この連載では、臨床心理士の松田英子先生が『通販生活』読者がみた夢を分析します。今回は番外編として、松田先生が人生の転機を迎えるときにみた「太陽と月の夢」を紹介。先生自らの夢分析を通し、夢を充実した人生に活かすための向き合い方を考えていきます。
1万人の夢を分析した
松田英子先生25歳のときにみた
太陽と月をぎゅっと抱きしめる夢。
夢の捉え方が、
現実の自分の行動にも影響を与える。
わたしがみた夢のお話をする前に、
夢と現実との関わりについて
少しおさらいさせてください。
みなさんは日ごろ、よく夢をみますか。
そして自分がみた夢を
どのように捉えていますか。
どんな夢にも
夢をみるきっかけになった
現実の出来事があり、
夢の世界は
自分の記憶や思考、心身の状況によって
つくられています。
自分のみた夢と向き合い、
なぜその夢をみたのかと考えることは、
自分自身をより深く理解する
手助けともなります。
そしてより大切なことは、
夢の受け止め方や捉え方しだいで
現実の自分の行動も変わるということです。
失敗する夢も、受け止め方しだいで
ポジティブなものになる。
たとえば仕事でミスをして焦る夢をみたとします。
ある方は
「夢でみたことが現実になるのでは」と心配になり、
一日を消極的に過ごすかもしれません。
夢との向き合い方に「正解」はありません。
ただ、夢をネガティブに捉えすぎたために
一日を憂鬱に過ごしたり、
自分の思いや行動に制限をかけたりするのは
もったいないと思うのです。
大切にしてほしいのは、
自分が心地よく日常生活を送るために
夢を活用する意識をもつことです。
同じように仕事でミスをする夢をみたとき、
ある人は、「単なる夢」と受け流して
まったく気にせずに一日を過ごすかもしれません。
あるいは「夢で失敗のシミュレーションができてラッキー。
現実にミスしないように気を付けよう」と
前向きに受け止める人もいるかもしれません。
実際、夢には現実に起こりそうな
危機的状況を回避するために
脳内でシミュレーションをするといった
機能もあると考えられてます。
食べ物の夢をみると嬉しくなる。
夢をどのように捉えるかは自由です。
ラクな気持ちで楽しく現実の生活を過ごせるなら、
それでいいのです。
たとえば私は
食べ物の夢をみると嬉しくなります。
夢の中でおいしそうなイメージを楽しめることが
まず嬉しいですし、
起きてからそれを実際に食べれば
二度おいしくて、とてもラッキー。
そんな風に思っているんです。
つい最近も、サツマイモ収穫の夢を見た日に
偶然スーパーでスイートポテトを見つけて
ラッキーと思い、迷わず買って帰りました。
数年~十年に一度くらいの頻度で
天体の夢をみる。
私がみるのを楽しみにしている夢の一つに、
天体の夢があります。
数年から十年に一度くらい、
宇宙や天体の夢をみるのです。
最初にみたのは、25歳くらいのときでした。
私はこんな夢をみた
太陽と月をぎゅっと両脇に抱えた私が、にっこりと笑っている。夢の中の私には、あたたかな気持ちと、どこかクールな気持ちの両方があった。
この絵は、私の友人に描いてもらったものです。
とても印象深い夢でしたので、
油絵を描いている友人に絵にしてもらいました。
ただ、印象深い夢ではあったのですが、
なぜこの夢をみたか、すぐには分かりませんでした。
あとになって考えたのは、
夢に出てきた太陽と月は
私にとっての心理学の臨床と研究なのではないかと
いうことです。
当時は大学院生で、臨床と研究の両立を志し、
資格取得のための勉強を続けながら、
その大変さに苦しんでいるときでした。
それでも、どんなに大変でもこの道を進むんだ、
両方をあきらめずに進み続けるんだと
必死な思いで日々を過ごしていました。
その必死さが、
太陽と月をぎゅっと両脇に抱える夢に
反映されたのかもしれません。
臨床心理士の資格と
大学教員になるための博士号の両方を取得し、
自分の望む将来への道すじをつけられたのは、
太陽と月の夢をみてから6年ほどあとのことです。
25年経った頃、
再び太陽と月の夢をみる。
最初に太陽と月の夢をみてから
25年ほど経ち50歳になった頃、
もう一度太陽と月の夢をみました。
私はこんな夢をみた
出張先の宿の近くに海があり、海岸線まで月や星をみにいった。大きな太陽と月がみえる。二つがよく似ていて、私は「太陽と月は双子なんだね」と言いながら手を伸ばしてそれぞれに触る。感触はひんやりと冷たく、ぷにゅぷにゅと柔らかい。太陽と月はそれぞれ、大きなくずもちのようなものに包まれていた。
25歳頃の夢では
ぎゅっと両脇に抱えていた太陽と月を、
50歳でみた夢では
地に足をつけたまま、
手を伸ばして触っています。
太陽と月が手に届く距離にあるというところに、
25年分の道のりや、その経験から生まれた余裕が
あるように思えるのです。
太陽と月を包むくずもちは
何を表しているか。
不思議なのは、
太陽と月がくずもちのようなものに包まれている
ところですよね。
私がこの夢をみたあとで考えたのは、
「くずもちだったら食べられる」ということです。
臨床と研究の両立からみえたものを、
くずもちのように食べやすい形にして
多くの人に提供する。
そうしたことを考える時期がきたのだと、
この夢を通して認識しました。
この目標を達成できたら、
また太陽と月の夢をみるかもしれません。
その時にみるのはどんな夢でしょうか。
今からとても楽しみです。
90歳まで生きる人は、人生の中で
6年半~7年ほどを夢をみて過ごす。
多くの人は、
人生の3分の1を眠って過ごすといわれます。
そして、眠っている時間のうち
5分の1~4分の1くらいは、
夢をみながら過ごしていると考えられます。
たとえば90歳まで生きる人は、
一生のうちおよそ30年を眠りながら、
6年半から7年ほどを夢をみながら過ごす計算です。
私たちの人生の中の少なくない時間は、
眠りや夢についやされています。
だからこそ眠りや夢を快適にすることは、
日々の生活や人生をより豊かにする
チャンスともなるのです。
今後もこの連載では
眠りや夢を心地よいものとするヒントを
できるだけ多く提示します。
時にその方の人生までもが垣間見える
夢分析を読みながら、
眠りや夢を積極的に人生に活かす
自分なりの方法を考えてみてくださいね。
※次回は「50代の読者がみたバスに乗り遅れそうになる夢」を分析します。(11月27日公開)
(11月27日公開)
※読者の夢には、表記の変更や分析に関係のない部分の省略などの編集を加えています。
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第1回
50代会社員がみる隠し部屋の夢
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第2回
古希間近のフリーランスライターがみる隠し部屋の夢
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第3回
60代講師がみる実家の戸締りができずに焦る夢
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第4回
70代主婦がみる誰かの部屋とつながった家の夢。
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第5回
40代主婦が過去にみた架空の学校をさまよう夢。
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第6回
50代の読者がみるエレベーターで下降する夢。
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第7回
50代読者がみたゴルフボールの夢
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第8回
21歳で出産するときにみた空を飛ぶ夢。
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第9回
小学生のときにみた家の中を飛ぶ夢。
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第10回
51歳の漫画家がみた母校のグラウンドを飛ぶ夢。
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第11回
松田先生がみた太陽と月を抱きしめる夢
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第12回
1時間に1本しかない通学バスに乗れずに焦る夢。
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第13回
なぜか自分の乗ったタクシーの運転手が逃げてしまう夢。
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第14回
50代の公務員がみた乗り物に乗り遅れそうになる夢。
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第15回
トイレに行きたいのに行けず、途方に暮れる夢。
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第16回
立派すぎるトイレに案内され、用を足すのをためらう夢。
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第17回
不完全なトイレに戸惑いながら最後には排せつをする夢。
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第18回
夜中、自宅の寝室で侵入者に怯える夢。
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第19回
夜の暗い海岸で岩場をひたすら走る夢。
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第20回
深くて流れのない川を誰かと一緒に眺める夢。
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第21回
亡き母が人生の節目を夢で祝ってくれた。