「継親」のリアル
続いては、ステップファミリーとして新たな道を歩み始めた継親からのよくある相談を、緒倉さんのアドバイスと共に紹介します。
よくある相談①
「ちゃんと育てたい」が
空回りして辛い

- 「この子を立派に育てなきゃ」と一生懸命やっているのに、パートナーから感謝されない。「報われない」と感じることが多い。
- 継子からは「本当の親じゃないくせに」と反発されることもあり、実親からも苦々しい表情を向けられ、家庭内での居心地が悪くなることがある。
継親のあなたへ
あなたが「ちゃんと育てなきゃ」と思うその気持ち、とても分かります。継母の場合、継父以上に子育てに関して大きな期待を背負うことが多いです。
継子から見れば、「昨日まで他人」「家族かどうかも不明な存在」なのが現実。継親子関係はステップファミリーの中で一番“浅い関係”です。一歩引いて物事を見てください。
批判や否定ばかりの大人との間には、感謝どころか、安心や信頼関係を築くことも到底できません。ネガティヴな指摘をする前に、実親であるパートナーと「気になっていること」「それについて一緒に考えてほしい」と話し合ってみましょう。
そして“親”としてではない、「継親」としての効果的な関わり方を模索してみましょう。
実親のあなたへ
ステップファミリーへの理解を大前提として、実親子関係と継親子関係の質を同じようにとらえないことが重要です。
継親の「良かれと思って」するしつけは、その人の家庭内での役割や意義の模索が背景になっている場合も多くあります。ステップファミリーのアウトサイダーだからこそ、「早く役に立って、家族や仲間として実感したい」という心情を理解してあげましょう。
実親であるあなたの役割は、その気持ちを受け止めつつ、パートナーが疎外感を持たないように思いやりを持って接することです。
継親子にとって現実的な関わり方を提案したり、必要な情報の提供、双方をほどほどの距離感に調整することも大切です。
よくある相談②
「パパ」「ママ」?
どう呼ぶのが良いの!?

ステップファミリーとなった時に、継子が継親をどう呼ぶかを話し合うことはとても大切です。
なぜなら、継子にとっては継親を、「お父さん(お母さん)」「パパ(ママ)」と呼ぶことに抵抗を感じることも少なくないからです。
無理強いはもちろん論外。一方で、継親がその家庭でどんな役割を果たし、どんな関係性になるのかも、呼び方に影響してきます。
(例)
A | 実父を「〇〇パパ」、継父を「○○チチ」と呼び分ける |
---|---|
B | 実父を「お父さん」、継父を「○○くん(ニックネーム)」と呼び分ける |
C | 名前すら呼ばず、「ねえ」や「あの」と呼び掛ける |
多くは家族会議で検討したり、Cのように継子の主体性を大事にするという考え方もあります。もしくは、当事者同士が納得した呼び方を決定できれば十分です。
ここでお伝えしておきたいのは、呼び方がある程度、役割を規定してしまうということです。
例に挙げたAは、継親をある程度“親”のような役割であると示しています。
「○○チチ」と呼び続けて時間を重ねた場合、父親以外の役割や意義の選択肢は狭小になる可能性が生じます。
Bのニックネームの場合は、それ以上でも以下でもない関係とも言えます。
ですが、継親の役割として「何が必要で何が不要なのか」話し合うことが、より円滑な関係を築くコツです。
「第3の親」とも言える、継親の役割や意義を否定するわけではありません。しかし、お互いに「何がどう違って」「どうして欲しいか」を話し合うことは、ステップファミリーの関係作りの基本であり、継親の役割を形作っていく過程にも深くつながっています。
何かを始める前に当事者同士で話し合うことは、ステップファミリーに限らず、とても大切なコミュニケーションなのです。
〜ステップファミリー
関連書の紹介〜

『ステップファミリーのきほんをまなぶ〜離婚・再婚と子どもたち』
(SAJ編・野沢慎司 編、緒倉珠巳、野沢慎司、菊地真理 著/金剛出版)
実親・継親・子どもといったそれぞれの視点から様々なテーマを扱う。クイズや漫画を交えながら、ステップファミリーについて分かりやすく説明。また、日本のステップファミリーが置かれている社会状況や研究成果も概観できる。
『ステップファミリーの子どもとしての私の物語〜親の離婚・再婚でできた「ギクシャク家族」が「ふんわり家族」になるまで』
(きむらひとみ 著/金剛出版)
親の離婚・再婚について、ステップファミリーの子どもである著者自身の経験を率直に語る一冊。「うちはどうしてうまくいかないんだろう」という、どんな家族にも浮かんでくる可能性のあるこの疑問に、子どもの立場から答えを探り、解決のための道筋を考える。
企画・構成/中野充浩(ワイルドフラワーズ)、取材/中村竜也、撮影/武政欽哉