なぜ、あなたはその夢をみるのか?

イラスト/ひらのんさ

臨床心理士の松田英子先生が『通販生活』読者がみた夢を分析します。今回とりあげるのは、現在50代の読者が子どもの頃にみていた、バタバタともがきながら天井あたりまで飛ぶ夢です。その背景には「現実と格闘する自分の心」があるようでした。

1万人の夢を分析した

松田英子先生

小学生のときにみた家の中を飛ぶ夢。

空中で必死に手を動かし、
なんとか天井まで飛ぶ。

今回は、現在50代の『通販生活』読者が
10歳の頃に何度もみたという夢を分析します。

私はこんな夢をみた

家の中を手をバタバタして飛んでいた。そのうち頭が天井についてしまう。「もっと上に、もっと上に」という気持ちがあるのに、これより上には行けない。もっと上に行きたいと思いながら、ずっと手をバタバタさせていた。

(ラぺさん・パート・50代)

夢の中ではとにかく、
「もっと上にいきたい」と思っていたそうです。

何かを目指して懸命に頑張る姿が
連想されるような夢ですね。

同時に、どんなにバタバタしても
天井より上に行けないというところから、
自分を上から抑える何かの存在も感じます。

夢の背景には、
期待に応えられない苦しさがある?

この方の性格や人となりを知るため、
TIPI-Jに回答していただきました。

その結果からみえてきたのは、
勤勉性と協調性が高い、
やや内向的な人となりです。

この夢をみていた小学生の頃も
おとなしい性格で、
授業中などに手を上げて発言するのにも
とても勇気がいったそうです。
また当時は習い事に一生懸命通っていて、
そろばんとピアノの級をとることや、
発表会の練習などを
頑張っていたとのことです。

こうした情報を踏まえると、
夢に出てくる天井は、
習い事や学校の勉強などで
大人から求められる水準や期待値、
そして自分への評価のようなものと考えられます。

頭が天井についても
「もっと上に、もっと上に」と
バタバタし続ける夢は、
精一杯やっても期待に応えられないことへの
焦りや辛さによってつくられたのかもしれません。

あるいは、本当はもっとできるけれど、
求められる水準を
はみ出してはいけないという気持ちが枷となって、
思うように行動できない
息苦しさがあった可能性もあります。

子ども時代は悪夢をみやすい。

この夢をみた理由を
ご本人に分析していただいたところ、
次の回答がありました。

私が考える、夢をみた理由

とてもおとなしい子どもでしたので、いつも自分の思っていることを言えませんでした。もっと感情をだしたいという思いがあったのかなと思います。

自分の本心をうまく表現できないことや、
「こうありたい」と思う理想の自分に
近づけないことへの苦しみが、
この夢をみた理由であるようです。

ネガティブな感情を伴うこの夢は、
悪夢に分類できます。
それも子ども時代にみた悪夢であることも、
今回の分析のポイントの一つです。

一般に、子どもは大人よりも
圧倒的に多くの悪夢をみているといわれます。

子どもは、
大人からみればほんの些細な出来事にも
大きな恐怖やストレスを感じています。
人生経験が乏しいために見通しを持てず、
課題の対処方法をあまり知らないからです。
そのために、悪夢の引き金となるような
恐怖やストレス、悩み事をたくさん抱え込みやすく、
悪夢もみやすいのです。

悪夢も成長の証となりうる。

この方の場合は、
この夢をみる引き金となった悩みを
すでに克服しているのでしょう。

どことなく、
実際、子どもの頃から現在までの
性格の変化について伺ったところ、
以下の回答がありました。

子どもの頃と現在で変わったところ

高校で部活をやるようになって、いろんなことを学びました。また、社会人になってからの様々な経験や、子どもの学校のPTAとしての活動を通じても、変わってきたように思います。根は人付き合いは苦手なままですが、子どもの頃から比べると、年齢を重ねただけのことはあるかなと思っています。

この方は、
思っていることをうまく言えずに
悩んでいた小学生の頃の自分と
「天井よりもっと上に行こうともがく夢」
との関連を、ご自身で認識できています。
そのうえで、
様々な経験を通して悩みを少しずつ克服し、
現在は「年齢を重ねただけのことはあるかな」と、
自分を認められるまでに成長しています。

この夢は悪夢ではありますが、
その引き金となった悩みを克服した現在は、
自分の成長を振り返る
「記憶のアルバム」のように胸に抱えて、
時にその内容をみつめなおしている。
ある意味で、
悪夢を成長の証として大事にしているのです。
とても素晴らしいことですね。

悪夢には治療が必要なものもある。

撮影/大倉琢夫

知っておいてほしいのは、
悪夢の内容を無理に思い出したり、
人に話したりする必要は決してないということです。

一般に、
痛みや苦しみなどの負の感情を伴う夢は
悪夢とされます。
中でも、あまりにも強い負の感情のために
飛び起きてしまうほどの悪夢は、
心療療内科などでの治療が必要な場合もあるほど、
慎重な対応が求められるのです。

飛び起きるほどの悪夢ではないけれど、
何度も同じ悪夢を見続けるという場合、
イメージ・リスクリプト(イメージの中での夢の筋書きの書き換え)をやってみることを
おすすめします。

これは、自分の理想通りの夢の結末を
イメージするというものです。
夢が引き起こすネガティブな感情を
和らげる効果が期待できます。

例えばこうした筋書きはいかがでしょうか?
私には、この方が天井を持ち上げて
立ち泳ぎしているイメージがわきました。
あるいは、少し大人になったこの方が、
天井の上から小学生の頃のご自分を励ましている
シーンなどを勝手に想像してしまいます。

夢には懸命に生きる自分の姿が
映し出される。

悪夢は100%ネガティブなものかというと、
そうとも言い切れません。

夢は、
自分の記憶や感情などを材料にしてつくられ、
自分のためだけに上映される
オリジナル映画のようなものです。
時にその内容には、
思い通りにならない現実と格闘する自分の姿が
色濃く反映されます。
そうした夢は、
自分が懸命に生きている証でもあるわけです。

ですから悪夢であっても、
自分の頑張りを知るきっかけや、
心配事や悩みの原因を特定する
ヒントとなりえます。

悪夢も現実世界をより良く生きる手助けとして
役立てられるよう、
自分なりのうまい付き合い方を
模索してみてくださいね。

※次回は「51歳の漫画家がみた低空飛行する夢」を分析します。(11月6日公開)

(11月6日公開)

※読者の夢には、表記の変更や分析に関係のない部分の省略などの編集を加えています。

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