なぜ、あなたはその夢をみるのか?

イラスト/ひらのんさ

この連載では、臨床心理士の松田英子先生が『通販生活』読者がみた夢を分析します。今回取り上げるのは、トイレの夢の中でも珍しい筋書きの2つの夢。立派すぎるトイレにうろたえる夢や、トイレの使用前後で自分の年齢が変わる夢など、一口にトイレの夢といっても様々なバリエーションがあります。

1万人の夢を分析した

松田英子先生
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立派すぎるトイレに案内され、
用を足すのをためらう夢。

フカフカの座布団を
「ここがトイレ」と案内される。

最初に分析するのは、立派なトイレが登場する夢です。

私はこんな夢をみた

夢の中でトイレを探していたところ、立派な鏡台の前にフカフカの紫色の座布団があり(!)、「ここです!」と案内されました。夢の中のトイレの様子は色々と変わりますが、立派である事が使用を躊躇させるといったことがあります。

(ばぁ子チャンさん、無職、88歳)

本来のトイレではない場所、
それもフカフカの座布団で用を足すよう促される
夢の報告を受けたのは初めてです。

トイレの夢として典型的なのは、
汚れているトイレへの嫌悪感や、
用を足せないことへの焦燥感が表れる夢ですが、
この方の場合には立派すぎて使うのをためらっています。

「これを勧めてもらったけど、
まさかそんなことはできない」
「ここでしてしまったら申し訳ない」
といった感じでしょうか。
どこか、遠慮や恥の感覚があるように見受けられます。

トイレの夢の投稿はとても多かったのですが、
その中でも際立って優雅で豪華な夢として
印象に残りました。

豪華なトイレといえば、
私も成田空港国際線ターミナルで
国内メーカーのトイレギャラリーを発見したときには、
その豪華さに感動したものです。

トイレを軸に
人生が展開していく。

他にも珍しいトイレの夢として印象に残ったのが、
次の夢です。

私はこんな夢をみた

タイル張りのだだっ広い大浴場みたいなところに便器だけがたくさん並んでいて、どの便器か選ぶのにうろうろ歩き回る20代の自分。「これ」と決めたら、場面が変わる。薄暗い個室で用を足すと、トイレットペーパーがないし、水が流れない。その次の場面は、水が詰まってあふれ流れ出たトイレットペーパーを片付ける30代の自分。扉の外にいる人の話し声を聞きながら、その人たちにばれないよう片付けなきゃいけないという切迫感がある。

(Ayu丸さん、会社員、50才)

トイレットペーパーがない、
水が流れないというのはよくあるトイレの夢の筋書きです。
ただ、トイレを軸に人生の発達が描かれていくような
展開に珍しさを感じました。

20代の自分が便器を選ぶ様子は、
就職や結婚といった生き方の選択をする様子にも
重なるように思われます。
そして、暗いながらも個室で用を足せていますので、
選択を行動に移したわけです。

あふれ出たトイレットぺーパーを片付ける
30代の自分は、20代の自分の選択の結果を受け入れ、
後始末をしている姿を表していると
考えることもできそうです。

夢の結末に登場する自分は、
なぜか10代になっている。

この夢には、以下のような続きがあります。

私はこんな夢をみた

個室を出て手を洗い、トイレの外に出て振り返ると、男女別の扉があり、一方から出る。学校の廊下のようなところに出たのだと認識する。行きたい部屋が見つからず1〜3階まで何度も往復する。人のたくさん詰まった教室を見ながら、廊下を走り回る。そのうちに、10代の自分が校舎から出て明るさを感じる。門をくぐり、新緑の広がる明るい学校の外へと出られた。

夢の結末には、10代の自分が登場します。
これがなぜなのかは、
もう少し詳しくお話を聞いてみなければ分かりません。

ただこの方は10代のとき、
集団の圧迫を感じていたのかもしれません。
「人のたくさん詰まった教室をみながら」
といった表現から、
集団に対する息苦しさのようなものを感じます。

中高年の「心の危機」の頃に、
人生を振り返る夢をみることも。

この夢は43~48歳くらいのときにみていたそうです。
この頃は、人間関係なども含めて
自分の心身の状況が切り替わる時期だったとのこと。

そうしたこともあって、
これまでを振り返る気持ちが夢に表れた可能性があります。

撮影/大倉琢夫

実は40代半ばから50代にかけては、
中高年が心の危機を迎える頃にも重なります。

人生の折り返し地点を意識し始め、
生き方の棚卸ろしをする頃ですし、
「この先、このままでよいのだろうか」と考える人も
増えます。自分のキャリアや生き方に
悩みや迷いが生じやすい時期なのです。

この方もこの夢をみていた頃、
何らかの変化や決断を経験したのかもしれません。
この後の夢の展開が、
学校の外に快適なトイレをみつけて、
すっきりと用を足す結末となったことを期待します。

いずれにせよ、
自分の人生を振り返るような夢をみるときに
トイレが登場するところにユニークさを感じます。
日本人は潜在意識の中で、
トイレへの関心を強く抱いている。
そのことを実感させられる夢の報告でした。



まつだ・えいこ●東洋大学社会学部社会心理学科教授、博士(人文科学)。公認心理師・臨床心理士。主な研究テーマは、睡眠の改善から心の健康を高めること。『今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックス)、『はじめての明晰夢 夢をデザインする心理学』(朝日出版社)、『夢を読み解く心理学』(ディスカバー携書)など、夢に関する著書多数。

※次回は「50代のパートタイマーがみた不完全なトイレで用を足す夢」を分析します。(1月15日公開)

(1月15日公開)

※読者の夢には、表記の変更や分析に関係のない部分の省略などの編集を加えています。