からの虐待や育児放棄、経済困難だからです。
高校在学中からアルバイトでひとり暮らしのための資金を貯め、頼れる大人を持たないまま巣立たなければいけない高校3年生たちの自立を支援しているのが、認定NPO法人ブリッジフォースマイルです。 事務局長の菅原亜弥さんに巣立ちに必要な支援についてお話をうかがいました。
取材・文=丸山裕子(通販生活編集部)

最近の児童養護施設では、親の死別で入所する子どもは全体の1割ほどしかいません。残りの子どもたちは親の虐待や育児放棄、経済困窮や精神疾患などで養育が困難になり、入所しています。

幼いうちに親を失う悲しみはたいへん大きいものですが、大好きな親によって傷つけられたり、手を放された経験をもつ子どもたちもまた、複雑な悲しみを抱えて施設で育ちます。入所中は職員さんが親子関係の修復を取り持ちますが、うまくいかないまま施設を退所する18歳を迎えて、自力でひとり暮らしを始めなければならない子どもが多いのです。

2018年度からは厚労省による家賃貸付制度(児童養護施設退所者等に対する自立支援資金の貸付)もスタートしますが、ひとり暮らしに必要な家電や家具、鍋やお皿などの生活必需品を買うお金は、子どもたちが高校在学中からアルバイトをして自分の手で用意しなければいけません。

私たちが取り組んでいるのが、この児童養護施設の子どもたちの退所後に備えた自立支援です。中でも要となっているのが、設立(2004年)の翌年からつづけている「巣立ちプロジェクト」と名づけた高校3年生向けのひとり暮らし準備セミナーです。首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)9ヵ所の公民館やセミナールームをお借りし、毎年8月から1月まで月に1回、朝10時から4時半までのセミナーを6回にわたって開いて、子どもたちにひとり暮らしで必要な知識を学んでもらっています。

受講する子どもは毎年160~180名ほどです。ひとり暮らしの資金をアルバイトでためなければいけない子どもたちにとって時間は貴重ですので、1回の受講につき5000円分のポイントをつけて、セミナー終了後に生活必需品と交換できるようにしています。

高校3年生が集うワークショップ

1会場に20名ほどの高校3年生が集い、グループに分かれて
ワークショップ形式で学んでいく。

「ひとり暮らしなんて失敗しながら慣れていくものでしょ」とおっしゃる方もいるかもしれません。私自身も、最初に自立したときは手探りでしたが、頭の中で「母はたしかこうしていたな」と記憶をたどりながら料理や洗濯をしていました。彼らには、お手本となるその記憶がないのです。

とくに集団型の大きな施設の場合は、食堂へ行けば食事が出てきますし、洗濯物を出せば畳まれて戻ってきます。その過程の「どうやって家事をするか」を目にする機会が少ないのです。スーパーで食材を選んで献立を考える姿も見ていませんし、施設にはつねに職員さんがいますから、出かけるときに戸締りや火の元の確認をする習慣もありません。

これは私たちの「あるある」なのですが、退所したお子さんに企業からの寄付品を送ると、しょっちゅう配達期限切れで戻ってきてしまう。本人に連絡をすると、不在票の意味がわからなくて捨ててしまっているんですね。同じように、ご飯をジャーで何日も保温をするとカチカチになるとか、電気や水道はただでは使えないとか、ご近所の人に会ったらあいさつをするとか、家庭で育った人にとっての「当たり前でしょ」が、彼らにとっては「知らなかった」であることが多いのです。

模擬シュミレーション

引っ越し準備のセミナーでは、アパート探しから契約手続き、
当日まで模擬シュミレーションを組む。

知らぬ間に闇金に手を出して、自己破産してしまう
子どもも多い。

全6回のセミナーのうち、2回に分けて教えているのが、契約手続きや悪徳商法、金銭管理や税金などお金にまつわるトラブル対策です。

就職したばかりですとまだお給料も少ないですし、家庭でお母さんが家計をやりくりする姿を目にしてこなかった子どもが大半ですから、生活費が足りなくなることも多い。そんなときに「電話1本で即日50万円貸します」という広告を見て、利息の意味がわからないまま闇金に手を出し、返済不能になって自己破産してしまう子も少なくありません。

もう一つ、この巣立ちプロジェクトで目指しているのは、「巣立ち後」のつながりをつくることです。全6回のセミナーでは子どもたちの学びのパートナーとして、同じ人数の社会人ボランティアさんに参加していただいています。

たとえば、就職活動のプログラムでは、ボランティアさんに面接官役をお願いしたり、ご自身の体験談をお話しいただきます。セミナーの回数を重ねるとお互いに打ちとけてきて、ボランティアさんから仕事のグチやお金の失敗談なんかも出てくる。これが貴重なんです。子どもたちにとって身近な大人は学校の先生と施設の職員さんだけですから、さまざまな職業や年齢の方と関わりを持つことで、自分が社会へ出たときの心構えやモデルケースを持つことができるようになります。

ボランティアさんとの関わり

ボランティアさんとの出会いで目標とする大人の姿を見いだせるようになる子どもも多い。

このボランティアさんとの関わりが「巣立ち後」までつづくこともありますし、私たちの事務局にも「巣立ち後」の相談が持ち込まれることもあります。

先日は、職場を3日無断欠勤している子から連絡がありました。少しずつ事情を聞き出したら、職場の先輩に殴られて鼻の骨が折れたと言うんですね。治療費も払ってもらえないし、職場へもこわくて行けないと。

すぐに退所した施設の職員さんへ連絡をとって職場との間に入ってもらったところ、本人の希望で仕事は辞めることになりましたが、治療費はぶじに出してもらうことができました。

子どもたちとしては、たった6回のセミナーで会った大人を心から信頼はできていないでしょう。それでも、ほかに相談するあてがないから私たちへ連絡してくるのです。わずかな絆であってもつながりが持てていれば、人生のスタートでつまずく子どもを減らすことができると信じています。

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活動を応援したい方は、ぜひ下記へ
ご支援をお寄せください。

認定NPO法人「ブリッジフォースマイル」

東京都千代田区大手町2-6-2
株式会社パソナグループ内
電話03-6842-6766 (平日10:00~18:00)
https://www.b4s.jp/

郵便振替口座

記号:10050
番号:91305091
名義:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル

銀行口座

みずほ銀行
新宿中央支店
普通 2643602
特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル

支援金300万円の内訳

「巣立ちプロジェクト」
生活必需品・交換ポイント300万円

受講生には、セミナー参加1回につき5000円(全6回参加すると3万円)分のポイントと、皆勤賞でさらに5000円分のボーナスポイントが支給される。 このポイントをもとに受講生が自立に必要な生活必需品を選び、ブリッジフォースマイルから贈るしくみ。300万円はおよそ150人分のポイントとなる。

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