あなたはする?しない?離婚を決める時

イラスト/大沢純子

離婚・再婚・子育てなどの本を30冊以上著し、カウンセラーとして25年間で1,000人を超えるご相談に対応してきた、家庭問題カウンセラー・作家の新川てるえさん。自らの4度の結婚経験を踏まえて、夫婦問題における様々なテーマや情報について綴っていく連載コラム。

第2回

子連れ離婚を考えた時

子連れ離婚を考えている人が、世の中には意外と多い。
あなたも周りを見ていて何となく実感したことはありませんか。

「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」(厚生労働省)によると、全国のひとり親家庭数は母子世帯が119.5万世帯、父子世帯が14.9万世帯となっています。

ひとり親になった理由は、離婚によるものが母子世帯では約8 割(父子世帯では約7 割)を占め、未婚や死別に比べて圧倒的に多いです。「子どもがいるから離婚できない」と考えるのはもはやひと昔前の発想。最近は「子どものためにも離婚したほうが幸せになれる」という選択をする人が増えています。

この背景には、働くお母さんが増えて経済的に自立できるようになったこと。
人生を親としてだけではなく、自分軸で考えられるようになってきたことが影響しています。また、現在は結婚する4 組に1 組以上が再婚(厚生労働省「令和3年人口動態統計)であることが示すように、駄目なものは諦めて第2 の人生を前向きに進もうとする人が多いとも考えられます。

子連れ離婚の大切なポイント1「親権」

子連れ離婚をする際に真っ先に考えなくてはならないこと。それは子どもの
「親権」についてです。

親権とは未成年の子を一人前に養育するために、親に認められた権利であり、また義務でもあります。親権者は子どもの法律に関することを法定代理人として行うことになります。結婚している時には両親が親権者で共同親権になっていますが、離婚すると単独親権になります。親権者の取り決めがないと離婚は成立しません。

親権がスムースに決まる夫婦の一方で、子どもの親権争いが延々と長引くケースが稀にあります。物事はこちらの都合が良いように運んでくれませんので、それを踏まえて「親権」としっかり向き合う必要があります。

また、親の離婚に振り回される子どもは、はっきり言って離婚の被害者です。
だからこそ、子連れ離婚では子どものことを最優先に考えていかなくてはなりません。様々な状況や理由でそれができる人はなかなかいませんが、子どもの気持ちときちんと向き合う時間を少しでも作ってあげることが大切です。

私の場合、離婚に悩んでいる時は子どものことをちゃんと考えているつもりでしたが、思い返すと本当に向き合えていたかは疑問です。唯一私が子どもにできたことは、2度目の離婚の時に長女が小学校で苗字が変わるのが嫌だと言ったので、旧姓に戻らずに「新川」姓のままにしたことくらいでした。

子連れ離婚の大切なポイント2「養育費」と「面会交流」

離婚に伴う「養育費」や「面会交流」は、離婚家庭の子どもの権利です。離れて暮す親からも愛されている証として、守っていかなくてはならないこと。

ところが、現在の日本の養育費の支払い率は非常に低いのが現実。離婚した父親からの養育費の受給状況は28.1 %、離婚した母親からの養育費の受給状況は8.7 %と厳しい数字です。

2002年に「NPO法人ウインク」というシングルマザー支援の団体を立ち上げたのも、養育費の支払いを子どもの権利として守りたいと思ったからでした。

私自身は養育費を諦めてしまったことを後悔していました。長女の養育費は離婚から半年後には支払われなくなり、長男の養育費は離婚時に取り決めもしませんでした。しかし後に、養育費を守るのも親の義務だと思うようになりました。養育費は子どもの権利として、親は守る努力をしていかなくてはならなかったことに気が付きました。

「私には父親なんかいない」
きっかけは長女が思春期の頃にと否定的な発言をしたこと。
「離婚して一緒に暮らしてはいないけど、父親はいるし、ちゃんと愛されていると思うよ」と伝えたら、「証拠は!?」と言われたことです。

その時に思ったのが、養育費を諦めなければ離れていても愛されているという証になったのではないかと。私はそれから養育費の支払いの再調停を行いました。そして長女の父親は養育費の支払いをしてくれるようになりました。

2年後、15歳になった長女は父親との再会も果たしました。産まれてすぐに別れていて記憶がないはずなのに、待ち合わせした駅の改札口で遠くに立つ父親を見て「あの人だ」とすぐに分かったそうです。「親子だからさ、顔のパーツパーツが私たち似てるんだよね!」と彼女が言ったことが今でも忘れられません。

ちなみに長男の養育費は再調停で取り決めしたものの、一度も支払われることはありませんでした。父親はすでに亡くなっています。長男は父親の愛情を知らないまま成人しました。彼の死を知らされた時に、生きている間に会わせてあげたかったと強く思いました。

このように養育費も面会交流も、離れ離れになってしまった親子の絆をつなぐ大切な権利だと思います。だからそれを守ってあげるのも親の義務。

あなたなら離婚を子どもにどう伝えますか?

「離婚を子どもにどう伝えたらいいですか?」
 シングルマザーの方から多く寄せられる相談です。

こんな時は「嘘をつかずにありのまま伝えてください」とアドバイスします。ただし「必ず前向きに」と強く付け足します。なぜなら言葉は近しい人間に対して、感情が8 割・意味が2 割で伝わっていくから。「どう話すか?」よりも「どういう気持ちで話すか?」が大切なのです。

「離婚してごめんね」「パパがいなくて可哀そう」なんて気持ちが少しでもあるうちは、伝えない方がいいです。離婚があなた自身にとって前向きな選択で、これからもっと良くなるという自信をもって伝えることが大事です。

以前、こんなことがありました。娘が4 歳の時、保育園から帰ってきて言ったのです。
娘「ママー!〇〇ちゃんのママも離婚なんだって。ママと同じだね」
私「離婚って何のことか知ってるの!?」
娘「うん、だってママが『離婚したんだよ』って前に言ってたでしょ」

この時、まだ幼いのに離婚のことを理解できるんだということと、そのあっけら
かんとした受け止め方に感動しました。

「〇〇ちゃんのママ」は仲良しのシングルマザーでした。私も彼女もいつも元気で楽しそう。それもあってか娘には離婚に暗く悲しいイメージはまったくなく、むしろポジティブなイメージで受け止めていました。それは母親である私が離婚を前向きにとらえていたからです。

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