日本のステップファミリーの
これから
──ステップファミリーに対する考え方や許容の範囲は欧米諸国の方が進んでいると言われています。日本は遅れているのですか?
日本では離婚のうち9割弱が「協議離婚」であり、家庭裁判所のような第三者機関がチェックすることなく夫婦が合意さえすれば、役所に離婚届を出すことで容易に離婚できてしまいます。
離婚するとどちらかの親が親権を失う制度になっていて、やがて面会交流や養育費の支払いも先細る傾向があります。そこに旧態依然とした家族観が作用して、再婚すると元の初婚家族のようにやり直す義務感のようなものに取り憑かれてしまうのです。
これをSAJでは、初婚の核家族を再建するイメージから「代替モデル/スクラップ&ビルド型」と呼んでいます。未だ日本では多数派です。対して世界的な潮流として真逆の「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」が浸透しています。
──分かりやすく説明していただけますか。
「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」は、離婚によって別居している親も、実子に対しての養育の責任や協力を継続することが期待されます。
一方で、継親は別居親と入れ替わるのではなく、友達のような存在になって新たな役割を担います。家族は、複数の世帯にまたがる関係のネットワークとして存続・拡張していきます。子ども目線に立つと、適応しやすいのは代替モデルより継続モデルなのは明らかです。
◆日本に多い「代替モデル/スクラップ&ビルド型」
日本では離婚後、ひとり親世帯となったり、その親の実家で子どもの祖父母と同居するパターンが多い。
◆推進される「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」
家族・親族関係が切れるのではなく、増えていく点が特徴。境界線が緩やかなネットワーク型の家族と言えます。
──日本でもステップファミリーの新時代が到来するのも近いですね。胸を張って「めざすのはふつうの家族じゃない」って言える社会になってほしいです。
その通りです。ステップファミリーは決して劣った家族ではありません。「ふつうの初婚家族」ではありませんが、従来の固定観念や家族観に捉われずに「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」を形成していけば、独自の強みを発揮して家族全員にポジティヴな効果をもたらす可能性があります。それを変えるためには、単独親権から共同親権へのように離婚後の社会制度の改革も必要です。
次回より様々な角度からステップファミリーの悩みや実例をお伝えします。
〜あなたの理解度と多様性が分かる〜
ステップファミリー診断
YES or NO
一緒に暮せばすぐに家族になれる
これは誤りです。ステップファミリーは、異なる経験や習慣を持った大人と子どもが家族になること。過度な理想や期待は禁物。まずは相手の違いを受け入れること。相手と分かり合うことから始めなければなりません。この関係を築くのは、一緒に暮らすことや時間だけではないのです。
初婚の家族と同じような親子・家族関係を目指すべき
これはよくある失敗しがちなケースです。ステップファミリーは既存の親子関係があるところに、別の歴史を持った新しいパートナーとの関係が加わるなど、ゼロから自然に始まる初婚家庭とは根本的に構造が異なります。特に「こうしろ、ああしろ」的な威圧的な関係はうまく行きません。
子どもは継親を親として認めるはず
これも初婚家庭の価値観を持ち込んで失敗するケースです。ここでは大人目線より、幼い子ども目線に立つことが必要です。どんな別れ方をしていても「ママ」「パパ」はその子にとって一人だけであり、新しいパートナーは無理して親になろうとしなくていいのです。最初は下の名前やニックネームで呼び合うような友達関係から始めるのもベストです。
思い込みがステップファミリーとしての成長の幅を狭めてしまう可能性があります。小さく窮屈な家族観に縛られず、家族の中の多様な関係性に合わせて柔軟に物事を捉えるようになれれば、何よりも心が楽になります。
企画・構成/中野充浩(ワイルドフラワーズ)、取材/中村竜也、イラストレーター/いなばゆみ、撮影/武政欽哉