
イラスト/大沢純子
離婚・再婚・子育てなどの本を30冊以上著し、カウンセラーとして25年間で1,000人を超えるご相談に対応してきた、家庭問題カウンセラー・作家の新川てるえさん。自らの4度の結婚経験を踏まえて、夫婦問題における様々なテーマや情報について綴っていく連載コラム。

夫婦関係の不満に発展する
「子育ての悩み」

私が行っている家庭問題のカウンセリングの中には、「子育て」に関する相談も多く含まれます。
子育てには喜びもたくさんありますが、悩みはつきもの。それが夫婦関係の不満に発展して喧嘩になり、最終的に離婚になることもあります。
今回は「子育て」について、カウンセリングで多く寄せられる相談とその対策についてお伝えしていきます。
産後うつとワンオペ育児に関する悩み
「子育てに自信が持てない」
「我が子が可愛く思えない」
「夫が育児を手伝ってくれない」
「私ばかりが大変な思いをしている」
産後の不満を、泣きながら打ち明けてくれたお母さんがこれまでに何人もいました。
女性にとって妊娠・出産は、人生の大イベントです。妊娠中や出産後はホルモンのバランスも崩れやすく、うつ病が起こりやすい時期とも言われています。
うつ病になると、自分自身や自分の置かれている状況を、悪くとらえる傾向が強くなります。「私は母親失格だ」と、自分を責める気持ちが起こります。睡眠も十分にとれず、食欲まで落ち、元気がなくなってしまい、ますます動く気力を失くしていきます。
お母さん自身が苦しいだけでなく、お母さん本来の力が発揮できないので、実際に子育てが思うようにいかず、お子さんの発達にも悪影響が出てしまうこともありますし、夫婦の信頼関係が崩れていくきっかけにもなります。
産後うつの原因
産後うつの主な原因は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが、出産を境に急激に減少することや、出産後の授乳などで睡眠の確保が難しくなることをはじめとした身体への変化が挙げられます。加えて、周りの理解を得られないことから、孤独感が募っていくことも原因の一つして無視できません。
お母さんがこんな状態に陥っているのに、周囲は「妊娠・出産や子育てが大変なのは当たり前」と考え、お母さんの苦しみを軽視してしまいがち。すると、お母さん自身も「子育ての悩みを誰も分かってくれない」と決めつけ、相談をためらったまま適切な治療を受けていないケースが目立ちます。
そう考えると、私のもとにカウンセリングに来る人は、まだSOSを自分から発せる人なのだと思います。
ワンオペ育児とその対策
ひとりぼっちの子育てを「ワンオペ育児」と言います。ワンオペとは「ワン・オペレーション」の略で、夫婦の一方だけに育児や家事、仕事の負担がかかることです。
誰にも相談できない。夫が育児を一切手伝ってくれない。そういった状況が続くと、産後うつのような状態に陥りやすいです。
子育ては、夫婦が協力して取り組むのが望ましいですが、夫の仕事が忙しすぎるなど、どうしても妻の負担が大きくならざるを得ない場合もあります。
私のカウンセリングでは、次の3つの解決策を提案しています。
1.お母さん自身が上手に気分転換すること
「なかなか自分の時間なんて作れない」と言われますが、自分のご機嫌を取ることはとても大切なことなので、隙間時間を使ってできる気分転換を考えてもらいます。
・子供がお昼寝中にゆっくりとハーブティーを飲んでリラックスする
・起床時に布団の上で軽くストレッチする
・お部屋にアロマやお香を焚く など
2.家事や育児に完璧を求めずに手抜きする
「ま、いっか」「このくらいでいいよね」をセルフトークにして、上手に手抜きができるように考えてもらいます。
金銭的に余裕がある場合には、家事などはアウトソーシングすることもお勧めしています。私は過去に忙しい時期に、ハウスクリーニング業者や家政婦さんにお願いして上手に手抜きしていました。料理をお惣菜で済ませるなども手抜きになります。
3.相談する・周りを頼る
孤独にならないで、理解してくれそうな人を一人でもいいので持つこと。相談すること。周りに頼れる人を作り、任せられることはお願いしてみること。とにかく何でもかんでも「一人でやらなくてはならないと思わない」こと。ストレスを自分一人で抱えないこと。
子育てに関するイライラ
子どものイヤイヤ期は、すべてのことに対して反抗的です。
・いたずらばかりする
・朝起こしても起きない
・夜遅くまで起きている
・宿題をやらない
・ゲームばかりしている
書き連ねたら止まらないほど、お母さんたちのイライラの原因はたくさんあります。
このイライラを衝動でぶつけて怒鳴ったり、暴力的な言葉を使ったりして、あとで冷静になって考えて「後悔しています」という相談をよく受けます。
言葉近い人間に対し、「感情8割・意味2割」で伝わっていきます。だから怒鳴ったり暴力的にぶつけたりすると「なんだか分からないけど怒っていて怖い」しか伝わらず、本来思っているはずの「こうしてほしい」が全く理解されないままになり、次にまた同じことを繰り返す、という悪循環になります。
本当に伝えたいことは、冷静な感情で「こうしてほしいと思っているよ」と言わない限り、いつまでたっても相手に伝わらないままです。
そこで以前にもお伝えした「アンガーマネージメント」が効果的なので、カウンセリングではアンガーマネージメントのトレーニングを取り入れることもあります。
また選択理論では、「人間関係を悪くする致命的な7つの習慣」「人間関係を良くする7つの習慣」を図のように解説しています。
身につけたい7つの習慣
・ 耳を傾ける
・ 励ます
・ 尊敬する
・ 受け入れる
・ 違いを交渉する
・ 信頼する
・ 支援する
致命的な7つの習慣
・ 文句を言う
・ 脅す
・ 責める
・ 罰する
・ 批判する
・ 褒美で釣る
・ ガミガミ言う
これをプリントアウトして、いつも目につく場所に貼って心掛けることもお勧めしています。ちなみに私は自分のデスクの前に貼ってあります!
子育ての相談相手はまず家族
2014年度の全国児童家庭調査(厚生労働省の最新データ)によると、子育てに関する悩みの相談先は、「家族の者に相談する」が最も多くなっています。これを見ると、やはり夫には一番期待したいところです。
男性は「自分は外で家族のために忙しく働いている」のだから、「妻の仕事は家事や子育てをちゃんとすること」と思っている人もいるようです。でも、仕事に比べたら、家事や育児は終わりのない作業です。本当に辛いと思います。
私は仕事しながら、保育園に子供を預けて働いていた時期もありました。その時には「仕事の方が家事や育児よりも楽」と感じていました。保育園から子供を引き取って帰宅した後の時間が、本当に忙しくて大変でした。
理解するためにも、お父さんは休みの日だけでも、協力できるところはしてみることが大切です。
家事・育児をいくらお願いしても、まったく協力してくれない夫と一緒に生活をしていると、徐々にストレスがたまってきます。すると、一緒に暮らす意味やメリットを感じなくなり、離婚を選択する理由になります。
熟年離婚のご相談の折に、夫側が「子供が小さい時には家事や育児は妻に任せっきりだったので」と今更ながら反省している人がいますが、後になって反省しても「もう遅い」のです。
そんな事態にならないためにも、育児中は良き相談相手となり、できるだけ家事も育児も協力することが必須です。