あなたはする?しない?離婚を決める時

イラスト/大沢純子

離婚・再婚・子育てなどの本を30冊以上著し、カウンセラーとして25年間で1,000人を超えるご相談に対応してきた、家庭問題カウンセラー・作家の新川てるえさん。自らの4度の結婚経験を踏まえて、夫婦問題における様々なテーマや情報について綴っていく連載コラム。

第8回

上手な怒り方を身に着けて
「平和な家庭生活」を

「笑顔でいたいのに、イライラして不機嫌を家族にぶつけてしまう」

私のもとにカウンセリングに来る人たちは、よくそんなことを口にします。

あなたはこうした自分のイライラ(怒り)について考えたことはありますか?

あなたの「怒り」について考えてみよう

「怒り」にはいくつかの特徴があります。

・怒りは上から下に流れる

「今朝も子どもに怒鳴ってしまって自己嫌悪です」というように、怒りは親から子どもへと、力の強いところから弱いところに流れていきます。

・怒りは伝染する

「私がイライラしていると夫も不機嫌になり、喧嘩も増えて悪循環になるのは分かっているのにやめられません」というように、怒りは周りに伝染します。

・怒りは身近な人に対して強くなる

「そんなこと言わなくても分かるよね!」と、大抵自分のイメージ通りにならなくて怒りが強くなってしまいます。家族はコントロールできると思い込んでいるからです。

怒りのない人なんていません。怒りをなくすこともできません。なぜなら、怒りとは生き物の防衛感情だからです。

たまに「私はあまり怒ったことがない」と言われる方がいますが、怒りを我慢しているので、落ち込むことが多い人です。

あなたはどんなことにイライラしますか?

自分の怒りを意識するようになると、「怒りの傾向」が見えてきます。

私の場合は、時間を無駄にされた時にイラッときます。だから遅刻やドタキャンする人が苦手です。私の今の夫(アフリカ人)は時間にとてもルーズ。「今行く!」と言いながら1時間以上遅刻してきて、いつも私の逆鱗に触れています。

この怒りは何から生まれているのでしょうか? 夫でしょうか? 遅刻したということでしょうか?

答えはどちらでもありません。怒りを作っているのは、私が持っている「べき」だったのです。

「べき」とは、理想と現実のギャップ。「夫は約束時間を守るべき」という願望が、私の中にあるからです。

また、怒りは二次感情と言われています。その前にあたる一次感情とは、疲れ、不安、不満、心配などのストレスです。

私に心の余裕があれば、夫が遅刻をしても怒りには繋がりません。しかし、一次感情がコップの水のように溢れ出た時に、「べき」が発動して怒りに変わります。これが怒りのメカニズムです。

上手に怒るためのテクニック

1970年代にアメリカで提唱された、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングが「アンガーマネージメント」です。

怒らないためのトレーニングと勘違いしている人がとても多いのですが、先にお話したように、怒りはなくすことはできません。だから怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることには「上手に怒る」、怒る必要のないことには「怒らずに済ませる」ことを目指しています。

アンガーマネージメントで特に有名なのは「6秒ルール」。

これは「怒りを衝動でぶつけることはNG」であり、怒りたくなった時には 「ゆっくりと6秒数える」と、理性が戻ってくるという衝動のコントロールのこと。

しかし、実際にやってみると、イラッときたら瞬間湯沸かし器みたいになる人もいて、6秒数える前に爆発してしまいます。

そんな人は、意識的に「STOP!」と強く自分に言い聞かせて思考自体を止めてみてください。とにかく「衝動でぶつけてはいけない」と常に心掛けるのです。

私がよく使う手法は「コーピングマントラ」といって、効果的な呪文をつぶやくことがあります。

私にはオリジナルの呪文があります。「神になるテクニック」と呼んでいますが、イラッとしたら「私は神様だから許してあげよう」と呟いてスルーするやり方です。そして許してあげたら、神様になれた自分を褒めてあげることにしています。

自分の「べき」の境界線を意識する

次に考えてほしいのが、思考のコントロールです。

①許せるゾーン/②まあ許せるゾーン/③許せないゾーン

「まあ、許せる」の枠をどんどん広げていきましょう。

「遅刻すべきではない」

「遅刻する時には連絡をくれればOK」

「まあ、許せる」が広がる。

こんな風に考えて境界線を広げていけば、「絶対に許せない」枠は狭くなり、怒りは減ります。

自分の境界線の中では「20分くらいの遅刻なら待つけれど、それ以上なら待たない」と決めておき、それを相手に伝えることも大切。

「遅刻しないでちゃんと来てよ」では、「ちゃんと」が人によって違うからです。なので「私は遅刻が苦手なので、遅れる時には必ず事前に連絡してね。20分程度なら待つけど、それ以上は待てません」とはっきり伝え、共通の認識にしておきます。

怒りに対して、「自分の力で変えられるもの」「自分の力で変えられないもの」の振り分けもしておきましょう。

変えられないものとは、「天気が悪くて予定が中止になった」「電車が遅延して遅刻する」「電車の中にスマホで大声を出して喋っている人がいる」などです。

こうした「自分の力で変えられない怒り」は手放すか、別の選択肢を取る方法を考えること。そして「自分の力で変えられる怒り」についてのみ、行動を起こすことです。この振り分けを、行動のコントロールと言います。

アンガーログをつけてみよう

「衝動」「思考」「行動」といった怒りのコントロールをうまく実践するためには、「アンガーログ」がオススメです。

イラッとしたらその場で記録してみる。文章を考えているだけで6秒経つので効果絶大です。

その後、その怒りに点数をつけます。ちなみに私は5段階でつけています。「許せる」が0、「まあ、許せる」がレベルごとに1~4、「絶対に許せない」が5です。

次に「べき」ログもつけます。その怒りにはどんな「べき」があったのか? そしてその時にどう対応したのか?を記録します。その対応について本当にそれで良かったのか? もっとこうすると良かったのではないか?と、冷静に振り返って考えることにも役立ちます。

例)待ち合わせをしたら夫が連絡もなく遅刻してきた。
怒りの点数 4
べきログ 遅刻をするなら前もって連絡すべき
対応 イラっときたので不機嫌に「遅刻しないで!」と伝えた
振り返り 不機嫌をぶつけても効果的ではないので、遅刻されて私がどう困ったのかをアイメッセージで伝えれば良かったと思う。次回からはそうする。

潜在意識を作ろう!

近年ではアンガーマネージメントは、企業研修などでも多く導入されていて、書籍も豊富なので、一度くらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。

でも、研修を受けたとしても、身につく人は少ないと言われています。なぜなら潜在意識にしていないから。

あなたは「顕在意識」と「潜在意識」の違いをご存知ですか?

頭で考えないとできないことは「顕在意識」。

考えなくても自然にやっていることが「潜在意識」。

朝起きて顔を洗ったり歯を磨いたりするのが潜在意識。ダイエットをやろうと思って3日坊主になるのは、顕在意識のまま終わっているからです。

何かを成就させようと思ったら、地道な継続が必要です。私のカウンセリングでは「100日カウンセリング」といって、カウンセリングシートを使って思考習慣をプラスにするためのトレーニングを行います。潜在意識を身につけることが目的です。

アンガーマネージメントも同じで、意識して続けないから身につかない人が多いのです。顕在意識を潜在意識に変えるためには、継続100日が必要です。

さあ、あなたもノートを用意して今日から100日間、トレーニングしてみませんか?  上手に怒れるようになると負の連鎖がなくなって、ずっと思い描いていた「笑顔で楽しい毎日」を送れるはずです。

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