「ステップファミリー」とは、新しい環境へ踏み出すために“子連れ再婚”をした家族。もしくは親の新しいパートナーと過ごす子どものいる家族のこと。
第1回では、ステップファミリーには様々なカタチがあり、古い家族観や価値観に囚われずに、自由度の高い家族関係を築くことの大切さをお伝えしました。
そして第2回では「継親」の立場から、役割や直面する問題、解決策と向き合いました。
一見すると「普通の家族」と思われがちなステップファミリーですが、試行錯誤しながら信頼を深めている段階の人もいれば、実際に家族とはなったものの、なかなか良い関係を築けずに悩んでいる人もいます。
今回フォーカスするのは「実親(じっしん/じつおや)」。引き続き、民間団体「Stepfamily Association of Japan」(以下SAJ)代表の緒倉珠巳さんに、分かりやすくナビゲートしてもらいました。
「実親」って何ですか?
──ステップファミリーにおける「実親」について教えてください。
ステップファミリーの実親は、自身の子どもと継親となったパートナーとを繋ぐ重要なキーパーソンです。
子どもを連れての再婚や事実婚をした場合、外から加わることになる新パートナー(アウトサイダー)が継親となるのに対し、すでにある小グループ(インサイダー)を子どもが生まれた時から一緒に築いているのが「実親」という存在です。
──実親がスタートラインで意識すべき点はありますか?
実親子は以前のパートナーと離別後、自分たちだけの濃密な時間を過ごしながら、一定の習慣やルールを作り上げて共有しています。
ステップファミリーになって同じ空間で暮らし始めた際、新しいパートナーに自分たちの決まりごとを「当然こうあるべき」と押し付けてしまうと、思わぬ壁となって“1対複数”の力関係を作りかねません。
共感・協力してくれる習慣やルールは活かしつつ、そうでないことは話し合って、子どもの理解も得ながら1から決め直すことも、結果的にはファミリー全員にとってのプラス材料となります。
──これはやってはいけない、ということはありますか?
自分の子どもと新しいパートナーの関係に対して、最初から実親子のような愛情を求めてしまうことです。継親子と実親子、それぞれの関係は似て非なるものだからです。
愛情は強制することはできません。
再出発したことを機に、世間一般の「ふつうの家族」という枠組みに収まることで安心感を得たい。あるいは自身の喪失感を埋めたいといった気持ちもあるのかもしれません。でも、それは実親自身の不安を転嫁しているだけ。
継親は決して「新しいお父さん」「新しいお母さん」ではありません。失くした過去の代わりでもありません。継親と子の関係には、先ずは愛情よりも他者としての尊重や礼節を求めるだけで充分です。
──子どもの躾を継親に任せっ放しにすることもNGですか?
はい、もちろんです。それは継親子間において信頼関係を築く前に、いきなり距離感を詰めてくるということですから、必ず失敗を招きます。子ども目線に立つと誰でも想像できるはず。ある日突然、知らない人から厳しく言われたら不快でしかありません。ストレスを与えて追い詰めてしまいます。
最初は「ありがとう」「ごめんね」だけでもいいんです。毎日挨拶をして何気ない日常を積み重ねることで、他人同士をいつしか馴染みの関係へと変化させていきます。一緒にいて心地良い間柄になり、共通の経験を持つことで、親しみや愛情に近い感覚を築くこともあります。躾も本来はそういう環境で行うのがベストです。
「実親」の役割って何ですか?
──実親は、子ども・パートナーと気を配る方向が複数ありますね。
それは子どもでも継親でも同じことです。ただ、実親の場合、途中から子育てに参加することになったパートナーの戸惑いや、子どもが抱く複雑な思いを考慮する必要があります。それぞれが持つニーズや困りごとを丁寧に汲み取り、マネジメントしていくのが、実親の大きな役割です。
ステップファミリーを築く過程で、「どうもうまくいかない」と感じる時は、双方への情報の伝え方や具体性に欠けていることが原因だったりします。家庭の門番のように、子どもとパートナーとの関わりを交通整理することも重要。忍耐強く数年かけて継親子関係をプロデュースしていきましょう。
──実親がキーパーソンとなって目配りや気配りをし、継親がサポートする体制が、ステップファミリーを上手に育むコツですね。
そうですね。とはいえ、無理して全員揃って頻繁に外食や外出するような“家族感の演出”だけは避けたいところです。それよりも個別に1対1で関係を深めることが、ステップファミリーの関係づくりには有効です。
特にステップファミリーとなって最初の頃は、リビングのソファでパートナーと楽しく話しているだけで、実は子どもは寂しさを感じていることがあります。自分が「蚊帳の外」に置かれているように感じてしまうんです。
こんな様子を察知したら、パートナーに丁寧に説明し、協力や理解を求めましょう。大人である二人の関係を深めるのは、子どもの目の前でする必要はないですから。
そして子どもが寂しそうにしていたら声を掛け、実親子だけの特別な時間を設けて家族内のバランスを取りましょう。中高生なら近況報告会、幼い子には絵本の読み聞かせでも構いません。
実親は家庭の調整役として、子どもやパートナーの気持ちを否定せず、耳を傾けること。もし分からなくなったり、自信が持てなくなったら、支援団体や当事者グループで相談したり、書籍やネットからも情報を得るようにしてほしいです。
実親へのヒント
継親子の関係に、愛することではなく、礼儀正しさを求めよう。
目減りしやすい実親子、パートナーとの時間を意識して作ろう。
礼儀正しさを言葉に変えよう。「ありがとう」「ごめんね」から。
子どもと継親の関係における距離に気を配り、仲介する。
子どもの忠誠心の葛藤を理解する。その葛藤について子どもと話そう。
親の再婚時に抱きやすい疎外感など、子どもの感情と向き合う。
子どもの躾の責任者であり続け、ルールの重要性を強く説く。
離婚・離別したもう一方の実親のことを批判・否定しない。