「実親」のリアル
続いては、ステップファミリーとして新たな道を歩み始めた実親からのよくある相談を、緒倉さんのアドバイスと共に紹介します。
よくある相談
子育てについて
実親と継親が
対立してしまう
- 継親から「どうしてこの子はこれくらいのことができないの」と、できないことばかり並べ立てられ、実親はこれまでの躾や子育てを否定されたように感じる。
- 子どもに向ける眼差しの温かさ、大切に思う気持ちに差異があり、いつの間にか互いに傷ついている。
実親のあなたへ
大切な我が子。「自分と同じくらい大切にしてほしい」と願うことは自然なことだと思います。ただ、大切にする方法や表現は、必ずしもあなたと同じではありません。子どもが生まれた瞬間からその成長を育み、見守ってきたその深い思い入れは、あなただからこそ。
それと同じように、パートナーも実親子と出会い、そこからの関わり一つ一つに思いを重ねている途中です。「この子は意外に繊細だな」「自分には強気だけど甘えたさもあるな」と、継親なりの理解を深めようとしています。
理解しようとする過程で、パートナーは「自分はこうだった」「普通はこうでしょ」と、やや無理のある理屈を用いて問題意識を持つことがあります。こうした時、継親の意見が実親の子育てにケチをつける形となってしまいます。
失礼に感じる物言いに、悲しい気持ちになるのは無理もありません。しかし、子育てをめぐる対立は、ステップファミリーでは頻繁にあることです。継親なりの気づき、意見の意図に関心を持ち、互いにどのようなことを目標にしたら良いのかを、よく話し合うことが解決への一歩となります。
話し合うには、子どもの成長にかかる情報の提示、パートナーが理解しやすいように具体的に伝える工夫も必要です。そのためには日頃からコミュニケーションスキルの上達にも意識して取り組みましょう。
継親のあなたへ
継親だからといって「子育てに手を抜いてはいけない」という気持ちがないでしょうか。いつしかそれが気負いとなり、厳しい眼差しに変わっていることが多いのが継親の立場です。そのことに自分自身で気づき、少しショックを受けたこともあるのではないでしょうか。
あなたが指摘していることは、間違いではないかもしれません。でも正しいかどうかよりも、「パートナーや継子を否定する表現になっていないかどうか」、そのことの方がステップファミリー育成への影響が大きいと知っておきましょう。
実親でもあるパートナーは、あなたに温かで穏やかな理解を求めています。そして夫婦関係を維持するには安心と信頼が土台に必要です。ですが、正しさや厳しい眼差しは、安心とは真逆に向きやすいものです。
あなたの気づきが重要なことであればこそ、実親がちゃんとその意図を理解できるような伝達をすること。「何でできないの? 当たり前のことなのに」といった表現は悪い方向にしか進みません。「○○するためにどうしたらいいか、一緒に考えようよ」といった、パートナーと共にあるような伝え方をしましょう。
〜ステップファミリー
関連書の紹介〜

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(監修:野沢慎司・菊地真理/発行:SAJ)
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企画・構成/中野充浩(ワイルドフラワーズ)、取材/中村竜也、撮影/武政欽哉