あなたはする?しない?離婚を決める時

イラスト/大沢純子

離婚・再婚・子育てなどの本を30冊以上著し、カウンセラーとして25年間で1,000人を超えるご相談に対応してきた、家庭問題カウンセラー・作家の新川てるえさん。自らの4度の結婚経験を踏まえて、夫婦問題における様々なテーマや情報について綴っていく連載コラム。

第10回

「国際結婚」から学ぶ、
夫婦間ストレスの乗り越え方

今回のテーマは「国際結婚」ですが、様々な夫婦のストレスを乗り越えていくためのヒントになると思います。「国際結婚は自分には関係ない」と思わずに、ぜひ最後まで読んでみてください。

私が4度結婚しているお話はこの連載の初回でもお伝えした通り。4度目が国際結婚で、ナイジェリア人と結婚して現在4年目です。過去にはステップファミリー(※1)も2回経験していますが、これまでの結婚の中で間違いなく一番難しいのが国際結婚だと思っています。

あなたは国際結婚についてどんなイメージをお持ちですか? 私が国際結婚をしていることを人に話すと、大抵「いいね」とか「凄いね」とか言われます。でも国際結婚の離婚率はとても高く、日本では「3組に1組が離婚する」(※2)と言われる中、国際結婚になると「2組に1組」以上です。

一方で、ここ10年くらいで国際結婚に対する捉え方が随分変わってきたのも事実。SNSの普及により、海外の人と気軽に繋がることができるようになったことも大きいです。また、LGBTなどについても社会が寛容になっているように、国際結婚についても「多様性」を認め合う傾向になっています。

※1 ステップファミリーとは、子連れ再婚をして再出発を目指す家族の総称。
※2 年間の離婚数を婚姻数で割ったもの。同じ年に結婚と離婚を行った数値ではありません。

夫婦間で話が通じない「言葉の壁」

国際結婚が難しいと言われるのは、いくつかの「壁」があるから。まず初めに痛感するのが「言葉の壁」です。

日本在住歴が長くて日本語が流暢に話せる外国人なら問題はありませんが、それでも日本語はニュアンスが掴みにくく、多くの人が苦労します。

国際結婚で会話をどうするのかは夫婦ごとに違うのかもしれませんが、我が家の場合の会話は英語です。しかし、お互いの母国語ではないので、伝えたい内容次第では会話が大変になります。夫は日本に在住し続ける意思があるので、独学で日本語を勉強してはいるものの、「ニホンゴ、ムズカシイ……」とカタコトの日本語でよく愚痴っています(笑)。

        

アメリカ合衆国国務省が公表した言語習得難易度ランクによると、日本語は最高難度のカテゴリー5にランクインしています。私たちは産まれた時から話している日本語ですが、確かに様々な言い回しがあり、方言もあり、さらに漢字・カタカナ・平仮名までちゃんと覚えようとしたら、とても難しい言語だと思います。

ところが言葉が通じないことで、メリットを感じることもあります。お互いが丁寧に伝える努力をするようになるからです。

例えば、イラッとしたとしても、どう伝えたらいいのかをまず考えるので、無意識にアンガーマネージメントが身に付きます。怒りを衝動でぶつけられないので、冷静に考えて伝える努力をするようになります。

日本人同士の夫婦だと、「言わなくても分かるだろ!」と喧嘩になります。また、ちゃんと伝えずに不機嫌になったまま無視をするなどして、ますます関係を悪化させている夫婦もいるのではないでしょうか?

そんな時は、あなたのパートナーも「言葉が通じない外国人」だと思って、自分の考えを伝えるためにはどうしたらいいのか、少し冷静に考えてみましょう。

同じ日本人同士でも「言わなくても分かるはず」は絶対にありません。自分が伝えたいことがあったら、相手に伝わるまでちゃんと話すことが大切です。私の場合、言葉で伝えた後に、再確認のためにメッセージで送ることもあります。

世界を邪魔しない「信仰の壁」

日本人はあまり宗教を重んじない人種だと言われています。実際、私も無宗教で我が家がどの宗教に属しているのかもよく分かっていません。国際結婚では相手が信仰している宗教によって、様々なしきたりがあり、それが壁になることがあります。

私の夫はキリスト教の信者で、日本に来たばかりの頃にはアフリカ人ばかりが集まる教会に毎週末通っていました。一緒に教会に行くと、「ジーザス」と言いながら祈りを捧げ、アフリカン・ミュージックでダンスを踊ったりして、私にはなかなか溶け込めない世界でした。

しかし、夫は“にわか信者”だったようで、今では教会にも行かず無宗教な生活を送っています。もちろん夫の友人の中には、熱心に教会で祈りを捧げているアフリカ人の方もたくさんいます。

イスラム教ではラマダンと呼ばれる断食の習慣があります。1年のうち決まった季節の約30日間、日が昇って降りるまで水も食べ物も一切口にしません。また、イスラム教徒は豚肉やアルコールを摂ることが禁止されています。厳格なムスリムは、過去に豚を調理した器具で調理された料理も食しません。

私の友人はトルコ人と結婚しています。夫の習慣に妻は無理に合わせなくてもいいとは言っていましたが、ラマダン期間などはやはり夫には相当気遣うようです。

ニューヨークに住む友人はユダヤ教で、彼が日本に来た時には食べられるものがかなり限られ、パートナーである日本人の彼女はとても苦労していました。ユダヤ教徒の食事には、食事内容・作法ともに戒律に基づく厳格なルールがあります。聖書には食べていい生き物・食べてはいけない生き物が明確に記載されています。

以前、その彼が日本に来た時に築地市場のお寿司屋さんにご一緒したのですが、海の生き物では「ヒレとウロコのあるものだけ」しか食べられないとのことで、注文にとても苦労したのを覚えています。

こういうことってたまになら楽しむことはできますが、毎日のことになると大変です。日本人の夫がたまに食事に文句を言うくらいは、まだマシだなと思いませんか?(笑)

「違いの壁」を乗り越える秘訣

国際結婚では宗教による違いのほかに、食生活や生活習慣の違いもあります。私のアフリカ人の夫は生ものを一切食べません。野菜はすべて火を通したものでないと危険だと思っています。日本人は卵や魚、時には肉を生で食べることがありますが、彼からしたら信じられない光景のようです。

食生活の文化に相違があると、一緒に食べられるものが限られるし、外食なども一緒に楽しめなくなります。

出会った頃には回転寿司にチャレンジしたり、生野菜や生たまごの美味しさをアピールしたり、納豆や豆腐がとても健康に良いことを伝えたりしましたが、夫は全く受け入れませんでした。今では、夫は自分が食べたいアフリカンシチューを冷凍庫に作り置きして、食事は別々にとっています(私はアフリカ料理が苦手です)。

私が夫と結婚してうんざりしたことは、時間や約束にルーズだったことです。「すぐ行く」と言いながら1時間以上経っても来ません。最近ではそう言われたら、「今どこ?」と必ず確認して到着までの時間を予測して、自分の時間を有効に使うことにしています。

日本人は誠実で、時間や約束を守る人が多いので、なおさら感じることだと思います。外国人は比較的おおらかで時間に縛られない人が多いのではないでしょうか。

こうした食生活や生活習慣の違いは、実は日本人同士の結婚でもよくあります。同じ日本で育ったというだけで、正解が1つであるような気がして、自分の習慣に合わせてほしいと相手をコントロールしたりするので、夫婦関係はギクシャクします。

「相手が外国人だったら違っていても仕方がない」と思考を変えるだけで、異なる食生活や生活習慣も受け止めて慣れていきます。

・夫婦が分かり合えるまでちゃんと言葉にして話をする。
・食事の好き嫌いがあってもいい。文句を言わずにお互いが食べたいものを食べればいい。
・相手が大切にしているものを否定しない。尊重はするけど、無理に合わせる必要もない。
・時間にルーズなど行動のペースが合わない場合には、自分がストレスを溜めない対策を考える。

相手は変えられない。変えられるのは自分の「思考」と「行動」です。あなたがそんな風に考えられるようになれば、相手が外国人だろうと日本人だろうと、長く同じ空気を吸って吐く関係が続けられる。これが国際結婚(4度目の結婚)から学んだ、離婚しない夫婦の秘訣です。

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