離婚・再婚・子育てなどの本を30冊以上著し、カウンセラーとして25年間で1,000人を超えるご相談に対応してきた、家庭問題カウンセラー・作家の新川てるえさん。自らの4度の結婚経験を踏まえて、夫婦問題における様々なテーマや情報について綴っていく連載コラム。
どうする!?
かみ合わない夫婦の会話
夫婦カウンセリングを長年していると、こんな愚痴を頻繁にお聞きします。
「夫はだんまりで夫婦の会話がありません」
「妻はいつも不機嫌で話しかけても無視されます」
「夫(妻)が一体何を考えているのかよく分からない」
酷くなると、「おはよう」「おやすみなさい」の日常の挨拶すらしないという夫婦もいます。これって熟年離婚予備軍ですよ!
2022年人口動態統計特殊報告の「離婚に関する統計」(厚生労働省)によると、同居20年以上の「熟年離婚」が過去最高の21.5% になりました。
あなたの夫婦関係は大丈夫ですか?
最近、会話がないなと思っていたら要注意です。
夫婦の会話がかみ合わない理由
夫婦の会話がかみ合わないのは、男女の好きな会話の違いにあります。
女性の好きな話題は、「子育て」「旅行」「グルメ」「買い物」「お買い得情報」「キャリアアップ」「ゴシップ(噂話)」。男性の好きな話題は、「仕事の話」「少ない趣味の話」「過去の自慢話」「子どもっぽい夢の話」「人生論」です。
これはカウンセリングの恩師である故・荒木次也先生が著書の中に書かれていて、とても共感しました。
私は女性なので、男性の会話に思うところがたくさんあります。例えば、私の夫は仕事が大好きで毎日のように仕事の話しかしません。もう少し他に話題はないのかなとも思います。
また、ゴルフ仲間の年上の男性が数人いるのですが、いつも決まったコースに差し掛かると、「昔はここでドライバーが300ヤード近く飛んで、あの山を越えたんだよね」と過去の栄光話を必ず聞かされます(笑)。
逆に女性たちの好きな話題に男性は興味がないのではないでしょうか? 私が外国人妻たちのコミュニティで情報交換していると、アフリカ人の夫は「またゴシップ話をしてるの?」とからかってきます。きっと理解ができないのでしょう。
仕事で疲れて帰ってきたら、妻が近所の人の噂話やスーパーのお買い物情報ばかり話してきて、「疲れる」と感じたことのある男性はいませんか?
恋愛中は相手を思いやる気持ちがあるので、相手に合わせて話を聞くことができます。でも、夫婦も年数を重ねると努力する意欲がなくなるので、相手の話がつまらないと感じて聞く耳を持たなくなっていきます。
妻にとって夫の話はつまらない。
夫にとって妻の話はつまらない。
もともと男女の会話の好き嫌いの違いもあり、こうして夫婦のコミュニケーションが薄くなっていくのです。
夫婦の会話を増やすには
それではどんな努力をすれば、夫婦は楽しく会話ができるようになるのでしょうか?
相談に来られるご夫婦は、「妻に何を話したらいいのか分からない」「夫には共感というものがまったくない」と口を揃えて言います。そんな時は「何を話すかよりも、どう聞くかが大切ですよ」とアドバイスします。
なぜなら、男性は「解決」を求め、女性は「共感」を求めて会話をする傾向があるからです。
例えば、妻が「ねえ、どっちの服が似合う?」と聞く時には、自分の中では答えはもう決まっています。その場合「君はどっちがいいの?」と聞いてあげてください。そして最後に「僕もそう思うよ」と答えるのが“共感”です。
しかし、夫は“解決”を求められていると思うので、無駄なことをあれこれ言ってしまい、妻からしたら「この人に聞かなきゃよかった」となってしまいます。
先日、私の体調が悪い時がありました。そこで「具合が悪い」と夫に伝えたら、「すぐに病院に行って」と言われました。そうじゃなくて「大丈夫?」「それは辛いよね」という“共感”が欲しかっただけなのです。
夫婦の「上質世界」を意識しよう!
面倒と思うかもしれませんが、夫は妻の話を「聞いて共感する」ことが、「何を話すか」よりも重要なことです。
逆に妻は話題の幅の少ない夫の話を、ないがしろにしないで聞く姿勢を見せてあげることが大切です。「そうは言っても相手の話がつまらないから耐えられない」という場合、「会話のきっかけ探し」を取り入れてみましょう。
会話のきっかけ探しは、お互いの上質世界を意識するとうまくいきます。この「上質世界」とは、選択理論心理学では「個性のアルバム」とも言われています。
1、共にいたいと思う人
2、最も所有したい・経験したいと思うモノ
3、行動の多くを支配している考え・信条
共通の上質世界があると、それを話題にすることで自然と盛り上がります。一方で、大切にしている写真を否定されると相手を嫌いになるし、「話なんかしなければ良かった」とさえ思ってしまいます。
子どもが小さい時に夫婦の話が盛り上がるのは、お互いの上質世界に「我が子」がいるからです。しかし、子どもが成長してアルバムの写真がなくなると、二人で盛り上がれる話題がなくなります。
会話を増やすためには、新しくそれを探すしかありません。夫(妻)の上質世界に何があるのかを理解し、それを尊重して話題にすると、相手は喜んで楽しく話をしてくれます。
できれば子ども以外の共通の趣味を持つことがオススメです。「ペットを飼い始めたら、会話が盛り上がるようになった」「一緒に楽しめる趣味や推し活を見つけてからは、笑って話せるようになった」など、成功事例はたくさんあります。
ちなみに私の夫の上質世界は8割が「仕事」だと思っているので、仕事の話は頻繁に質問するようにしています。