カタログハウスは「買い物は平和な社会でなければ成り立たない」という思いから、国境なき医師団への支援として、売上の1%を寄附しています。
でも「国境なき医師団」って、そもそもどんな団体で何をしているのか、ご存知ですか?
「人道支援」「証言活動」……実はよくわからない。
そんな大人のみなさんへ。
子どもたちの素朴で、時にドキッとする質問を通して、ゼロのゼロから一緒に学んでみませんか?
むらた・しんじろう
2005年、「国境なき医師団」に参加。それから10年以上、シリアや南スーダン、イエメンといった紛争地などで、けがや病気に苦しむ人たちを助けるための活動を続ける。2020年、「国境なき医師団日本」の事務局長(組織の方針を決めて実行につなげる責任者)になる。日本人が事務局長になるのは初めて。
「国境なき」ってどういう意味?
“すべての差別”を超えて、人道支援=「命と健康を守るお手伝い」をすることです。
「住んでいる国が違う」「話す言葉や、肌の色、信じている宗教が違う」に関係なく、医療を必要としているあらゆる人に「公平」に病気やけがの治療を届けること。それが私たち「国境なき医師団」です。
「公平」って、どんな人でも助けるってこと?悪い人でも?
はい、争っているどちらの勢力にもつかずに、医療が必要な人を助けます。
戦争によって傷ついた街の人も、誰かを傷つけた戦闘員も、等しく医療を必要とする患者さんです。
ここで、「公平」の意味を考えてみましょう。教室に一人だけペンを持っていない子がいるとします。これは「不公平」ですよね。だから全員にペンを配るのではなく、持っていない人にのみ渡して、みんなが同じように絵や文字を書けるようにすること。これが「公平」です。
つまり私たちは、どこでも同じように医療を届けるのではなく、「もっとも困っているところに駆けつける」という判断をします。
もし2つの国が戦争していたら、「医療を受けづらい人たちがいる地域はどこか」という点を優先して活動しています。
「医師団」ってことは、みんなお医者さんなの?
さまざまな国や地域に派遣されたスタッフのうち、医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフは45%。半分以上が医療以外の仕事をしています。
働く人や必要なお金をまとめる「アドミニストレーター」、診療所やトイレをつくったり、水や車を用意したりする「ロジスティシャン」などなど。それぞれが得意分野を活かして、ひとつのチームとして頑張っています。
ほかにも、日本などの事務局で働く人を含め、世界全体で5万2000人(2024年時点)が国境なき医師団で働いています。
実は私も「国境なき医師団」に入る前は、コンピュータ会社の営業マンでした。そこで学んだ「状況を理解する力」「話し合いで人と人を結びつける力」は、シリアなどの紛争地や日本の事務局長として働くなかで、とても役に立っています。
どんな国で、どんな活動をしているの?
今すぐに助けを必要としている人びとがいる、75の国と地域、それぞれで「必要」とされる支援をしています。※
まずは、現地に派遣される経験豊富なスタッフたちが、そこにいる人びとの状況がどうなっているかを調べます。例えば、戦争が起きている場所では、銃や爆弾で傷つけられた人たちを一刻も早く治療しなくてはなりません。病院や手術室が足りないときは、空気でふくらませるテント病院が活躍します。つらい体験をした人たちの心のケアも大切です。
紛争や自然災害が起きた場所には、世界中、どこであっても48時間以内にかけつけられるように準備をしています。トイレや水道が不足すると感染症が流行りやすいので、専門の治療センターを立ち上げることもあります。
他にも、爆撃や地震などで家を失った人のために、雨風から身を守れるよう手助けしたり、安全に赤ちゃんを産めるようにサポートしたり……と、さまざまな活動をしています。
※2024年時点
赤十字やユニセフも、世界中の人の命や健康を守る活動をしているって聞きました。何が違うんですか?
私たちの特長は「証言活動」と「資金源が民間からの寄附」です。
「証言活動」とは、紛争地や被災地などで、どれほど悲しく痛ましい出来事が起こっているかを目撃して、みんなに伝えていくことです。治療するだけでは止められない苦しみを伝えることは、悲惨な状況を改善するために、医療と同じように重要だと私たちは考えて、発信し続けています。
「活動資金の90%以上が民間からの寄附金」なのも他にない特徴です。政府からの援助ではなく、世界中の人びとや会社からいただいたお金をもとに、お医者さんや薬を世界中に運んで活動しています。
なぜ寄附なの?テロリストやお金持ちの国からお金をあげますと言われたらどうするの?
なぜ寄附かというと、争っているどちらの勢力にもつかずに、必要な人を助けるためです。
もし仮にアメリカ政府から「何百億円あげますよ」と言われても絶対に受け取りません。「アメリカが応援している国は助けていいけど、仲が悪い国にはお金を使っちゃダメ」と言われたら、“差別なく医療を届ける”ことができなくなってしまいます。
それから、武器をつくっている会社からの寄附もお断りしています。
(2023年11月20日)
寄付したいけど、おこづかいから出せるのは1000円くらい。こんな小さなお金でも役に立つの?
とってもとっても役に立ちます。どんな額でも、ものすごい力です。
1000円あれば、マラリアという感染症のワクチンを10回以上も子どもたちに打つことができます。120人に1週間分の清潔な水を提供することができ、栄養失調の子どもたちに必要な食品「RUTF」なら30食分も買えるのです。
それに寄付は「現地で働くスタッフの安全」にもつながっているんですよ。戦争中の場所では、その国の人に「あなたたちが戦っている政府からも、支援している政府からもお金はもらっていません。世界中の人びとがくださった“中立なお金”で活動しています」と伝えることがとても重要です。すると「そんな組織があるのか」と驚いて「それなら攻撃しないでおこう」と納得してくれることが多いのです。
どんなに小さなお金であっても、ひと巻きの包帯になり、一本のワクチンになり、そしてスタッフの命を守る力となって、必ず誰かを助けている。それは間違いありません。
そんなにいろんな活動をしているなら、世界はどんどん平和になっているんだよね?
残念ながら、各地での紛争は終わりが見えない状況が続いています。また、いちど停戦になった紛争も、再発することがあります。だからこそ、あきらめてはいけません。
コンゴ民主共和国や南スーダンなどでは、もう何十年も医療サポートを続けています。
紛争の直接的な被害だけでなく、食料危機や自然災害、感染症の流行など、さまざまな理由が絡み合い、長年にわたって多くの人に医療が届いていないのです。
今、各国の政府は「他の国の危機的な立場にいる人たちを助ける」ためのお金をどんどん削っています。民間の寄附がパワーになっている「国境なき医師団」がもっともっと頑張らないと……そんな厳しい状況なのです。
戦争を止められる力は、お医者さんにはありません。それができるのは、国のリーダーだけ。そして彼らを動かすのは、民間のみなさんの声です。何万人もの心をひとつにして「市民への攻撃をやめて」をうったえれば、とても大きなエネルギーになります。そのための一歩は、世界で何が起こっているかを知ることです。
安全な日本から、どうして命がけで危険な国に行くの?怖くないの?
絶対に「見捨てたくない人たち」がいるからです。
私がシリアという国で活動していた時のことです。激しい戦争で病院も学校も爆撃されて、毎日たくさんの人が傷つき死んでいきました。そんななか、ベッドに横たわった患者さんが私に言ったのです。
「You are our hope.(あなたたちは私たちの希望なんだ)」
もう誰も助けてくれない、世界中から見捨てられたと思っていたけれど、肌も髪の色も違う人たちがいろんな国から集まって「国境なき医師団」としてやって来てくれた。それが“希望”なのだと。
「行かないで」と友人や家族に引き止められることも、さみしさや怖さにおそわれることもあります。それでも、私たちを必要としてくれている人がいる限り、その希望をつないでいきたい。
そして、日本にいる大切な人のもとへ必ず帰る。危険な場所で活動するからこそ、スタッフの安全をとても大切にしています。
国境なき医師団
日本事務局にお邪魔しました。
私たちの「日常」は、
世界の平和につながっている。
本企画は、子どもの素直な疑問から生まれました。
大人では聞きにくいこともまっすぐに訊ねてくれた彼らの言葉を通じて、「国境なき医師団」の活動を知ってほしい。世界中で今も起こっている戦争や、傷ついている人々に思いをはせてほしい。「同じ子どもが平和について考えているんだ」という事実は、お子さんやお孫さんなど、若い世代の心も動かすはずです。
買い物をきっかけに生まれた寄附が、誰に、どんな風に届いているのか。ここで学んだことを、大人も子どもも一緒になって、話し合ってもらえたらうれしいです。そうして何気ない「日常」から、希望をつないでいきませんか?
カタログハウスはこれからも、売上の1%を「国境なき医師団」に寄附します。
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