あなたはする?しない?離婚を決める時

イラスト/大沢純子

離婚・再婚・子育てなどの本を30冊以上著し、カウンセラーとして25年間で1,000人を超えるご相談に対応してきた、家庭問題カウンセラー・作家の新川てるえさん。自らの4度の結婚経験を踏まえて、夫婦問題における様々なテーマや情報について綴っていく連載コラム。

第6回

夫婦の性格の不一致
を克服するには

令和4年度の司法統計によると、婚姻関係事件(離婚調停)の申し立て理由のランキングは、男女別に次の通り。

男女ともに、最も多かった理由は「性格の不一致」でした。

性格の不一致とは?

性格の不一致とは、価値観や考え方の違いで夫婦が言い争うようになり、それが何度も繰り返されること。

でも「性格の一致」ってそもそもあるのでしょうか? 私はないと思います。確かに「価値観が近い」夫婦はいますが、それでも合わない部分はいくつかあって当然で、ましてや完全一致なんてあり得ません。

毎日顔を合わせて暮らしていると、お互いの生活観に戸惑うことが必ず出てきます。掃除の頻度、料理の味付け、洗濯物の干し方や畳み方など、これまで身につけてきた生活習慣や育った環境が違うからです。子どもが生まれると、子育てに対する考え方一つにしても意見が分かれます。

ところが、結婚をして一緒に生活する時間が積み重なっていくうちに、恋愛時代には感じなかった不満や性格の違いがどんどん表面化し、それらは次第に嫌悪感になって、やがて深刻な離婚へと話が進んでいくのです。

個性はどう作られるのか?

選択理論では、人は「5つの基本的欲求」を持ち、その欲求を満たすために行動していると定義づけています。

1.生存の欲求

飲食や睡眠、生殖などの身体的な欲求。主なものに安全・安定・健康の要素がある。

2.愛・所属の欲求

誰かと一緒にいたいといった満足な人間関係を求める欲求。主なものに愛・所属の要素がある。

3.力の欲求

認められたい、勝ちたいという欲求。主なものに貢献・承認・達成・競争という要素がある。

4.自由の欲求

自分のやりたいようにしたい、という欲求。主なものに解放・変化・自分らしさの要素がある。

5.楽しみの欲求

新たな知識を得たいという欲求。主なものにユーモア・好奇心・学習・成長・独創性の要素がある。

5つの基本的欲求は誰しもが持っていますが、その強弱のバランスが人によって違います。それが個性です。人間関係はこの個性の違いによって形成され、うまくコミュニティが機能することもあれば、時にはトラブルを引き起こしたりします。

あなたはどの基本的欲求が強いですか?  欲求の強いところが満たされていないと、人は特にストレスを感じます。

基本的欲求の違いでスレ違いは起きる

私の場合、「自由の欲求」と「楽しみの欲求」が強い個性を持っています。いつも自由に楽しいことをしていたいと思って行動しています。

一方で私の現在の夫は、「愛・所属の欲求」と「力の欲求」が強い個性。このタイプのパートナーは、いつも愛する人と一緒にいたいと思って束縛しがち。すると、私の「自由の欲求」が邪魔されます。

ちなみに私の前の夫は「生存の欲求」が強い人で、せっかくのお休みの日にはゴロゴロと寝てばかりいました。すると、楽しいことをしたいと思っている私の「楽しみの欲求」が邪魔されていました。当時はそこに気が付いていなかったので、性格の不一致が離婚理由となりました。

基本的欲求で作られる個性の違いによって、「相手は私のことを分かってくれていない」というストレスを生み出す。これが夫婦のスレ違いの原因です。

基本的欲求の違いを理解して歩み寄る

ポジティヴな話もしましょう。こうした個性の違いを理解すると、歩み寄りができるようになります。

例えば、私は夫の「愛所属の欲求」を理解しているので、結婚したばかりの頃は私が出かける時にはしっかりと前もって伝え、可能なら彼も誘って、私の友人に紹介することにしました。

今では私の友人の多くを知っているので、「〇〇さんと会ってくるね」と言えば嫉妬も束縛もありません。

また、彼は「力の欲求」が強いので、仕事などで頑張っていることを評価してあげたり、仕事の話を聞いてあげるだけで、夫婦の関係は随分と良くなります。

こうした基本的欲求で作られる個性の違いを理解してもらうために、私はカウンセリングでこんな質問をします。

「あなたが家族のために食事を作り、一緒に食卓を囲む時に、あなたはどの欲求が一番満たされると思いますか?」

単純に考えると、「食べる」という行為は「生存の欲求」です。しかし、家族と食べるので「愛所属の欲求」、食べることが楽しいので「楽しみの欲求」、家族のためにお料理するので「力の欲求」、自分が食べたいものを食べるので「自由の欲求」と答える人もいます。

ちなみに私は「力の欲求」です。だからお料理は家族のために作ります。「美味しい!」と言って食べてくれることに喜びを感じます。過去の結婚生活では、夫が無言で食事をする人だったので、いちいち「美味しい?」と聞かなければなりませんでした。そこに大きなストレスを感じていました。

このように夫婦であっても個性は全く違います。だから「人は性格の不一致があって当たり前」だということを最初から理解しておきましょう。

違っている部分を相手の個性ととらえ、上手に歩み寄りをする。これができれば、少なくとも「性格の不一致」による離婚は避けられるはずです。

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