若返りホルモン
「オステオカルシン」を
増やす方法
イラスト/日野優子
皮膚や臓器、記憶力まで若返らせてくれる
“若返りホルモン”があることをご存じでしょうか?
この若返りホルモンはどうすれば増やせるのか、
女性の健康長寿を伸ばすための医療で
日本をリードしてきた産婦人科医、
太田博明先生にお話を伺いました。
教えてくれる人
太田博明先生
おおた・ひろあき●川崎医科大学産婦人科特任教授・特任部長。女性医療・骨粗しょう症・アンチエイジングの分野における日本のパイオニア。日本抗加齢医学会監事。日本骨粗鬆症学会理事長も務めていた。著書に『若返りの医学 ―何歳からでもできる長寿法』(さくら舎)ほか。テレビにも多数出演し、若返りホルモンについて啓蒙している。
万能若返りホルモン「オステオカルシン」
“若返りホルモン”のお話をする前に、まず骨の代謝サイクルの説明からはじめなければなりません。
骨には、骨をつくる骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞があり、若い頃は2つの細胞がバランスよく働いて骨が新陳代謝されています。
オステオカルシンという若返りホルモンは、この骨芽細胞から分泌されているのです。
若返りホルモンは、心臓や肝臓、腎臓などの臓器のほか、脳や皮膚にも働きかけてくれます。効果は、
- ・認知・記憶機能の改善
- ・心筋梗塞や脳卒中の予防
- ・血糖値を低下
- ・肝機能の向上と脂肪肝の防止
- ・腎機能を改善
- ・免疫力の向上(アディポネクチンの分泌促進)
- ・記憶力の向上
- ・活性酸素の抑制
- ・皮膚のシワ・たるみを改善
など幅広く期待できます。まさに若返りに関する万能ホルモンと言えます。
ところが、女性は更年期で女性ホルモンが減ると骨芽細胞の働きが悪くなり、骨密度が低下するだけでなく、分泌される若返りホルモンの量も減ってしまいます。
これが老いが進む主な原因のひとつです。
「それなら老いが進むのはどうしようもないじゃないか」と思われるかもしれませんが、さにあらず。正しいトレーニングで骨芽細胞を刺激すると、若返りホルモンを増やすことができるのです。
万能若返りホルモンを増やす方法
若返りホルモンを増やすには、かかとに負荷を与えるのが効果的です。刺激を受けた骨細胞が「骨が壊される」と心配して骨芽細胞を活性化し、若返りホルモンの分泌が増えるのです。
家でも気軽に行える、かかとに負荷を与えるためのトレーニングを3つ紹介します。
自身の体の具合、体調に合わせて、できるトレーニングをしてください。ただし、トレーニングをやり過ぎると骨折や関節を痛める可能性があるので、不安がある方はトレーニング前に主治医の先生とよく相談してください。

①ミニジャンプ(効果:高)
10㎝ほどの高さの台に立ち、前方に跳んで足裏全体で着地しましょう。
これで体重の4倍ほどの重力がかかとにかかります。
目標:毎日、30回

②かかと落とし(効果:中)
つま先立ちで両足のかかとを上げてから真下に落とします。
これで体重の3倍の重力がかかとにかかります。
目標:毎日、2秒に1回のペースで50回

③その場足ぶみ(効果:低)
椅子に座り、つま先を地面につけたまま、かかとを上げてから落とします。
目標:毎日、左右交互に30回ずつを3セット
80歳でも90歳でも、これらのトレーニングで若返りホルモンは増やせます。実際、実験で被験者がミニジャンプと、その場足踏みを2週間行なったところ、若返りホルモンが5%増えたという結果も出ています。
若返りホルモンが増えれば、全身の若返りが期待できます。
とくに骨芽細胞の働きが悪くなる55歳以上の女性は、これらのトレーニングでいつまでも健康的な体を目指しましょう。
ライター/朝山弥生