あなたはする?しない?離婚を決める時

イラスト/大沢純子

離婚・再婚・子育てなどの本を30冊以上著し、カウンセラーとして25年間で1,000人を超えるご相談に対応してきた、家庭問題カウンセラー・作家の新川てるえさん。自らの4度の結婚経験を踏まえて、夫婦問題における様々なテーマや情報について綴っていく連載コラム。

第7回

夫婦がセックスレス
になる原因と対策

あなたはセックスを、どこか「卑猥なもの」「忌まわしいもの」「面倒くさい話」と誤解していませんか。

私が行っているカップル・カウンセリングでは、それはとても重要なことです。夫婦問題でご相談に見える方には、「セックスレスの関係になっていないか」と必ず確認をさせていただきます。

まずは「セックスレスの定義」を簡単に説明しておきましょう。

みんなどうしてるの?

日本性科学会が1994年に定義したところによると、「セックスレス」とは特別な事情がないにも関わらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上ないことを言います。

先日のカウンセリングで、「産後にしたくなくなり、今はセックスレスです」と相談を受けたので、「スキンシップもないの?」と訊いたら、「ハグしたりキスはします」とのこと。「それならセックスレスとは言わないですよ」とお伝えしました。セクシュアル・コンタクトもない場合がセックスレスに該当します。

性の大規模実態調査『【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2020』(日本家族計画協会家族計画研究センター実施)によると、男女ともセックスレス状態が6割を超えるとのことです。

年代別に見ると以下の通り。

若年化が進んでいることが分かりますね。女性に限ってみると40代で6割超、50代では8割弱と、もはや、している方がレアなのではないかと思いました。

セックスレスになる理由

カウンセリングをしながら感じるのは、浮気や中絶、行為の強要など、過去の夫婦間のトラブルが未解決の場合、セックスレスになりやすい傾向があります。

また、男女のセックス観の違いも原因の一つです。

夫側は「行為そのものが重要なのではなく、妻と仲良くできないことが問題」と言います。お話していると、セックスとは「性欲」や「子づくり」を満たすもので、「コミュニケーション」や「愛情」は二の次と思われているケースが少なくありません。

男性は「疲れている」「時間がない」「タイミングが合わない」ことを理由に、「性欲を満たすだけならマスターベーションの方が楽だ」というのが本音ではないでしょうか。その積み重ねが次第にセックスレスの関係となります。

一方、女性にとってのセックスは、「愛情と自己価値」や「コミュニケーション」を重要視します。つまり愛情の確認なので、夫婦にとっては必須行為。

カウンセリングでは、「女性として見てもらえていない」「私に魅力がないから?」と、セックスレスの関係によって自信をなくしている声も増えています。特に「自己価値」の部分で、妻として認められていないような気持ちになるのは、セックスに心理的な安心感を求める女性の特徴の表れです。

セックスレスになるのも心理的な要因が大きいので、女性がしない理由は多岐に渡っていて複雑です。「過去のトラウマ」「セックスに対する嫌悪感」「行為そのものが苦痛」といった意見も少なくありません。男性はED(勃起不全)の問題がこれに該当します。

また、誰もがオーガズムを経験できると思っていると、「オーガズム神話」を信じて、自分は不感症なのではないかと自信を無くし、それを相手に悟られないように演技をするようになります。そんな理由もセックスを苦痛なものにしていきます。そもそも性交の時にオーガズムを感じる女性は、全体の3分の1程度と言われています。

セックスレスの解決のために

お互いがセックスについて重要視していなくて、互いの認識にズレがない場合には構いません。でも、お話に耳を傾けているうちに「このままでいいとは思っていない」と答えるカップルが多いのです。これは夫婦関係が悪い理由の1つに「セックスレスの問題」が含まれている証。

男女のセックス観にはそれぞれの欲求や考え方に違いがあるので、まずはその違いを知るためにも「夫婦間で話題にすること」がとても大切です。

カウンセリングでは、お互いの価値観や認識の違いを話し合いできるようにトレーニングします。「なぜセックスレスになっているのか」という見解も含めて考えていきます。

どちらかというと、妻側がセックスを拒否しているケースのご相談が多いのですが、それは先に書いたように「性欲を満たしたい」男性と比べて、女性は「愛情と自己価値」を強く求めるので、行為する場所や状況に拘りがあります。

「小さな子どもがいて疲れているのに夫の理解がない」
「思春期の子どもがいるのに家でしようとする」
「実家に泊りに行った時に強要された」

妻からしたら、夫のデリカシーのないアプローチが問題なのですが、残念ながら夫は気付いていないのです。

耳が痛い話かもしれません。でも、問題解決のためには「会話のトレーニング」がポイントなので、夫婦が遠慮なく「自分の気持ちを伝えることができる関係」になっていくことが大切。夫婦関係が上手くいっているカップルは、会話でのコミュニケーションがとても良好です。

自力で進めていくのは大変という人には、カウンセラーなどプロの力を利用することをお奨めします。自力で何とかしたい人は、この連載のバックナンバーなどを読んでいただき、男女の会話の違いを理解したり、夫婦の会話を増やすためのヒントを得たり、自己トレーニングにトライしてみてくださいね。

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