ツボを温めて、
女性に多いからだの
不調を解消する
イラスト/日野優子
冷えやむくみ、更年期によるのぼせ、めまい……。
「病院に行くほどではないけれど、
なんとなく調子が悪い」というその不調、
ツボを温めると改善できるかもしれません。

教えてくれる人
志野治美先生
しの・はるみ●公益社団法人全日本鍼灸学会前常務理事。明治鍼灸⼤学で東洋医学・⻄洋医学を学び、はり師、きゅう師免許を取得。同校付属鍼灸センターや附属病院にて内科系、婦⼈科系を中⼼に臨床経験を積む。⼤阪での鍼灸院勤務を経て、99年、奈良県⼤和郡⼭市に「はるみ鍼灸治療院」を開院。
ツボは世界的に認められている。
東洋医学では、「気」がからだの中を巡っていて、気の通路である「経絡」の上にツボがあると考えられています。ツボを温めると血流や気の流れがスムーズになって臓腑が活性化され、体調が整うのです。気もツボも目に見えるものではありませんが、現在では、ツボはWHO(世界保健機関)にも認められています。
お灸は、ヨモギの葉を加工した「もぐさ」をツボの上で燃やしてツボを温める治療法で、人に施術するためには、国家資格の医師か灸師の免許が必要です。もちろん、自分にお灸をすることはできますが、火を使うので注意は必要です。
効果を考えたときにおすすめなのは、電気を使った器具でツボを温める「温灸」です。わたしたち灸師も火を使えない施設へ往診するときには専用の電気温灸機で代用しています。
温灸の時間は「気持ちいい」と感じる程度で、熱いと感じる手前で外しましょう。週に一度ほどでも効果を感じやすいですが、症状が重い場合は毎日行っても構いません。体温や熱さを感じる感覚には個人差があるので、温度を自分で調整できる温灸器であればなおいいでしょう。
こんな悩みには、ここのツボ。
女性に多い、慢性的に抱えがちな症状を改善させるツボを紹介します。
複数の症状に悩んでいる場合は、ぜひ、作用や効果に合う数ヵ所のツボを温めてみてください。ツボからずれていても、必要以上に温めても、悪化することはほぼないことが、温灸の良さの一つです。
ただし、生活の質が著しく下がるほど症状が重い場合は、すみやかに専門家に診てもらいましょう。
症状とツボ
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冷え
①湧泉(ゆうせん)
②太渓(たいけい) -
生理痛
③三陰交(さんいんこう)
④血海(けっかい) -
更年期症状
目のかすみ⑤合谷(ごうこく)
⑥太衝(たいしょう) -
むくみ
⑦復溜(ふくりゅう)
⑧足三里(あしさんり) -
足のつり
⑥太衝(たいしょう)
⑨陰陵泉(いんりょうせん) -
不眠
⑩失眠(しつみん)
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更年期のめまい
⑪百会(ひゃくえ)
⑫風池(ふうち)
ツボの位置と解説
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① 湧泉(ゆうせん)
足裏の土踏まずの中央のやや上にあります。体内の水分を動かす働きがあり、自律神経を整えます。
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②太渓(たいけい)
内くるぶしとアキレス腱の間の、くぼんでいる部分にあります。血行を促進する作用があり、足や腹部などの冷えを改善します。
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③三陰交(さんいんこう)
足の内くるぶしの出っ張りから指4本分上のところにあります。血行を促進し、ホルモンバランスを調整して、身体の全体を整えます。
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④血海(けっかい)
ひざのお皿の上の、内側の上にあるくぼみから指3本分上がったところにあります。血の巡りを整えます。
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⑤合谷(ごうこく)
手の甲の人差し指と親指の骨が交わるところの、やや手前の人差し指側にあります。緊張を緩和するため、さまざまな症状に効果があります。
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⑥太衝(たいしょう)
足の甲で、足の親指と人差し指の骨が交わるところにあります。熱を下ろしていく働きがあり、上記の症状を緩和します。
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⑦復溜(ふくりゅう)
足の内くるぶし(最もふくらんでいるところ)から、指3本分上の位置にあります。足腰の血行を改善し、むくみを解消します。
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⑧足三里(あしさんり)
膝の外側で、お皿の下から指4本分下がった、一番くぼんでいるところにあります。むくみの他、すべての症状を整える万能ツボとも言われます。
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⑨陰陵泉(いんりょうせん)
ひざの内側で、ひざ下のくぼみの位置から指4本分下がったところ。押すとへこみやすい部分です。体内の余分な水分や湿気を取り除きます。
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⑩失眠(しつみん)
足の裏側のかかとの中央で、一番高いところにあります。気を下げ、神経を落ち着かせる効果があります。
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⑪百会(ひゃくえ)
左右の耳の上部を結んだ線と、鼻と後頭部中央を結んだ線が交わるところにあります。気の流れが集まるところで、あらゆる頭痛や目の症状に効果があります。
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⑫風池(ふうち)
首の後ろの髪の生え際の、左右外側のへこんでいる部分にあります。目の疲労を改善する働きがあり、首・肩周りや頭部の血行を改善します。
ライター/小久保よしの