はじめに
あなたは「ステップファミリー」をご存知ですか?
「初めて聞いた」「知らない」と答える人が多いかもしれません。
現在、日本全国のひとり親家庭数は、母子世帯が119.5万世帯、父子世帯が14.9万世帯(厚生労働省・令和3年度「全国ひとり親世帯等調査」)。21世紀になってからは、毎年ほぼ同水準で推移しています。
また、結婚する4 組に1 組以上が再婚であることが示すように(厚生労働省・令和3年度「人口動態統計」)、再出発を決意するシングルマザーやシングルファーザーが増加。選択肢として“子連れ再婚”が当たり前の時代になりました。
「ステップファミリー」とは、新しい環境へ踏み出すために“子連れ再婚”をした家族。もしくは親の新しいパートナーと過ごす子どものいる家族のこと(※)。
実親・継親・子ども、法律婚・事実婚それぞれの目線で表現は異なります。ステップ(STEP)には「継」の意味があります。
この連載は、多様性が叫ばれる日本の新しい家族文化「ステップファミリー」への認知や理解を深めるだけでなく、今まさに試行錯誤しながら奮闘している人、これから“子連れ再婚”を考えている人たちに、少しでも役立つ情報や事例をお届けします。
今回は民間団体「Stepfamily Association of Japan」(以下SAJ)代表の緒倉珠巳さんに、ステップファミリーの基本や可能性について教えていただきました。
あなたの家族観は古いままですか。
──ステップファミリーとは何でしょう? 一般的には“子連れ再婚家族”と思われがちです。
間違いではないのですが、少し説明不足です。なぜならその言葉だけでは、ステップファミリーを語るにあたって重要なことが抜けてしまっています。一番大切なのは「子どもの視点に立つこと」。“子連れ再婚”だと何だか大人側の勝手な都合のように聞こえませんか。
それに必ずしも法律婚をしているとは限りません。事実婚を選択するカップルも増えています。そこでSAJとしては子ども目線や多様な関係性を網羅する意味も込めて、ステップファミリー=「親の新しいパートナーと過ごす子どものいる家族」と定義しています。
──子どもの気持ちを置き去りにしないことが大切なんですね。ステップファミリーを育むにあたって、特に意識すべき点などはありますか?
旧態依然とした家族観・価値観に囚われないことです。日本の家族像には明治時代以降から近年に至るまで、「結婚→妊娠・出産→子育て」という初婚の核家族モデルが当たり前とされてきました。
ところがステップファミリーでは、実親子の中に継親が加わり、前置きなしに子育てが始まります。初婚の核家族モデルに縛られたままでいると、そうなれないことに焦り、現実的ではない関係性を求めてしまいます。
実親が離別した元パートナーと子どもの関係を完全に遮断したいと望んでしまうと、新しくパートナーとなった継親に対して「新しいお父さん・お母さん」になることを過度に期待する傾向がありますが、これは往々にして継親子関係をより難しくします。
親が恋に落ちた相手は、子どもにとってはただの「知らないオジさんやオバさん」に過ぎません。継親にしても「実の子と思って育てればいい。愛してくれればいい」と要望されたところで、それは到底無理なこと。ステップファミリーのスタートラインは、自由度の高い家族関係を意識することがベストです。
“ステファ”にもいろんな
カタチがある。
──ステップファミリーにはいくつかのパターンはありますか? それぞれ特有の課題や解決策も併せて教えてください。
分かりやすいパターンとしてここでは3つ挙げます。まずはシングルマザーとして子育てしてきた女性と、子どもを持ったことがない男性のカップル(またその逆)。それから双方とも子連れの場合。さらにステップファミリーになって新たに子を授かることもあります。
①再婚実親・初婚継親

【想定される課題】
継親が後から加わることによる継親・継子の存在価値の揺らぎ。いきなり親のように振る舞うことで、継親子関係に緊張感をもたらす。
【解決策】
ステップファミリーの一番シンプルな組み合わせです。実親がパートナーや子どもの不安・不満を汲み取り、その調整を担うことが重要です。
②子連れ同士

【想定される課題】
歴史や経験が異なる2つの家族の習慣がぶつかり合う。継子に対する評価が実親と継親では開きがある。実親が思うような可愛さ・良さを、継親は実感し難い。
【解決策】
同じ「ひとり親」という経験をし「同志」と思っていても、実親と継親ではまるでメガネを変えたかのように見えるものが違う。「自分と同じように思ってほしい」は難しい。ささやかでも温かな交流を積み重ね、そこで得るものを大切にし合えることが大切です。
③再婚実親・初婚継親・再婚後の子

【想定される課題】
初婚継親に実子が生まれると、思いの違いからそれまでの継子との関係性に変化が生じやすい。継子が「自分だけがこの家族のメンバーじゃない」と思うことがある。
【解決策】
実親子関係と継親子関係は、全く違う関係性と認識する必要があります。同じ質を期待するのではなく、継親子としての温かく無理のない関係を保ち、大切に思うことに変わりがないこと、寂しい思いをさせたくないこと、分かち合いたいことを継子に伝えましょう。
実際には以前のパートナーとは死別か離別か、継親が再婚であったり、別居の子の存在など、ステップファミリーの状況や背景は実に多様。