なぜ、あなたはその夢をみるのか?

イラスト/ひらのんさ

臨床心理士の松田英子先生が『通販生活』読者がみた夢を分析します。今回とりあげるのは、現在50代の読者がみた、高校に遅刻しそうになって焦る夢。どうやら50~60代くらいの世代には、学校に遅刻しそうになって焦る夢をみる人が多いようです。

1万人の夢を分析した

松田英子先生
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1時間に1本しかない通学バスに
乗れずに焦る夢。

間に合わない夢にはなぜか
高校時代と大学時代の自分が登場する。

間に合わない夢は、世代や国に関わらず
多くの人がみる典型的な夢のテーマの一つです。

通販生活読者からも、
様々な「間に合わない夢」が寄せられました。

最初に紹介する夢は、
現在50代の方が不定期に繰り返しみる夢です。

私はこんな夢をみた

1時間に1本しかないバスに乗り遅れて、高校に遅刻しそうになる。現実にはバスの乗り遅れによる遅刻をしたことはない。また、大学時代に、受講する講義の場所が分からなくなり、学内をさまよっている夢をみることもある。

(ふーさん・派遣社員・50代)

学生時代の切迫感が
焦る夢の引き金に?

この方以外にも、
学生時代の自分が学校に遅刻しそうになったり、
課題の提出に遅れそうになったりして
焦る夢を投稿してくださった方が
たくさんいました。

共通するのは、みなさん50~60代前後だと
いうことです。

この世代は、仕事でも責任ある立場に
ついている方や、
家庭の中でも要の立場にある方が
多いと想像されます。

また、団塊ジュニア世代も含まれる
この世代の方々が高校や大学に進学した頃は、
おおよそ80年代から90年代の頭にかけてです。

日本が高度経済成長期からバブル期へと移行する
たいへんにめまぐるしい時代でした。

人の数が多いので、
とにかく競争が激しい時代でもありました。
4当5落(4時間睡眠で勉強すれば合格し、
5時間睡眠では不合格)を多くの人が信じるほど、
受験戦争が熾烈を極めていたのです。

そんな時代ですから、
学生生活は楽しい青春の一ページであるだけでなく、
やがて来る受験に向けての準備期間でもあり、
切迫感や焦燥感と背中合わせのものでした。

その焦りの感情を、中高年となっても
脳内に強く記憶されている方も多いでしょう。

仕事の締め切りに間に合いそうにない、
期限が迫っているのに決められないなど、
何か強い焦燥感を引き起こす現実の出来事が
引き金となって、
学生時代に遅刻しそうになる夢をみる方が
一定数いるのだと考えられます。

時間割を書いた紙がみつからず焦る。

ほかにも、
学校に遅刻しそうになって焦る
こんな夢がありました。

私はこんな夢をみた

出発しなければならない時刻が迫っているのに、なぜか支障があってなかなか準備ができず、どんどん時間が過ぎていき、とても焦る夢をよく見ます。自分の年齢はいま現在の自分。昔は、高校時代の自分が通学電車に乗り遅れそうになる夢もよく見ていました。

(ふーみんさん・無職・50代)

この方は、通学電車に乗り遅れそうになって
焦る夢をよくみていたとのことです。

夢に登場するバスや電車などの乗り物は、
実際に自分が使用していた通学手段や
現在の通勤手段に影響されるのではないかと
考えられます。

みなさんが学校に遅刻しそうになる夢をみるとき、
どんな乗り物に乗り遅れそうになるでしょうか。

撮影/大倉琢夫

遅刻が決定的な状況なのに
まったく焦らない夢をみる。

学校に遅刻しそうになる夢の中でも
面白いなと思ったのが次の夢です。

私はこんな夢をみた

中学生ぐらいの年齢で、学校に行きたいけどなかなかたどり着かない。ただ、「遅刻決定!!」と内心思っているのにそれほど慌てておらず、目の前の出来事に気をとられてしまう。遅刻の原因になる出来事は、兄が忘れ物をして一緒に探すとか、いつもの道がなんだか違ったり、まっすぐ歩きたいのにむちゃくちゃ足が重たくて前に進めない、知り合いの急な訪問など些細なことばかり。何度もこのような夢をみるような気がします。

(タマさん・公務員・50代)

遅刻しそうになっても、
この方の場合は全く焦っていません。

恐らく遅刻はこの方にとって、
あまり大きな問題ではないのでしょう。
実際の学生生活でも、遅刻しそうになったり
遅刻したりすることがよくあったそうです。

投稿文の他の箇所には
「今でもあまり時間に余裕を持たない」
「買い物に財布を持たずに出掛けてしまったり、
ATMで現金を引き出しカードだけ
取って帰ってしまったり、うっかりミスが多い」
とあって、
マイペースで大らかなお人柄が想像されます。

間に合わずに焦る夢には
うまくいかない出来事の捉え方が表れる?

遅刻しそうになる原因が仕方のないこと、
つまりきょうだいの忘れ物や突然の来客など、
周りの環境にあるところも面白いと感じました。

多くの人は、
起きるのが遅くて通学電車に間に合わなかったり、
準備を時間までに済ませられなかったりと、
自分の行動の結果、間に合わなくなる状況を
夢にみているからです。

こうしたところに、
うまくいかない出来事に対する
その人なりの捉え方や対処の仕方が
表れているようで、
とても興味深いと思いました。

自分の行動の結果、
物事がうまくいかなくなる夢をみる人は、
時間に余裕をもって行動するなど、
自身の行動を調整することで
危機を切り抜けようとする方かもしれません。

物事を自責的に捉える方と
言い換えることもできそうです。

反対に、自分以外の人や、
自分にはどうにもならない天候などの影響で
物事がうまくいかなくなる夢をみる人は、
他者の手を借りながら
状況を改善しようとする方なのかもしれません。

あるいは、「なるようになるだろう」と
楽観的な気持ちで、物事の大きな流れを
みつめる方である可能性も考えられます。

みなさんの場合はどうでしょうか。

間に合わずに焦る夢をみたとき、
その原因はどこにあるのかを考えてみてください。

あなたらしい物事への向き合い方や
ストレスへの対処の仕方を
自分でよく理解する
きっかけとなるかもしれません。

※次回は「51歳の会社員がみた電車を乗り過ごす夢」を分析します。(12月4日公開)

(12月4日公開)

※読者の夢には、表記の変更や分析に関係のない部分の省略などの編集を加えています。

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