「ステップファミリー」とは、新しい環境へ踏み出すために“子連れ再婚”をした家族。もしくは親の新しいパートナーと過ごす子どものいる家族のこと。
第1回では、ステップファミリーには様々なカタチがあり、古い家族観や価値観に囚われずに、自由度の高い家族関係を築くことの大切さをお伝えしました。
そして第2回と第3回では「継親」「実親」それぞれの立場から、役割や直面する問題、解決策と向き合いました。
一見すると「普通の家族」と思われがちなステップファミリーですが、試行錯誤しながら信頼を深めている段階の人もいれば、実際に家族とはなったものの、なかなか良い関係を築けずに悩んでいる人もいます。
今回フォーカスするのは「子ども」。実はステップファミリーを育むにあたって最も大切なのは、「子ども」の目線で考えてみることです。引き続き、民間団体「Stepfamily Association of Japan」(以下SAJ)代表の緒倉珠巳さんにナビゲートしてもらいました。
大切なのは「子ども」の目線に立つこと。
──今回はステップファミリーにおける「子ども」がテーマです。
夫婦の一方である実親は、生まれた時(あるいは妊娠中から)から自分の子どもの成長の歴史を知っています。でも新しいパートナーとなった継親はほとんど知りません。一歩外へ出ると、継子の親であるかのように振る舞うこと期待されます。
家族となった当初は、夫婦は子育てを巡って時に意見をぶつけながら、懸命に向き合います。ですが時間が経つにつれ、自分たち夫婦関係の問題に直面して精一杯になったり、共働きの生活で多忙になるあまり会話する機会すら減少。子どもたちがどんな経験をし、何を感じているか、関心を向ける余裕すら無くしてしまいます。
──そのような状況に陥った場合、どう改善すればいいですか? 大切なポイントがあれば教えてください。
子どもの声にじっくりと耳を傾ける機会を設けること。これに尽きます。
ちなみにステップファミリーの子どもたちには、3つの共通した要素があります。
Loss(喪失感)
Loyalty(親に対する忠誠心)
Lack of Control(死別・離別・再婚など、自分でコントロールできない状況によって不安定になること)
このような状態にあるステップファミリーの子どもにとって、基本的なニーズは「自分の居場所があると感じられること」です。「自分が家族の一員で、ここが自分の家なんだ」と実感できる。その気持ちを持てているか、再確認することが大切です。
親自身が大きな変化の中で余裕を失っている時期は、子どもの気持ちを分かっているつもりでも、実際は微妙にすれ違っていることがあります。子どもが「もういいよ、十分だよ」と言うくらいに、子どもの気持ちについて訊ねてみてください。
独自の家族のカタチを大切にしたい。
──ステップファミリーの子どもたちは、具体的にどんなことで悩んだりしているのでしょうか?
親の離婚・再婚を経験した子どもは、親に気を遣い、自分の希望をなかなか言い出せないことがあります。例えば、新しい環境に馴染めず、以前の学校に戻りたいと思っているけど話せない。別居親と会いたいのに、親が面会交流に消極的な姿勢を見せているので言えないなどは、よくあるケースです。
ステップファミリーの子どもが考える「家族」は、私たち大人が考える家族の範囲と異なることも珍しくありません。例えば、離れて暮らしている親の家庭に生まれた子どもを大切な弟や妹とみなしていたり、別居や死別した親側の祖父母を大事な家族とみなしていたりする場合だってあります。
子どもに愛情を感じる人が一人でも多く関わる環境づくりを妨げる理由はありません。自分の家族観と異なっていたとしても、子どもの家族観を否定せず、尊重することを心掛けてください。
──子どもは成長していきます。中高生くらいになった時のポイントは?
いわゆる思春期や青年期にあたる12〜19歳の子どもたちがストレスを感じやすい出来事には、次のようなものがあります。
実親同士の口論やお互いの悪口を聞くこと
実親が自分よりも継子を優先すること
もう一方の実親に会えないこと(状況による)
自分の部屋を他の子どもと一緒に使わなければならないこと
実親と継親のケンカ
自分はこの家族に必要ない子どもだと感じること
2人の実親の板挟みになっていると感じること
元の家族に戻りたいと思うこと。それが叶わないことだと我慢すること
継親に指図されて、しつけを受け入れること
継親が決めた新しいルールに適応すること
問題があるとすべて自分のせいだと避難されること
新しい家族がうまくやっていけるかどうかは、自分にかかっていると感じること
──子どもがストレスを感じないように、親は自らの行動を定期的に振り返ることが大事ですね。
はい、その通りです。ステップファミリーが進むべき道は、普通の家族を目指さずに、大人である親が努力を重ねて、子どもにとって大切な関係を維持できるようにすること。その結果として創られた独自の家族のカタチを大切にすべきだと思います。