
臨床心理士の松田英子先生が『通販生活』読者がみた夢を分析します。今回は複数の「飛ぶ夢」を分析。飛ぶ夢は多くの人がよくみる夢ですが、人によって飛び方や飛ぶ高さは一様ではなく、その背景にある心身の状況も実に多様です。

1万人の夢を分析した
松田英子先生51歳の漫画家がみた
母校のグラウンドを飛ぶ夢。
小学校のグラウンドで低空飛行する。
最初に紹介するのは、
地上30センチほどを飛ぶ夢です。
私はこんな夢をみた
夢の中の私は多分高校生くらい。場所は、今は廃校になった母校の小学校のグラウンド。曇っている昼間。時代は昭和の終わりごろで、私は長いスカートを履いている(動くと足に感触がある)。周囲にいるのは見知らぬ在校生だが、なぜか友人のような気がする。私は空を飛ぶ練習をしているが、地上30センチくらいをずっと飛んでいる。一瞬高く飛べるが、すぐにもとに戻ってしまう。高校生のときから、月に一回くらいこの夢をみる。
(猫田猫吉さん・漫画家・51歳)

「曇っている昼間」「昭和の終わりごろ」
「長いスカートを履いている」など、
夢の世界の情景をとてもよく観察していますね。
さすがは漫画家さんという印象です。
夢に表れているのは、
一定水準を死守しようとする頑張り。
この夢の一つのポイントは、
「一瞬高く飛べるところ」かなと思いました。
自分の力を発揮しようと、
一生懸命頑張る姿が表れている夢のようにも
感じます。
地上30センチの高さは、
「これより下には下がらない」
「地にはつかない」と、
ご自身が守ろうとしている
何らかの水準なのかもしれません。
一瞬高く飛べるときに
上昇のチャンスがくるけれど、
思うような結果を出せずにもどかしさを感じる。
詳しくお話を聞いてみなければ分かりませんが、
そうした気持ちが
この夢の引き金になった可能性もあります。
苦しさを感じられる夢ですが、
それでもこの方は、
ご自身の思う一定水準を保っています。
その頑張りに拍手を送りたいなと思いました。
故郷の山を飛び跳ねながら移動する夢。
次に紹介するのは、
故郷の山を見下ろしながら飛ぶ夢です。
私はこんな夢をみた
故郷、高知県の山を見下ろしながら空を飛ぶ。鳥のように飛んだり、山から山へジャンプしたりして飛び跳ねて移動する夢。風を切る皮膚感覚がある。30代から現在まで、年に2~3回ほどみている。
(みゆきさん・清掃業・68歳)

鳥のように飛んだり、
山から山へジャンプしたりと、
躍動感があって楽しそうな夢です。
この方は現在、
故郷の高知県を離れて暮していて、
なかなか帰省できないそうです。
そうした状況で故郷の山の上空を飛ぶ夢を
何度もみるところから、
自分の土台をしっかりと
認識している方ではないかという印象を持ちました。
夢の内容から、
自分の芯をしっかり持ったお人柄が想像されます。
地上2メートルを平泳ぎで移動する。
飛ぶ夢の飛び方には、
実に様々なバリエーションがあります。
割とポピュラーなのは、
鳥のように飛んだり、
空中をジャンプして移動したりする夢です。
複数の投稿があった「飛び方」の一つに、
空中を平泳ぎで移動する夢があります。
例えば、次のような夢です。
私はこんな夢をみた
静寂で薄曇りの明け方。地面から2メートルぐらいの高さで、空気の中を泳いでいる夢をよく見ます。それは夢の中の自分にとって、特別な事ではなくとても自然な感覚。歩いて移動する代わりに泳いで移動する。あまりに普通なので、夢から覚めても泳げるのではないかといつも思ってしまいます。人との交流はなし。ただただやや曇り空の明け方の住宅街をスイスイと言うかふわふわというか…。
(お白湯さんさん・ボイストレーナー・63歳)
運動感覚に富んだ夢の内容や、
音の少ない時間帯の情景、
自分の心理などをとても分かりやすく
整然と説明しているところから、
観察眼の鋭い真面目なお人柄が想像されます。
夢の中で飛ぶのも「2メートルぐらい」と、
奇想天外な高さではなく、現実感がありますよね。
この方は夢の中であまりにも
自然に空中を泳げたので、
現実でも飛べないか試してみたそうです。
結果は「当然ながら一瞬たりとも空中を平泳ぎ出来ません…」
とのこと(笑)。
お茶目で真面目なコメントをいただきました。
繰り返しみる夢には、
人生の定点観測的な役割があるのかも。
次は、スティックを使って飛ぶ夢を紹介します。
私はこんな夢をみた
空を飛ぶ夢。30センチくらいのスティックを使ったり、使わなかったり。高度は10~30メートルほど。飛んでいるときの高さはあまり安定しないけれど、落ちることもない。飛びたいと思うと、飛べる。夢に登場する自分は多分、その時の現実の自分と同じ歳。夢の中の時間は日中のみ。服装は不明。登場人物は街の人々。飛んでいる私に気付いて驚く人も、気づかない人も。
(maymay28kさん・団体職員・58歳)
30センチほどのスティックを
魔法のスティックのように使って、
空を飛んでいるのでしょうか。
夢の中では
「飛べている喜びと、思うように飛べないもどかしさ」を
感じるそうです。
感情の浮き沈みがあり、
人の反応も様々なところが、
まさに人生そのものといった印象です。
この夢は、1年に1回あるかないかくらいの頻度で
繰り返しみるとのこと。
ご自身のその時の状況を
自分自身で確認するときにみる、
人生の定点観察的な意味合いのある夢
なのかもしれませんね。

撮影/大倉琢夫
夢の中で高く飛べる人は
人生がうまくいっている?
今回まで3回連続で飛ぶ夢の分析をしてきました。
これまでの分析を踏まえて改めて思うのは、
人生がうまくいっている人や、
人生に満足している人ほど、
夢の中で高いところを飛んでいるようだと
いうことです。
空高く飛んでまちを見下ろすといった高く飛ぶ夢は、
離れたところから
物事を俯瞰するだけの余裕がある時に
みやすいのかもしれません。
高く飛ぶ夢にせよ、低く飛ぶ夢にせよ
大切なことは、
夢に表れた自分の心身の状態を観察し、
よりよく生きるヒントを得ることです。
そのことを忘れずに、
ぜひこれからもいろんな飛ぶ夢を楽しんでください。
※次回は「松田先生がみた太陽と月を抱きしめる夢」を分析します。(11月13日公開)
(11月13日公開)
※読者の夢には、表記の変更や分析に関係のない部分の省略などの編集を加えています。
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第1回
50代会社員がみる隠し部屋の夢
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第2回
古希間近のフリーランスライターがみる隠し部屋の夢
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第3回
60代講師がみる実家の戸締りができずに焦る夢
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第4回
70代主婦がみる誰かの部屋とつながった家の夢。
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第5回
40代主婦が過去にみた架空の学校をさまよう夢。
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第6回
50代の読者がみるエレベーターで下降する夢。
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第7回
50代読者がみたゴルフボールの夢
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第8回
21歳で出産するときにみた空を飛ぶ夢。
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第9回
小学生のときにみた家の中を飛ぶ夢。
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第10回
51歳の漫画家がみた母校のグラウンドを飛ぶ夢。
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第11回
松田先生がみた太陽と月を抱きしめる夢
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第12回
1時間に1本しかない通学バスに乗れずに焦る夢。
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第13回
なぜか自分の乗ったタクシーの運転手が逃げてしまう夢。
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第14回
50代の公務員がみた乗り物に乗り遅れそうになる夢。
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第15回
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第17回
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第19回
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第20回
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第21回
亡き母が人生の節目を夢で祝ってくれた。