臨床心理士の松田英子先生が『通販生活』読者がみた夢を分析します。今回分析するのは、現在50代の読者がみた、上司との待ち合わせに遅刻しそうになる夢。間に合わない夢には、その人の職業柄や仕事の苦労が強く表れることがあるようです。
1万人の夢を分析した
松田英子先生なぜか自分の乗ったタクシーの運転手が逃げてしまう夢。
上司との待ち合わせに
遅刻しそうになるが、ゆったりとした
気持ちで夢の世界を楽しむ。
今回最初に分析するのは、
ちょっと風変わりでユニークな筋書きの夢です。
私はこんな夢をみた
上司Aの住んでいる街に電車で行くことになった。眠ってしまい、降りなければいけない駅を通過してしまう。タクシーで待ち合わせ場所に向かうことにすると、上司Bがタクシー乗り場に迎えにきていた。2人でタクシーに乗り、なんとか待ち合わせに間に合いそうだと安心したが、タクシーは速度が全然上がらず、やたら右折と左折を繰り返す。苛立った上司Bが運転手に詰め寄ると、急停車して運転席から飛び出して走り去ってしまった。車内のラジオから「タクシーを奪って逃走した者がいる」とのニュースが聞こえ、「もしや、さっきのあの運転手か!?!」と驚いた。
(うさぎのホップさん・会社員・50代))
忙しくも充実していた一時期を
懐かしく思う気持ちが夢に表れている。
タクシー運転手が急に逃げてしまう非常事態ですが、この方は
「もしかしたら運転手は犯罪者かもしれなかった、
自分たちは危害を加えられずによかった」と
安心したそうです。
受け止め方がとても前向きで、
大らかなお人柄が想像されます。
夢の中ではこのあと、
上司Bさんがタクシーを運転して、
上司Aさんとの待ち合わせに間に合ったとのこと。
3人でスポーツジムに行って
運動を楽しんだそうです。
上司AさんとBさんは実際の上司で、
ひと頃は3人での休日出勤が続いたそうです。
この夢を見始めたのは、
半年ほど続いた休日出勤から
解放されてしばらく経った頃。
「業務への不満は別にして、
3人で力を合わせて乗り切った仕事を
懐かしく思ったのかもしれません」と、
夢をみた理由を分析していらっしゃいます。
たいへんな時期を過ぎてしばらく経った頃、
信頼できる上司と仕事で奮闘して過ごした日々を
夢の中で振り返る。
とても素敵な夢の体験だと思いました。
教員がよくみていそうな、
授業の準備ができていなくて焦る夢。
続いて紹介するのは、より切迫感のある夢です。
私はこんな夢をみた
急いで連絡したいのにできない、行かなければならないのに、自分の行くべき場所がわからないといった夢をよくみる。具体的には子供を保育園に迎えに行きたいのに行けないなど。教員をしていたからか、授業をしに行く場所がわからなくなる夢もみる。
(サザエさん・無職・70代)
この方はとても真面目な方だなという
印象を持ちました。
そもそも間に合わない夢は、
集団生活に適応したいという、
人間らしい願望の表れと考えられています。
人間は集団で生きる生き物ですから、
遅刻などをして集団のルールを破って信頼を失うと、
生存戦略そのものが危うくなります。
私も教員として、
授業をしにいく場所が分からなくなる夢に
共感します。
授業の教室を間違えてしまったり、
授業の準備ができていなかったりする夢を時折みるからです。
私たちは、
決められた時間に間に合わなくて焦っている状況を
夢にみることで、
現実にはそうならないように
脳内で予行演習をしているのです。
ですから間に合わずに焦る夢をよくみる人は、
自分の役割を果たすことで
社会に適応して生きていきたいという思いの強い人であるとも
いえるかもしれません。
音楽に携わる人の夢には
けた違いの切迫感がある。
ほかにも、次のような夢の投稿がありました。
音楽教室の講師をしていた方がみた夢です。
私はこんな夢をみた
出張先で現地のバスに乗ってコンクール会場まで行く夢。私は審査員の仕事が入っている。季節は冬で道路はすっかり凍結しており、外は吹雪いてきた。悪天候で打ち合わせ集合時間に間に合いそうにない。連絡しようにも携帯の電波状況が悪くつながらない。イライラしながらバスに乗り続けるしかなく、途方に暮れている。
(ちゃちゃらぶさん・自営業・60代)
この方は音楽講師の他に、
音楽コンクールの審査員として
地方へ出向く仕事もしていたそうです。
地方によっては、
公共交通機関が1時間に1本しかないことも
あったかもしれません。
それでも実際に遅刻をしたことは
なかったそうですから、
とても時間に気を付けていたのでしょう。
この方が音楽に携わる仕事をしていることも
ポイントだと思いました。
私の知人にも音楽関係者がいますが、
音楽の世界は非常に厳しい競争がつきまとう上、
まわりへのきめ細やかな心遣いや
精神的なタフさも求められるシビアな世界です。
そうした世界に身を置いているからこそ、
時間を守ることにも人並み以上に
神経をとがらせていたのかなと想像しました。
別の仕事をしている現在でも、
しょっちゅうこの夢をみるそうです。
焦りの夢ですが、
ご自身が懸命に生きた日々の証でもあるように
思えます。いわば勲章のようなものとして
受け止めるのがよいかもしれませんね。
電話の夢にも世代の差がでる。
この夢にはもう一つ分析のポイントがあります。
それは「携帯の電波状況が悪くて通じない」場面を
夢にみていることです。
実は電話がかけらない夢をみる方は結構多いのです。
面白いのは、ダイヤル式の黒電話だったり、
プッシュ式の電話だったり、
はたまた携帯電話だったりと、人によって
電話の種類が変わるところです。
ただ最近の若い世代は、
電話をする夢をみなくなってきているようです。
代わりに、インターネット環境が不安定なために
人と連絡がとれなくなる夢が増えています。
電話よりもスマートフォンなどを通じた通信が
普及している社会状況を反映しているのでしょう。
みなさんが電話の夢をみるとき、
登場するのはどんな電話でしょうか。
夢みる体験をより楽しむきっかけとして、
周りの人と話してみてくださいね。
※次回は「50代の公務員がみた乗り物に乗れない夢」を分析します。(12月18日公開)
(12月18日公開)
※読者の夢には、表記の変更や分析に関係のない部分の省略などの編集を加えています。
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第1回
50代会社員がみる隠し部屋の夢
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第2回
古希間近のフリーランスライターがみる隠し部屋の夢
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第3回
60代講師がみる実家の戸締りができずに焦る夢
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第4回
70代主婦がみる誰かの部屋とつながった家の夢。
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第5回
40代主婦が過去にみた架空の学校をさまよう夢。
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第6回
50代の読者がみるエレベーターで下降する夢。
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第7回
50代読者がみたゴルフボールの夢
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第8回
21歳で出産するときにみた空を飛ぶ夢。
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第9回
小学生のときにみた家の中を飛ぶ夢。
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第10回
51歳の漫画家がみた母校のグラウンドを飛ぶ夢。
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第11回
松田先生がみた太陽と月を抱きしめる夢
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第12回
1時間に1本しかない通学バスに乗れずに焦る夢。
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第13回
なぜか自分の乗ったタクシーの運転手が逃げてしまう夢。
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第14回
50代の公務員がみた乗り物に乗り遅れそうになる夢。
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第15回
トイレに行きたいのに行けず、途方に暮れる夢。
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第16回
立派すぎるトイレに案内され、用を足すのをためらう夢。
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第17回
不完全なトイレに戸惑いながら最後には排せつをする夢。
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第18回
夜中、自宅の寝室で侵入者に怯える夢。
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第19回
夜の暗い海岸で岩場をひたすら走る夢。
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第20回
深くて流れのない川を誰かと一緒に眺める夢。
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第21回
亡き母が人生の節目を夢で祝ってくれた。